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トヨタ、C-HRが「たった4カ月」で首位に躍り出た理由

ZUU online 5/14(日) 19:10配信

トヨタ自動車の小型SUV(多目的スポーツ車)、「C?HR」が4月の新車販売台数トップに躍り出た。自動車販売会社の業界団体の発表によると、その台数は1万3168台で、昨年12月の発売以来、わずか4か月で栄冠を勝ち取ったことになる。その勝因はどこにあったのだろうか。4つの理由に迫ってみた。

■1. 今、SUV人気がすごい 「クールなSUVに乗る人」へ

業界団体の発表によると、SUVが月間販売で首位になるのも1968年の統計開始以来、初めてのことという。C-HRが受け入れられる土壌がすでにあった訳だが、なぜ今SUV人気なのか。

アメリカのヒット商品について分析した『クール 脳はなぜ「かっこいい」を買ってしまうのか』(スティーヴン・クウォーツ、アネット・アスプ著、日本経済新聞出版社刊)によると、1990年代にアメリカでファミリー層がこぞってミニバンに乗ったことが背景にあるという。

ミニバンに乗る彼らは「それまでの生き生きとした自分を捨てて親になることを決意した人々の象徴であるととらえられるようになった」ことから、次世代にとっては「かっこ悪さの象徴」そのものと映った。そこで「ミニバンに乗るかっこ悪い人になること」を忌避して「クールなSUVに乗る人になること」へと移行したのではないか、ということなのだ。

この図式が日本でもそっくり当てはまるかは考察の余地がある。ただ、日本でも「Facebookは中高年が好むから、若者はInstagramに移ろう」などと、かっこよさを求める流れは確かにあるので、日本でのSUVの人気も一定の納得感はある。

■2. デザインが斬新 トヨタの車は無難で面白くない?

「トヨタの車は無難で面白くない」。トヨタ車の外観についてはこんなイメージを持っている人がいるかもしれない。確かに、外車には「おおっ」といってしまうほどのデザインが多いのに比べれば、その差は一目瞭然だ。逆に言えば万人受けするという意味でもあり、トヨタ車に限らず全国内自動車メーカーが目指すところでもあった。

それが一転、今回のC-HRはかなりのこだわりが見える。大径タイヤとリフトアップされたボディからは、どっしりとした力強さも感じる。全高1550ミリに対しタイヤは直径690ミリと44.5%にも達しているのだ。

一方、アッパーボディはクーペ型のようにリヤのバックウインドウの傾斜角をわずか25度にして、流線型のようなスピード感がうかがえる形状にしている。4ドアなのに遠目に見ると2ドアにも見える。メリハリを効かせた彫刻的なダイヤモンド形状からは、とがった印象を受ける人が多いだろう。

ランプもかなりクールだ。右左折時のウインカーはただ点滅するタイプではなく、内から外に流れるタイプの「LEDシーケンシャルターンランプ」が採用される。テールランプも赤一色ではなく、黄色からオレンジ、赤へのグラデーションで、街中で見るとかなり最先端の匂いがするだろう。

■3. 後出しジャンケンに勝った

小型のSUVでは、トヨタは競合他社の中で最後発だった。

日産が2010年に発売した「ジューク」は日本でのSUV人気の火付け役となった。2013年、ホンダが発売した「ヴェゼル」は発売以来の累計台数が26万台を超え、2014年から3年連続で国内でのSUVの新車登録販売台数が首位を獲得し、SUVの勢いを決定づけた。こうした動きをよそに、トヨタSUVはなりを潜めていた。遅れた分、他社がやっていないことをやったと言えるかもしれない。

発売にあたっては、華やかな発表会も行っていない。トヨタらしくないことや、最後発だというのが理由だそうだが、「別にたくさん売れなくてもいい」という割り切りもうかがえる。「好きな人は好き、嫌いな人は嫌い」と「好みが分かれるということ」ことも、ヒット商品の重要な要素だ。

一方、先行車に比べてデザイン重視ということはそれだけ快適性や操作性を犠牲にしているということでもある。後部座席やキャビンの広さ、後方の視界には若干の難があるため、販売員でさえ子育て世代には勧めないらしい。ただ、そうしたデメリットさえも、ユーザーには新鮮に感じたのだろう。

■4. プリウス離れも一因?

今回の発表ではトヨタの「プリウス」が前月比52.2%の9220台だった。前月の水準が高かったとはいえ、半減以上というのは異常ではないか。プリウスを検討していた人がかなりの割合でC?HRに流れたのではないだろうか。

プリウスに対するネガティブな印象としては「正直かっこ悪く、値段が高く、性能も魅力も特筆すべきポイントがない」というものではないだろうか。これらがすべて燃費を良くすることの代償だとしたら、「車で走ることの楽しさ」を追求するユーザーの心が離れるのも当然かもしれない。

■結論、ライトな「クルマ好き」のツボを突いた

繰り返しになるが、これまで実用性や経済性、デザインなどあらゆる面で国産車が狙っていたのは「万人ウケ」だ。トヨタ自動車は特にその傾向が強かった。ただ、本当のクルマ好きが乗っているものを見れば、彼らがクルマに求めているものがよく分かる。エコカーだ、燃費だ、といわれるが、彼らにとっては地球環境よりも燃費よりも、もっと大事にしたいことがあるのだ。

こうしたコアなクルマ好きの周りにいる「プリウスにもハリアーにも乗りたくない、本当はクーペに乗りたいけどそこには手が届かない」というライト層のツボをうまく刺激した好例なのかもしれない。(フリーライター 飛鳥一咲)

最終更新:5/14(日) 19:21

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