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Jトラスト インドネシア戦略 リテール銀行トップへの布石

SankeiBiz 5/15(月) 8:15配信

 ■日本流経営生かし地場マーケット開拓

 東南アジア最大の経済大国、インドネシア。経済成長による中間層の台頭で個人消費が拡大する同国に、ナンバーワンのリテール(小口金融)銀行を目指して奮闘する日本企業がある。経営破綻したインドネシア商業銀行「ムティアラ銀行」を2014年11月に買収した東証2部上場のJトラストだ。“日本資本のローカル銀行”として再出発した「Jトラスト銀行インドネシア(BJI、旧ムティアラ)」を日系メガバンクとも地場銀行とも異なるビジネスでリテールのトップに育てるというJトラストの挑戦の現場から、急成長するアジアの消費市場を狙う日本企業の課題を探った。

 ◆買収後初の黒字化

 インドネシア・ジャカルタ空港から、「時間が読めない」という慢性的な交通渋滞に巻き込まれ、首都ジャカルタ中心部のオフィス街に予定時刻より遅れて到着した。

 BJI本店が入る高層ビルの33階で待っていたのは、インドネシアの民族衣装で正装でもある「バティック」を着た安藤律男頭取。一通りの挨拶を済ませた後、晴れやかな表情で「昨年まで先が見えず毎月の経営会議に出るのが嫌だった。今年1月から不良債権が発生しなければ利益を出せる態勢になりつつある。ひと山越えた」と語った。

 BJI買収後も営業赤字が続いた。1年目の15年(1~12月)が59億8300万円、16年は57億9500万円と2年連続で巨額赤字を垂れ流した。

 人員削減や支店の統廃合といったリストラ費用などを計上し負の遺産を整理したためだが、この間に大口融資を圧縮し小口融資を積み増すというポートフォリオの組み替えに着手した。資金調達コストの引き下げ、不良債権の回収などにも取り組み、今年1~3月期に四半期ベースで初の黒字化を達成。黒字体質への転換に手応えを得た。

 「17年は最も重要な年。まさに正念場」とJトラストの浅野樹美(しげよし)常務は言い切る。浅野氏はBJI買収時からインドネシア事業をみており、BJI理事としてリストラを仕切ってきた。

 ◆知名度向上が鍵

 一方で、「攻め」の経営シナリオを描き、再生のための改革も始動させる。浅野氏は「地方主要都市を中心に10店舗を新設し、コアバンキング(基幹システム)の稼働でネット・モバイルバンキングサービスを個人に提供する。広告も打って過去の破綻銀行のイメージを払拭する」と戦略を披露した。

 ターゲットはリテール。個人顧客を増やすためだ。日本のメガバンクは現地進出の日系企業との取引が中心で、ローカル企業、リテールビジネスに興味を示さない。拠点もジャカルタのみで地方に見向きもしない。

 だからこそBJIは日本の銀行としてメガバンクと正反対の経営姿勢を貫く。その理由を安藤氏は「BJIは日本人が株主のローカル銀行。高品質のイメージが浸透するジャパンブランドを生かしながらローカル銀行として地場マーケットに入っていく」と説明する。日本式のマネジメントとサービスは地場銀行との差別化に生かせる。

 本店が入るビル1階に店舗を構えるスディルマン支店が狙うのは近隣で働くビジネスマンだ。アリ・ウィボウォ支店長は「顧客を増やすには信頼が必要。ジャパンブランドを打ち出すことで信頼をアピールできる」と顧客獲得に自信をみせる。

 Jトラストは日本で確立し、同社グループの成長の源泉となってきた消費者金融事業を中心としたリテールファイナンスを韓国でも展開し成功に導いた。このビジネスモデルをインドネシアに移植する。その一環としてBJIから8人の精鋭が16年12月、韓国に研修に行った。

 BJIが抱える課題は知名度向上。優良顧客を増やすには欠かせない。そのため韓国でも効果のあったマスマーケティングに注力、5億円を投じて大規模キャンペーンを展開する。白羽の矢が立ったのは同国の人気俳優、ジョー・タスリムと日系インドネシア人の若手女優、ユキ・カトウ。今後はテレビCMやイベントなどに積極起用していく。

 ジャカルタ郊外にあるクラパガディン支店のアナ・フランシスカ支店長は「預金獲得にはJトラストの認知度を高める必要がある」と話す。同支店の周囲を見渡すと、多くの銀行が支店を構える。激戦区だけに「2人のタレント起用はブランド力向上につながる」と歓迎する。

 ◆「3~5年が勝負」

 BJIはリストラ効果などにより2年で再生を果たした。今後は日本、韓国で成功したビジネスモデルを浸透させ拡大路線にかじを切る。

 このため3月に1兆ルピア(約100億円)の資本金を注入。インドネシア証券取引所での株式取引再開も視野に入る。「市場からの資金調達が可能になる。Jトラストが保有するBJI株も売り出す。成長の原資を得て事業拡大を図る」(浅野氏)とのシナリオだ。そこには「東南アジアナンバーワンリテール銀行」と書かれていた。

 Jトラストの藤澤信義社長は「3~5年で勝負がつく」と強気だ。ただ、描いたシナリオを演じるのは人。応えられる“人財”がそろっているのか不明だ。破綻銀行のイメージも完全に払拭できておらず、信頼獲得もこれからだ。(松岡健夫)

最終更新:5/15(月) 8:15

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