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制作に5年「筑紫明朝」書体人気、ベストセラーの表紙にも

西日本新聞 5/14(日) 7:30配信

 私たちが日頃使う「文字」にもデザイナーがいる。書体制作会社「フォントワークス」(福岡市)の書体デザイナー藤田重信さん(60)=福岡県筑紫野市=は「筑紫(つくし)書体」を考案。書籍カバーなど広く社会で使われる人気書体となった。近年も新しい書体を発表し続け、これまで監修を含め携わった書体は約130種類に上る。「今後も情感が湧くような書体をつくりたい」と語る。

⇒【画像】優しくフラットなイメージの「筑紫明朝」

 ベストセラーになった自己啓発本「嫌われる勇気」(ダイヤモンド社、2013年)。表紙の文字で使われたのが「筑紫明朝」だ。本の装丁を手掛けたブックデザイナーの吉岡秀典さん(41)は「明朝体だが現代的な雰囲気があり、優しく、フラットで広く人に伝わる。なかなか代わりはない」と話す。

「自分なりの明朝体をつくりたい」

 筑紫書体の特徴は曲線にある。藤田さんは「人間の手は線を真っすぐに書けない。人の体を横から見たように、S字の曲線を入れた方が表現が豊かになる」と説明。近年も「筑紫アンティーク明朝」など筑紫シリーズを次々発表し、書籍や広告、商品パッケージなどに幅広く使われている。

 藤田さんは高校のデザイン科を卒業後、教師の勧めで写真植字機メーカー「写研」(東京)に就職。創業者が手掛けた「石井明朝」に魅了された。「心臓がバクバクするほどほれた」という。実は、石井明朝は九州に縁がある。「築地5号」という築地活版製造所(東京)の書体が基になっており、同製造所は長崎市出身の「近代印刷の祖」とされる本木昌造(1824~75)が開いたものだ。

 その後「自分なりの明朝体をつくりたい」とフォントワークスへ。書体をデザインするアイデアは「子どものころから美しいと思ったり、かっこいいと感動したりした形が頭の中にある」。例えば筑紫明朝の「り」は、クマゼミに似ているという。漢字の「子」の「はね」の部分は1回ではねず、3段階に角度を付けて、はねた。自動車の2代目「カローラ」の後部の形などがヒントになったという。

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最終更新:5/14(日) 7:30

西日本新聞