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10年後の「希望は、戦争」 フリーライター 赤木智弘さん 閉塞感 何も変わらず

北海道新聞 5/14(日) 7:01配信

■1%の可能性に

 「希望は、戦争」。そんな衝撃的な言葉を当時31歳のフリーターの男性が社会に投げかけたのは10年前の冬だった。自衛隊の任務を拡大する安全保障関連法が施行され、日本は戦争のできる国へとかじを切ったように見える。私たちはどんな時代を生きているのか―。かつて、胸に突き刺さるような言葉、心に響く言葉、記録されるべき言葉を発した人々の今を訪ね、私たちの「現在地」を考える手がかりにしたい。(報道センター 関口裕士)

 41歳になった赤木智弘さんの名刺の肩書はフリーライター。東京都内のアパートで独りで暮らす。交差点を行き交う人々の流れと同じように、途切れることなく、記者の質問に答える。

 「平和な日常が続いている限り、僕らの屈辱的な生活は100%変わらない。戦争が起きても99%は良くならないかもしれないけど、だったら1%の可能性に賭けてみよう、というのが『希望は、戦争』の基本的な考え方でした」と言う。

 赤木さんは栃木県生まれ。1996年、バブル経済がはじけた後の就職氷河期に東京のコンピューター専門学校を出た。実家近くのコンビニエンスストアのアルバイトで7年間、週4日、夜10時から朝6時まで働いた。「常に屈辱感を感じていた」という2006年末、月刊誌に寄稿したのが「希望は、戦争」だった。

 当時は第1次安倍晋三政権。あまり知られていないが2002年から07年にかけての69カ月間、日本の景気は戦後最長の拡大期にあった。しかしこの間、赤木さんのような非正規雇用が増え、貧富の格差も拡大した。

 それから10年たった20日の施政方針演説で、安倍首相は、名目国内総生産(GDP)の増加などアベノミクスの成果を強調し、正規雇用は24カ月連続で前年を上回ると自賛した。だが非正規は、この20年で倍増し2千万人を超えている。「政府は自分たちに都合の良いことしか言わない」と演説を聞いた赤木さんは話した。

 「GDPが増えても、株価が上がっても、得しているのは大企業や一部の投資家だけ。賃金には反映されない。経済成長していると言われ、何か自分たちにも利益があるんじゃないかと思っている人は多い。でも安倍さんの言う(大企業がもうかれば中小もおこぼれで潤うという)トリクルダウンなんてありえないですよ」

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最終更新:5/14(日) 7:01

北海道新聞