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社説[留学生の就労緩和提言]教育的視点が不十分だ

5/13(土) 9:00配信

沖縄タイムス

 日本語学校に通う外国人留学生の不法就労問題で、自民党の1億総活躍推進本部(本部長・川崎二郎元厚生労働相)が提言をまとめた。

 川崎氏が11日、加藤勝信1億総活躍担当相に提言書を提出し、政府が6月に閣議決定する経済財政運営の指針となる「骨太方針」に反映させるよう求めた。

 提言は、留学生の管理を法務省、教育を文部科学省と所管を明確化したことが特徴だ。現状は法務省、文科省、厚労省と複数の省庁が関係しており、責任の所在があいまいだったことを考えれば一歩前進と捉えたい。

 あやふやになったのは2010年、旧民主党政権下の事業仕分けで、日本語学校を審査・認定していた財団法人「日本語教育振興協会」が3年ごとに再審査する制度が廃止されたためである。

 提言は、留学生の就労管理を強化した上で、就労時間制限の緩和も盛り込んでいる。提言に書き込んではいないが、現行の週28時間から週35時間へ延長することを想定しているという。

 入管難民法やマイナンバー法を改正し、留学生を就労させているすべての雇用主に地方入国管理局への報告を義務付ける考えだ。

 日本語学校の中には営利に比重を置いたところもあり、玉石混交との指摘がある。日本語のカリキュラムや教師の日本語教育能力を検査するなど文科省が責任ある体制を構築することを求めている。

 気になるのは、提言が留学生を労働力としてみることに重点が置かれ、留学生の教育の視点が不十分なことだ。

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 就労時間の週35時間への緩和は、日本語学校の留学生として本分の学業がおろそかになり、お金を稼ぐ「出稼ぎ留学生」を助長することにならないか、懸念が拭えない。

 一般会社員でもフルタイム勤務で週40時間である。週35時間が教育的見地から妥当かの議論も深めてもらいたい。本分の勉学に悪影響を与えるようであれば本末転倒と言わざるを得ないからである。

 ネパールやベトナムなどから来沖した若者が週28時間の制限を超えて不法就労する実態を、本紙は昨年からのキャンペーン企画「検証 外国人留学生」で明らかにした。

 日本語学校が留学生の旅券や健康保険証ばかりか、常時携帯が義務付けられている在留カードも取り上げていた。人権侵害である。

 提言には触れられていないが、留学生が困った場合に相談できる窓口や学ぶにふさわしい環境なのかもチェックする体制を整えてほしい。

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 留学生らは日本人や日本文化と触れ合う体験が好ましければ、日本びいきになる可能性を持った人たちだ。本国との懸け橋になり得る。

 留学生の本国には「日本に行けば稼げる」と触れ込み、留学を仲介する業者が乱立している。中には多額の借金をして日本に来る人もいる。

 留学生を送り出す国と協力して現地の実態調査も必要ではないか。日本語を習得する本来の目的を達成するには、現地と日本でそれぞれ何が有効なのかを探ってほしい。

最終更新:5/13(土) 9:00
沖縄タイムス