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慰安婦合意国連委見直し勧告 日韓安保協力に暗雲 歴史問題利用も

産経新聞 5/14(日) 7:55配信

 韓国の文在寅政権発足に伴い、日韓関係は慰安婦問題の日韓合意に加え、両国の安全保障協力も焦点となりそうだ。「新たな段階」に入った北朝鮮の脅威に対処するには自衛隊と韓国軍の連携が必要で、最近は強化される傾向にあった。しかし、国連拷問禁止委員会による日韓合意の見直し勧告を受けて文政権が歴史問題で攻勢をかける可能性もあり、安保協力に暗雲が垂れ込めている。

 「慰安婦と安保がきれいな線で切れるかどうか…。安保協力の前提となるのは信頼関係だ」

 文氏が大統領選で勝利した9日、政府高官はこうつぶやいた。文氏は選挙戦で日韓合意の見直しを訴えてきた一方、歴史と安保・経済を切り離す「ツートラック外交」を模索する。しかし、日本とすれば、文氏が国際約束である日韓合意をほごにすれば、安保協力に積極的になれないというわけだ。

 朴槿恵(パク・クネ)前政権でも慰安婦問題や朴氏自身の不祥事などで混乱したとはいえ、日韓両国の防衛協力は一定の進展を見せていた。

 平成27年5月に4年ぶりに防衛相会談が行われ、同年10月には13年ぶりに韓国軍艦艇が自衛隊観艦式に参加した。昨年6月に初めて日米韓のミサイル探知・追尾訓練を行い、今年3月まで計4回実施した。

 公表ベースでは、日韓2国間の共同訓練は27年10月を最後に途絶えている。

 だが、自衛隊関係者は「韓国側の要望で公表していないが、海賊対処訓練や捜索・救難訓練は一定の頻度で行っている」と明かす。

 日韓防衛協力の進展は米政府の要望でもあったが、北朝鮮の脅威が深刻化する中で日韓双方が連携を必要としたことが後押しした。朴政権退陣騒動で揺れ動いていた昨年11月には、長年の懸案だった軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の署名にもこぎ着ける成果を挙げた。

 日本側は韓国が持つ北朝鮮関連情報を必要としており、朝鮮半島有事の際の邦人退避では韓国政府の協力が不可欠となる。韓国側にも自衛隊の潜水艦哨戒能力などに対する高い期待がある。

 しかし、文政権の背景には「北朝鮮が韓国より正統性があるとみなす支持層が約3割いる」(外務省幹部)との分析もある。文氏が秘書室長として仕えた盧武鉉政権は、日米両国が提供した情報が北朝鮮側に流れる懸念がつきまとった。政府高官は「文政権にもそうした心配があるのは事実」と打ち明ける。

 歴史問題を利用した支持基盤固めや情報漏洩(ろうえい)への不安が拭いきれない中で、安保協力をいかに位置づけるか。日本政府は難しい選択を迫られることになりそうだ。(杉本康士)

最終更新:5/14(日) 8:02

産経新聞