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帰還「安全」が条件 避難指示解除から1カ月の浪江

5/14(日) 14:17配信

福島民報

 古里で再び生活できるなんて夢のようだ。
 東京電力福島第一原発事故に伴い福島県浪江町に設定された居住制限、避難指示解除準備両区域が解除されて1カ月余り。町行政区長会長を務める佐藤秀三(72)は町内権現堂の自宅で過ごす日々に喜びを感じている。時折、知人が訪れ、茶飲み話に花が咲く。6年に及んだ避難生活を思うと、わが家での暮らしは快適だ。ただ、帰還して以来、夜への不安が心の片隅に張り付いて離れない。
 町によると、避難指示解除後、町に戻ったのは約300人。近所には無人の家が多い。暗闇に車が止まっているのを見掛けるだけで気持ちがざわつく。
 「安心と安全が約束されていなければ、家に戻る人は増えないよ」と住民の気持ちを代弁した。
 防犯体制の強化を求める住民の要望を受け、原発事故の避難区域となった市町村は独自の対策を講じている。
 住民によるパトロール隊を結成したり、町内に防犯カメラを設けたりして、地域を監視する目を増やしている。浪江町では昨年12月、防犯カメラの画像を確認していた警備会社の警備員からの通報により男2人が窃盗容疑で逮捕された。
 帰還した世帯に非常時用の通報装置を無料で貸し出しているケースもある。避難指示が昨年7月に解除された南相馬市小高区では4月27日現在、帰還している約770世帯のうち3割に当たる約240世帯が取り付けた。
 県外から応援派遣を受け、避難区域内などを巡回している期限付き増員警察官の数は今年度、192人で5年前に比べ150人ほど減った。今後も先細りが予想される中、地域の安全をいかに守るのかが問われている。

 避難区域が設定された各自治体は住民の安全を守る事業に、国の生活環境整備・帰還再生加速事業の予算を充てている。
 ただ、復興創生期間が終了し、復興庁の設置期間が切れる33年度以降、加速事業が存続するかどうかは不透明だ。復興庁の担当者は予算確保について「今後、検討する」と述べるにとどめる。
 浪江町では今年度、住民パトロールや防犯カメラの運用などの事業費として約7億円が必要になるという。加速事業が廃止となった場合、自主財源でこうした防犯対策を続けるのは困難だと町関係者は訴える。
 4月に復興相に就任した吉野正芳(衆院本県5区)は復興庁の後継組織について検討を始める意向を示している。浪江町副町長の宮口勝美(62)は「国の責任で、将来の予算確保について早期に示してほしい」と切望する。(敬称略)

福島民報社

最終更新:5/14(日) 14:42
福島民報