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タイブレーク導入? 高校野球奪三振記録保持者・板東英二氏の本心は

サンケイスポーツ 5/14(日) 15:00配信

 【球界ここだけの話】

 5月初旬、サンケイスポーツ評論家・板東英二さんと会ったときのこと。

 私「あの騒動、てっきり板東さんが裏で画策しておられると思ってましたよ」

 板東「君、なんて失礼なことを言うんや。そんなこと、するわけないやろ」

 冗談っぽく尋ねると、大笑いしながら否定されてしまった。“そんなこと”とは、高校野球のタイブレーク導入論争だ。

 ことしのセンバツ。福岡大大濠-滋賀学園、福井工大福井-健大高崎の2試合が連続して延長十五回引き分けになった。以前から投手の負担が問題となっていた高校野球。再試合の連続で、ついに高野連もタイブレーク制採用を含めた善後策の検討に入った。

 導入案の賛否や功罪などは専門家に任せる。ただ、個人的に気になるのは、100年を超える高校野球にさん然と輝く記録に、多大な影響が及んでしまうこと。もし、タイブレークを導入したら、“あの記録”は永遠不滅になるのだ。

 「まあ、もう永久に破られないやろうな」

 板東さんが認め、私も一番気になるのは1試合最多奪三振(25個、18イニング)と大会通算最多奪三振(83個)。60年近く破られない偉大な2つの記録保持者は板東英二(徳島商、1958年)。そう、板東さん自身だ。

 現代の若者にはタレントとしか認識していない方もいるらしいが、プロで77勝(65敗)もマークされている。何より高校時の奪三振記録は後世の大投手が何人も迫まりながら誰も超えられない。

 大会通算83個は、ひょっとしたら破るかも…と期待を抱かせたのが2006年の斎藤佑樹(早実-早大-日本ハム)。決勝戦再試合を含めて「78」まで肉薄した。12年の松井裕樹(桐光学園)も「68」まで伸ばした。

 実は、この松井裕樹の時の思い出があるので、冒頭の失礼な質問になってしまったのだ。

 この年、松井は1回戦(対今治西)で22奪三振を記録。板東さんの1試合25奪三振に迫り、大会記録も塗り替えそうなムードが漂った。本紙評論家・板東さんはこう答えた。

 「レベルの高い四国のチーム相手に22個はホンモノ。ぜひ、私の記録を抜いて。記録は塗り替えられるもの」

 松井は2回戦でも19個を奪う。計41個。

 「もう諦めました。松井クンなら抜かれても本望」

 3回戦は12奪三振。計53個。

 「何とか、83個で止まってほしい。せめてタイ記録で名前は残したい」

 世間を楽しませてくれるリップサービスの名手・板東さんならではの受け答え。だが、やっぱり、名前は残ってほしいというのが、人間の本性…。板東さんは記録を守るためにタイブレーク導入に水面下で奔走したのでは…と私は意地悪に考えたのだ。

 新ルール設定で延長が延々と続くことなく、一定の制限が設けられれば、必然的に奪三振の数は限られる。1試合25個も、間違いなく大会83個も永久不滅になる。

 「タイブレーク? そんなバカな話はないよ。100メートル走を90メートルにするみたいなもんや。おかしな話。そんなことしてまで守りたくないよ」

 板東さんは大まじめに、改革の動きに苦言を呈した。毅然としてカッコ良かった。紛れもない高校野球界のレジェンドの言葉。どう受け止めますか?

 ただ、この先、とんでもないスーパー奪三振ヒーローが出現したら、板東さんは記録が破られないことを願いそうな気がする。おそらく…。(上田雅昭)

最終更新:5/14(日) 15:00

サンケイスポーツ