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【漢字トリビア】「手」の成り立ち物語

TOKYO FM+ 5/14(日) 11:30配信

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「手」。「手」そのものを意味するだけでなく、「手」とは、人の役割、手の主の生業を意味することもあります。

「手」という漢字は、手の形を描いた象形文字。
手首から先の、指を広げた形を表しています。
ささっと崩して「手」という文字を書いてみれば、忙しく動く手の形が見えてくるよう。
手のひらをじっとながめてみれば、感情線に頭脳線、生命線に運命線……、「手」という文字が浮かんでくるような気もします。

漢字が生まれたのは、今からおよそ三千年前の中国・殷の時代。
白川静博士いわく、漢字は神と人とが交信するために作られたもの。
権力者による政治を正当化するための手段だったといいます。
その当時、人々の「手」は国を造り、領土を広げる道具でした。
担い手、作り手、働き手、武器をもって戦う手。
彼らのその手は疲れ果て、汚されることもあったでしょう。

それでも人の命がこの世に生み落とされる瞬間は、いついかなる場所であれ、必ず誰かの手によって受け止められてきました。
生まれたばかりの小さな命は、人の手なくして、生きてはゆけないはかない存在。
たくさんの手に触れられて育ち、やがて自らの手で、世界に触れようとするのです。

ではここで、もう一度「手」という字を感じてみてください。

大人たちの手を離れた幼子は、自分の手で、世界と触れ合うよろこびを味わいます。
雨、土、花、虫、そして、はじめての友だち。
鉛筆、本、楽器、そして、愛を誓う人。
手を使い、手を通して刻まれた記憶は、人を支える力になります。
ときに触れてはならぬものに触れ、傷つき悔やむこともあるかもしれません。
それでも臆せず手を伸ばして触れることで心は動き出し、世界もまた、変わり始めるのです。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『“手”をめぐる四百字 文字は人なり、手は人生なり』(季刊「銀花」編集部/編 文化出版局)
『このては あなたのために』(ダイアン・アダムズ/文 ペイジ・カイザー/絵 やまねもとよ/訳 評論社)

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2017年5月13日放送より)

最終更新:5/14(日) 11:30

TOKYO FM+