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【伊奈かっぺい綴り方教室】「環境にやさしい丁寧な親切」

産経新聞 5/14(日) 7:55配信

 「環境にやさしい鉄道コンテナ」と書かれた“鉄道用コンテナ”を2個積んだ大型トラックが次から次へと連なって目の前を通り過ぎて行った。

 鉄道コンテナが環境にやさしいのであれば環境にやさしくないコンテナとは、どんなコンテナなのだろうかと思いながら目の前を次から次へと連なって通り過ぎて行く“鉄道用コンテナ”を2個積んだ大型トラックを見ている自分は環境にやさしくない考え方をしているのだろうか…などと思いながら、はてトラックはこれで何台になるだろうかと慌てて数え始めたりして。“コンテナンコ”“こんな点呼”いつだってひとつのことに集中出来ない自分をまた見つけてしまって。

 「環境にやさしい鉄道コンテナ」などと書かれていないコンテナを積んだトラックが目の前を何台通り過ぎても何も思わなかったに違いないが「環境にやさしい」などと書いてあるからつい余計な思いを思ってしまった自分が妙に可愛いと思うことにしてトラックの排気ガスで深呼吸をしてみた。

 テレビ・ラジオの天気予報の時間などで「警報・注意報は出ておりません」なるコメントを見たり聞いたりする度に「出ていないのであれば触れる必要がないのではないか」とは、何年か前の小欄で“感情的”になった記憶がある。覚えておいでだろうか。忘れていてくれたほうがありがたいが。

 「熊出没注意しなくてもいいです。元々このあたりに熊は生息しておりませんから」とわざわざ看板を出すだろうか、だ。

 「噴火注意しなくてもいいです。つい最近に作った盛土ですから」とわざわざ…。

 「熱湯注意しなくてもいいです。元々、水しか出ませんし給湯の設備とも無縁の蛇口ですから」などとわざわざ…。

 「左右確認する必要はありません。ただの袋小路。行き止まり。だまって元来た道を戻ってください」などと、これまた…。

 警報注意報への引っかかり以来、何かと気になるポスター看板、表示の文言たち。

 「冷たいビールありません」の手書きのビラと言おうかポスターと言おうか。これまた無いものをわざわざ…と思いながら傍に寄ってみたらもう1枚「冷たいアイスクリームあります」とあった。なんだなんだこの店は面白がって書いているなと確信して店長と覚しき男性に声をかけてみた。「冷たいビールは無いんですよね」「はい。たくさんは無いんです。少しはあるんですよ缶ビール。1本2本であれば充分に冷えてますが何缶ほど差しあげましょうかね」「…ひ、ひと缶あれば」

 完璧に乗せられてしまった感ビール。あの時もし「冷たくないアイスクリーム」についての引っかかりがあれば何がどうなったのか今も時々思い出してはニンマリしてしまう。

 「雨が断続的に降ったり止んだりを繰り返しています」今日もまた丁寧を通り越した親切なコメントが聞こえている。ありがたいことだ。「彼女は中学生のとき同じクラスだった同級生です」と。絶対にまちがいのない同級生に違いない。何しろ中学生のとき同じクラスだったのだから。丁寧で親切だ。

 丁寧で親切で決して誤解を招かないのであれば通り越そうが取越し苦労だろうが“思いの言い損(そこ)まちがい”よりは遥かにマシだ。

 発言と撤回は何度繰り返しても良いだろう私の場合。辞任しなければならない立場にもないのだし。少しは環境にやさしく…かな。

最終更新:5/14(日) 7:55

産経新聞