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イタリア映画「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」 イタリア人監督が日本アニメを選んだワケ

産経新聞 5/14(日) 9:30配信

 日本で1975年から76年にかけてテレビで放送されたロボットアニメ「鋼鉄ジーグ」をモチーフにしたイタリア映画「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」が5月20日から全国で順次公開される。伊では大ヒットを記録した。しかし、なぜ、日本でそれほどメジャーとはいえないジーグなのか? 日本アニメをこよなく愛するガブリエーレ・マイネッティ監督(40)に聞いた。

■伊の子供はジーグで正義を学んだ

 本作は、ふとしたきっかけで超能力を得たローマのチンピラ青年、エンツォが、「鋼鉄ジーグ」マニアの女性、アレッシアにさとされ、正義のために立ち上がる-という物語だ。

 決してジーグの実写化作品ではないうえ、ロボットなども登場しないが、ジーグへの熱い思いは伝わってくる内容だ。

 漫画家、永井豪さんらが原作の「鋼鉄ジーグ」は、日本の古代史がモチーフという、やや奇抜なロボットアニメ。サイボーグの主人公、司馬宙(しば・ひろし)が鋼鉄ジーグとなり、古代からの侵略者、女王ヒミカや手下のハニワ幻人(げんじん)と戦う。

 実はジーグは伊でも79年に放送され、彼の地の子供たちに熱狂的に受け入れられた。マイネッティ監督は、「5、6歳の頃に見て夢中になった。ちょっと非モラル的で暴力的な内容がハートをつかんだし、ヒミカは本当に恐ろしかった」と語る。

 伊では、ジーグに加え「マジンガーZ」「UFOロボ・グレンダイザー」といういずれも日本製アニメが、今なお“3大ロボットアニメ”として不動の人気を誇っており、「中でもジーグは特別な思いで受け止められている」とマイネッティ監督はいう。

 その理由の1つが、主題歌だ。

 「日本と同じメロディーだが、歌詞は全然違う“崇高”な内容なんだ」

 ♪走れ若者よ 彼方へ 飛べ 青の稲妻を抜けて すべての人々を 人類を助けに-。マイネッティ監督が、身を揺らしながら口ずさんでみせる。もちろん伊語でだ。伊での放送に合わせて独自につけられた歌詞だ。

 「子供たちは、この歌から正義を学んだ。格調高い歌詞なのに、曲は70年代のディスコ音楽風なので、みんなが大好き。伊で現在放送している社会の不正を告発するドキュメンタリー番組でも、ジーグの歌が使われているくらいだ」

 本作のエンディングテーマは、この主題歌をバラード調にしたもの。歌うのは主演のクラウディオ・サンタマリアで、なんとマイネッティ監督もギターで参加している。

■違う、グレンダイザーじゃない!

 マイネッティ監督が伊では珍しいスーパーヒーロー映画を作ったのは、「安っぽいコメディーばかりを作る伊映画の現状に不満があった」ことが理由だ。

 「ありきたりをぶっこわしたい」という思いから、幼い頃に夢中になった日本アニメに題材を求め、これまでに「タイガーマスク」や「ルパン三世」をモチーフにした短編映画も撮っている。

 本作は当初、グレンダイザーをモチーフに脚本を執筆。しかし、マイネッティ監督は「何かが違う」と感じた。考えた末、違和感は、「主人公とロボットの関わり方」にあることに気づいた。

 つまり、マジンガーZもグレンダイザーも、主人公がロボットに乗り込んで操縦するスタイルだ。一方、ジーグは司馬宙がロボットの頭部に変形。ヒロインの卯月美和(うづき・みわ)が操縦する戦闘機「ビッグ・シューター」から打ち出されるパーツと合体することで、「鋼鉄ジーグ」が完成する。

 「この作品でも、主人公は超人的な力を持つが、ヒロインの導きがあって初めてヒーローになれる。グレンダイザーじゃない、ジーグだ! とひらめいた」

■君はジーグだ! と永井豪さん

 この作品は昨年、東京と大阪で開かれた「イタリア映画祭」でも上映され、好評を博した。

 「すごくいい反応だった。日本の観客は細部までよく見てくれるのでうれしかった。彼らの心を多少なりとも動かせたと思う」とうれしそう。ただ、「日本でのジーグの不人気ぶりは納得がいかない」と不満ももらした。

 今年3月に2度目の来日を果たしたが、これはマイネッティ監督にとって忘れられないものとなった。ジーグの、そしてマジンガーZ、グレンダイザーという伊における「3大ロボットアニメ」を生み出した永井さんと会うことができたのだ。

 作品を見た永井さんは、内容を非常に喜び、「『鋼鉄ジーグ』に憧れる女性のため、正義の戦いに立ち上がる“男の純情”が美しい!! 『ガンバレ、君は鋼鉄ジーグだ!!』」というコメントを寄せている。

 「感激で胸がいっぱい。偉ぶったところがまったくない人だった。生みの親である永井先生がどう見てくれるかはすごく気になっていたんだ」と感慨深そうだ。

 マイネッティ監督のあふれる熱い思いがこもった本作。ジーグの故郷、日本ではどのように受け止められるのだろうか。

(文化部 岡本耕治)



 ガブリエーレ・マイネッティ監督 1976年11月7日、伊ローマ生まれ。

最初に撮った短編「Tiger Boy」(2012年)が、伊ほか欧州各地のさまざまな映画賞を受賞。今回の「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」(15年)で長編デビュー。伊映画界の最高峰、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で最多7部門を受賞するなど多数の賞を受けている。

最終更新:5/14(日) 9:30

産経新聞