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医療過誤を防ぐ当たり前のこととは?

5/13(土) 18:16配信

ニュースイッチ

「にげない」「かくさない」「ごまかさない」

 診断のための検査や病気の治療で健康に害が生じる事象はあってはならないことです。1999年、米国医療研究所(IOM)は、「人は誰でも間違える」(To Err is Human)で医療過誤による年間死亡者数は、自動車事故(4万3458人)、乳がん(4万2297人)を上回り、100万人以上が傷害を負っていると報告し世界を驚かせました。

 豪州、デンマーク、英国、米国の救急病院の調査では、有害事象の発生率は入院件数の3・2%から16・6%に及ぶとWHOが02年に報告し、医療に起因する患者への害の深刻さを浮き彫りにしました。

 わが国でも、99年1月大学附属病院で「患者取り違え事件」が発生。その原因や病院側の対応が連日新聞に大きく報道され、行政と医療機関は医療安全に向け迅速に動きました。

 01年日本医療機能評価機構に認定病院患者安全推進協議会が発足し、04年には情報収集と安全対策の系統的研修が始まりました。16年には「医療事故調査制度」施行を受け日本医療安全調査機構が医療事故調査支援センターとして動きだしました。

 IOMは、予防可能な死の主な原因が医療行為による傷害であり、その削減を医療政策の優先課題とすることを求めています。従って、医療安全は世界同時進行の取り組みです。

 また、IOMの報告書には他産業の教訓から学ぶようにとの指摘があり、わが国でも航空や原子力の安全管理専門家が医療安全の分野で活躍して下さるようになりました。

 病院やクリニックでは医療安全が最重要課題と位置付けられ、インシデントレポート(傷害を残さない軽い転倒やカルテの転記ミスなども事故の芽、“インシデント”と定義されています)の収集作業と、それを基にした安全対策の実施が重大事故を未然に防ぐために日々行われています。医療安全管理責任者配置や、組織的・系統的な安全活動には診療報酬が加算されます。

 病院では医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士、理学療法士、社会福祉士、栄養士、事務職などたくさんの職種の人たちが「一人一人の患者さんに適切な医療を」という観点から、チーム医療や多職種間で熱心にコミュニケーションするようになりました。こうして、「にげない」「かくさない」「ごまかさない」という当たり前のことを普通に行える仕組み、「医療安全文化の醸成」が確実に進んでいます。私たちは、日々の地道な活動が医療における安心と信頼感に欠かせないと考えています。

友池仁暢(公益財団法人日本心臓血圧研究振興会専務理事)

最終更新:5/13(土) 18:16
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