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【いま大人がこどもにできること(43)】触覚を育てる

ニュースソクラ 5/14(日) 13:00配信

知的な世界に直結する「触る」「触られる」

 今日はちょっと本から離れて皮膚…… 肌のことを少々話したいと思います。

 赤ちゃんや小さい子どもを抱っこしたり撫でてやったりすることは大事ですよね。
 大人でも、しんどいときにぎゅっと抱き締められたり、頭を撫でてもらうとかなり楽になります。
 もっとも大人の場合は相手を選ぶので、子どもほど簡単じゃないですが……。

 赤ちゃんはそこまで相手を選びませんが、それでもやっぱり、お母さんやお父さんは特別!

 大人になるとあまり意識しなくなってしまいますが、皮膚……肌は、脳にとってはかなり大きい情報収集器官です。
 脳自体は外界と接触していないので、いま、体が寒いのか暑いのか、気持ちいいのか悪いのか、は皮膚からの情報によって判断しているわけですから。

 そのほかに、匂いだったり音だったり視覚だったり、からも情報を得ているわけですが、子どもたちを見ているとその五感のなかでは触感、が一番先に仕事を始め、一番先に鈍くなる……ような気がします。

 ピーナツの薄皮がありますよね?
 あれを集めて手を突っ込むと、めっちゃめちゃ気持ちいいの、知ってます?
 私は四歳の女の子に教えてもらいましたが、ホントに絶品に気持ちよかったです。でも、向こうはそれで30分遊んでるのに、私は飽きた。

 確かに気持ちいいけど……。
 プールも砂遊びもブランコも、あんなに楽しかったのにいまはもう楽しくない……。
 子どもと遊び、幸福にするには実はあんまりお金はいらない……ただ、自分の感覚ではなく、子どもの感覚を知っていることが大事なんです。
 自分は楽しくないけど、子どもはこれ、楽しいんだよね~、という……。

 これはまだ、科学的に証明されてはいないと思いますが、子どもたちを見ていると、少なくとも三才くらいまでの間……幼児になる前の乳児、の時代は、そういう皮膚から得る情報、触感で脳のなかを育てている部分が相当あるんじゃないかと思います。
 なんていうか、そうやって遊んでる子って、ものごとのつかみかたが、きめ細かくなっていくように見えるんですよ。

 小さい子が泥遊びや砂場遊びが好きなのは、それが楽しい、と感じるように脳がセットされているからで、なぜそうセットされるかというと、たぶん必要だから……なんじゃないかなぁ、と思います。

 ですからプールにいれたり、日向ぼっこさせたり、泥んこをこねたり折り紙折ったり、というような、子どもがしたがることは、みんな脳の発達に有効なんでしょう。

 赤ちゃんのタオルケットや肌着が上質の肌触りのいい布で作られるのも、肌を傷つけない以上の意味があるのだと思います(だからお祝いにはいいですよね。特に親が自分ではびびって買えないお値段のものは……)。

 もっと大きくなって小学生になると、ときどき保健室に、手が痛い、といってやってくる子がいる、という話を保険の先生がしてくれたことがあります。
 これはほとんどが低学年だそうですが……。
 どこも悪くないのですが本人は本当に痛い、と感じている……。

 そういうのはね、どこも悪くなければ、さすれば治るんです、とその先生は説明してくださいました。
 それも機械的にではなく、あぁ、大変ねぇ、可哀想ねぇ、と思いながらしばらく撫でてやっていると、痛くなくなった、といって帰っていくのだそうです。

 人間の精神は肉体を操るんだねぇ、ですよ。

 私のボイスの先生のレッスンのなかには、片手でもう片方を触れるか触れないかくらいのところを撫でる、というのがあります。
そうすると、どちらも自分の手なので、撫でる感覚と撫でられている感覚と両方感じるはずだ、というのです。
 やってみ?
 感じます?

 初めてやったときはわからなかったんですが、そう思いながら撫でていると、なんというかだんだん回復してくるのがわかる……。
はじめは鈍かった感覚が、意識することで目覚めていくのがわかる。
 で、皮膚は内蔵に直結しているので、そうすると内蔵も動き出すのだそうです。

 小さいときに肌接触のシャワーを存分に浴びた人は、大人になったときにはそれほど必要としません。
 そうして、他人に分けてやることもできます。
 でも、足りなかった人はいつまででも求め続け、人にはあげられない人になってしまう確率が高くなるように思います。

 どうぞお子さんを
“抱っこして”
“おんぶして”
“ぎゅっとして”
“頬擦りして”
やってください。

 それが本をはじめ、知的な世界に入れる土台になるのですからーー。

■赤木 かん子:いま大人がこどもにできること(本の探偵)
1984年、子どもの本の探偵としてデビュー。子どもの本や文化の評論、紹介からはじまり、いまは学校図書館の改装からアクティブラーニングの教えかたにいたるまで、子どもたちに必要なことを補填する活動をしている。
高知市に「楽しく学校図書館を応援する会」として学校図書館モデルルームを展開中……。
著書多数。

最終更新:5/14(日) 13:00

ニュースソクラ