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東芝問題は日本の製造業に共通し得る課題なのか

EE Times Japan 5/14(日) 14:10配信

■東芝が陥った状況は決して人ごとではない

 東芝関連のニュースが連日報道されている。米国子会社の巨額損失が会社全体のバランスシートを毀損(きそん)していること、現状に至るまでの経営陣の体制や判断が疑問視されていることなど、同社の今後の見通しについては予断を許さない状況が続いている。だが、そもそもの要因としては、同社が個別に抱える課題と、他の日系電機メーカーにも共通し得る課題に類別できると筆者は見ている。言い換えれば、東芝が陥った状況は決して人ごとではない。他社にも起こり得る問題であることをここで指摘しておきたい。

 東芝の事例をおさらいしてみると、3年前の2015年5月8日、2015年3月期通期決算の発表がいつになるか分からない、第三者委員会を設置して会計処理が適切だったかどうかを精査する、と同社が発表したことに端を発している。これが同社株のストップ安を引き起こしたわけだが、同時期にシャープと富士通の株もストップ安を記録している。シャープの場合はすでに太陽光パネルや液晶事業の悪化が表面化していて、それまでの5年間で株価は80%下落していた。富士通は決算発表時に中期計画を大幅に下回る会社計画を公表したことで、同社の将来性が懸念され「失望売り」がストップ安につながった。

■経営陣に対する不信

 大手電機メーカー8社のうち、3社が同時期にストップ安を記録するなど前代未聞の出来事だったが、いずれも経営陣に対する不信感が原因である点は共通している。3社が抱える問題に程度の差こそあれ、デバイス事業、機器事業、サービス事業、どれも市況が目まぐるしく変化する中で、先手を打てずに後手に回った、経営陣が自社を十分にコントロールできずに市場に振り回された、と投資家に判断された結果なのだ。

 東芝に話を戻すと、4カ月後の2015年9月7日、2015年3月期決算を遅ればせながら発表したことで、同社の「不正会計問題」は一件落着したかに思われた。実際には事業売却の交渉や経営体制の見直しなど、しばらく東芝内で混乱が続いていたが、業績も半導体を中心に回復基調にあり、株価もストップ安をつける前のレベルにまで回復していたのである。しかし2016年12月、米国子会社Westing House(WH)の巨額損失の可能性が表面化したことで状況は一変する。東芝株は再びストップ安を記録することになる。

 なぜこの問題に気付かなかったのか、WHの実態をちゃんと把握していたのか、あるいは把握していながら公表に至るまでの手順に問題があったのではないかなど、WH問題が発覚した2016年12月から現在に至るまで東芝経営陣に対する不信感が増幅しているのが現状である。

■途中で止まらなかった大型投資

 東芝は元々財務基盤が弱い。特に大型設備投資が不可欠なメモリ事業を継続する上で、Samsung Electronicsなどの競合と渡り合うためにどのように資金を調達するか、常に頭を抱えていた。2006年にWHを約6000億円もの大金を投じて買収したのも、将来的に東芝の武器になる、という目算があっての決断だったはずだが、これが裏目に出た。その結果、主力であるメモリ事業の継続が困難になった。時計の針を戻すことはできないが、「最悪でもメモリ事業を継続させるための選択肢」を選べなかったのか、と考えたくなるのは筆者だけではないだろう。

 既に台湾企業(Hon Hai/鴻海精密工業)の支配下に収まっているシャープは、自社の体力以上の投資を続けた結果、自力再生が困難な状態に陥った。液晶事業にしろ、太陽光パネルにしろ、継続してきた大型投資を途中で止めるのは非常に難しい経営判断を伴うだろうが、これまでに何度かあったそのチャンスを見逃してきたのは事実であろう。注力してきた事業がコモディティー化し付加価値の追求が困難になった時点で、シャープのビジネスモデルは崩壊していたはずだ。

■経営判断が遅れる原因

 日系大手電機メーカーは、いずれもコングロマリット(複合企業)体制を維持している点で共通している。コングロマリットは、特定事業の好不調による経営の不安定化を避ける上では一定の効果が期待できるものの、トップから見て各事業の詳細把握が困難であり、経営判断の遅れを伴うリスクがある。

 至るところにIoT(モノのインターネット)が活用され、AI(人工知能)が導入され、いわゆる第4次産業革命が進もうとしている現在、コングロマリットの経営体制では迅速な経営判断ができないのではないか、もっと事業現場に近いところで重要な判断が行われるべきではないか、というのが筆者の主張である。何が何でも分社化すべし、とは言わないが、特定事業の詳細を理解できない役員の同意を得るのに時間を要する、などという前近代的な体制で経営している企業に勝ち目があるとは到底思えないのだ。

最終更新:5/14(日) 14:10

EE Times Japan