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「航行の自由」7カ月中断 米、にじむ対中配慮

産経新聞 5/14(日) 7:55配信

 【ワシントン=黒瀬悦成】米政府が昨年10月以来、中国による軍事拠点化が進む南シナ海の人工島の周辺に海軍の艦船や航空機を派遣する「航行の自由作戦」(FONOPS)を実施していないことが分かった。北朝鮮情勢をにらんで西太平洋に展開中の原子力空母カール・ビンソンも南シナ海への航行を慎重に避けるなど、「中国配慮」がにじむ米政府の対応に懸念の声が広がっている。

 米海軍は昨年10月21日、南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島にあるウッディー(永興)島の近くにミサイル駆逐艦1隻を通過させて以降、航行の自由作戦を行っていない。

 事態を受け、米上院外交委員会のコーカー委員長やカーディン筆頭理事などの超党派の上院議員7人は10日、トランプ大統領に連名で書簡を送付し、南シナ海で航行の自由作戦が行われていないことに「懸念」を表明。作戦は「米国の安全保障とアジア・太平洋地域の平和と繁栄に極めて重要だ」として米政権に作戦実施に向けて必要な措置を講じるよう要請した。

 米太平洋軍のハリス司令官は4月27日の上院軍事委員会で、航行の自由作戦は「続行されるべきだ」と強調。26日には下院軍事委で作戦を「間もなく実施する」と表明した。しかし、その後も具体的な動きは見られず、議員らは業を煮やして書簡を送付したとみられる。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(3日付)によれば、太平洋軍は今年2月、南シナ海のスカボロー礁(黄岩島)の周辺12カイリ内の航行を許可するよう国防総省に求めたが拒絶された。

 国防総省が要請を拒絶したのは、発足間もない当時のトランプ政権にいまだ明確な対中戦略がなく、混乱を避ける狙いがあったとみられる。しかし、トランプ政権は4月以降、北朝鮮の核問題の打開に向けて中国の影響力行使に強く依存しており、作戦は一層実施しにくくなったといえる。

 これに対しハリス司令官は、中国がパラセル諸島とスプラトリー(南沙)諸島に続きスカボロー礁を軍事拠点化すれば、南シナ海全域の制圧を可能にする「3連単」が成立すると警告。中国に「スカボロー礁の領有と軍事化を望まない」と明確に伝える航行の自由作戦を早急に実施しなければ、南シナ海が名実ともに「中国の海」になる危険性が極めて高くなってきた。

最終更新:5/14(日) 7:55

産経新聞