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再生医療で世界最先端を切り開いた女性科学者の思考術

5/14(日) 9:10配信

BuzzFeed Japan

再生医療で世界を走る女性科学者がいる。高橋政代さん(55歳)。眼科医であり、理化学研究所プロジェクトリーダーだ。ノーベル賞で話題になったiPS細胞を使い、目の難病を治す新しい治療法を開発している。なぜ高橋さんが世界最先端を走っているのか。独特の思考術にその鍵があった。【石戸諭 / BuzzFeed Japan】

「白黒つけようとする思考から新しい研究は生まれない」

2017年4月、付近の桜が満開になっていた京都大学iPS細胞研究所、高橋さんが時間通りにあらわれた。

臨床現場にも立ち、最先端の研究を仕切る。それ以外にも講演に講義に、会議に……。分刻みのスケジュールが詰まっている。

「新しいアイディアを実現するためには……」と、大阪出身らしい関西弁で切り出す。

「なにが正しいか否か白黒をつけずに情報を取り込むこと。白黒つけようとする思考から新しい研究は生まれない」

言葉の意味は彼女の現在、キャリアをみれば理解できる。

まず、現在である。

高橋さん率いるプロジェクトチームが世界をリードするのが、目の網膜の難病「加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)」の再生医療研究だ。

根本的な治療が難しいとされる難病に、高橋さんたちは体のどの部分にも変化することができる「万能細胞」iPS細胞を使った、新しい治療法の確立を目指している。

どんな病気で、何が画期的なのか。少しだけ科学の言葉もつかって説明する。
私たちの体は、光を黒目から取り込んで、眼球の内側にある網膜で感じ取っている。

網膜はそこに詰まった神経細胞を通して、脳に「光を感じましたよ」と情報を送り、脳のなかで光は映像化される。

再生医療と社会の接点を研究する八代嘉美さん(同研究所准教授)の説明を借りると、「黄斑」というのは網膜の中央部で光が集中するところだ。

そこに細胞レベルで異常が起きるのが「加齢黄斑変性」という病気である。

発症は50歳以上に多く、患者は加齢とともに徐々に視力が衰える、視界がゆがむといった症状がでて、ひどい場合は重篤な視力低下を来す。

高橋さんはこう考えた。

この病気は網膜のなかにある細胞-網膜色素上皮細胞-が悪くなっている。

ならばiPS細胞をつかって、悪くなった細胞にかわる新しい細胞を作りだし、手術で移植すれば網膜の機能が回復するのではないか---。

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最終更新:5/14(日) 9:45
BuzzFeed Japan