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熱血教師の過労死 逆転で認めさせた妻が家族会設立

カナロコ by 神奈川新聞 5/14(日) 12:36配信

 “労働被災者”になる前に相談を-。過労死で大切な人を失った家族らが25日、「神奈川過労死等を考える家族の会」を設立する。長時間勤務など過重労働に起因して命を落とすケースが後を絶たない中、当事者や家族の苦しみを共有し悲劇を繰り返さない社会を目指す。「突然命を奪われて立ちすくむ人たちの支えになりたい」。過労死した夫の公務災害認定まで5年半を要した工藤祥子さん(50)は、自身の経験に重ねて支え合う大切さを呼び掛ける。

 熱血教師だった。工藤さんの夫・義男さんは2007年6月、修学旅行の引率から帰宅した直後に体調不良を訴え、くも膜下出血で10日後に死亡。当時40歳、4月に赴任した横浜市立中学校で生徒指導専任と学年主任を兼務する激務を抱えていた。

 地方公務員災害補償基金(地公災)が公務災害と認定したのは、死亡から5年半後。祥子さんは08年に地公災県支部に申請したが、10年5月に「職務は通常の範囲内だった」などとされ不認定に。同7月に同支部審査会に不服を申し立て、高度の精神的・肉体的負荷と死亡との因果関係が認められた。

 「過労と激務を立証するため夫が死に至るまでの日々をたどり、生前を思い出しては泣いた。夫を止められなかった自分を責め、どうしようもなかった」と振り返る祥子さん。公務災害認定のハードルの高さを目の当たりにし、同じ境遇の遺族らとさまざまな場で制度の改善を訴えてきた。

 全国過労死を考える家族の会メンバーとして活動を続ける中で痛感したのは、県内の被害の深刻さだった。神奈川過労死対策弁護団によると、県内で過重労働に起因した精神障害の労災請求件数は年間120~130件で、認定件数とともに全国の約1割を占める高水準で推移している。一方、労災認定手続きの負担などを理由に泣き寝入りするケースも後を絶たないのが現状で、家族の会は突然の事態に備えるためのサポートにも取り組んでいる。

 神奈川の家族の会は、首都圏では東京に次ぐ2カ所目で、全国14カ所目。25日に設立総会と「結成記念の集い」を横浜市中区で開き、工藤さんが代表に就く予定だ。今後は交流会や勉強会などで公的支援につなげるほか、シンポジウム開催などにも取り組んでいく。問い合わせは、神奈川総合法律事務所電話045(222)4401。

◆教員の過労死認定 遺族には険しい壁

小さな2人の娘を抱え、絶望に暮れた。夫は、40歳の若さで亡くなった。

 工藤義男さんは横浜市立あざみ野中の教員だった。2007年6月にくも膜下出血で死亡した。過労が原因だと、公務災害(公務員の労働災害)の申請を決めた。その作業は傷口をえぐるような辛苦だった。妻の祥子さんが振り返る。

 「過労と激務を立証するため、夫が死に至るまでの日々をたどっていく。生前を思い出しては泣き、夫を止められなかった自分を責める。娘たちのつらさまで受け止める余裕がなく、どうしようもなかった」

 工藤さんは結局、5年半の歳月を経て過労死と認められた。その間に家族関係が悪化し、両親に同居を頼んだ。それほどまでして、やっと認定にこぎ着けた。

 教員の場合、労災は労働基準監督署ではなく、地方公務員災害補償基金(地公災)が審査する。被災後の給与や年金、治療費などを補償する機関であるはずの地公災はその実、被災者や遺族にとって高く険しい壁となって存在する。

 それは、数字からも明らかだ。05~09年度の5年間で比較すると、脳・心疾患の労災認定率は民間の44・5%に対し、地公災は20・3%と半分以下。死亡事案で比べても、46・9%と25・5%と大幅な開きがある。教職員に限ると、この5年で「過労死」と認められた件数は、わずか14件しかない。

 過労死弁護団全国連絡会議幹事長を務める川人博弁護士は、「この数字は氷山の一角にすぎない」と指摘する。「教師の場合は労災申請に学校長、教育委員会の承認が必要になるが、監督責任を問われるため協力が得られにくい。実際に校長が申請書類をずっと隠していたケースもあった。心理的負担に耐えられず、泣き寝入りする遺族も多い」

 加えて被災者や遺族を苦しめるのが、審議の遅さだ。06年に都内の小学校女性教諭が自殺したケースでは、2年近く地公災に何の動きもなかったため、遺族は違法性を確認する「不作為の違法確認請求訴訟」を東京地裁に起こした。

 その後審理は進んだが、遺族代理人の平本紋子弁護士は「ここまでしないと地公災は動かない。民間の労災審理はスピードアップが進む中、遺族の感情を考えない、あり得ない対応だ」と批判する。

 厚生労働省が過労の認定基準を見直した01年以降、民間企業での認定件数は跳ね上がった。一方、地公災はほぼ横ばいが続く。民間では広がったセーフティネットから、地方公務員は抜け落ちている。

 川人弁護士は糾弾する。「数字を比較すれば、地公災の対応は意図的に労災認定を抑えていると捉えられても仕方がない。申請手続きから審理の方法まで、地公災はあり方を根本から見直す必要がある」

最終更新:5/14(日) 15:41

カナロコ by 神奈川新聞