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「共謀罪」対暴力団でも賛否 兵庫の弁護士に聞く

神戸新聞NEXT 5/15(月) 7:31配信

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の審議が衆院で大詰めを迎えている。「市民の監視につながり、人権や自由を広く侵害する」と反対する日弁連に対し、「暴力団の弱体化に有効」と追放運動に取り組む弁護士らは法案の必要性を訴える。指定暴力団山口組(神戸市)と神戸山口組(淡路市)が本拠を置く兵庫県の弁護士は、どのような視点で審議を見つめるのか聞いた。(小林伸哉)


 日弁連民事介入暴力対策委員会幹事の垣添誠雄(もとお)弁護士(75)=尼崎市=は賛成の立場。山口組と神戸山口組が2015年8月に分裂し、さらに先月、神戸側の一部が「任●(にんきょう)団体山口組」を結成し「三つどもえの抗争」が懸念される中で「兵庫は特に危険。市民に危害が及ぶ抗争がいつ起きてもおかしくない」と危機感を募らせる。

 尼崎市で1992年に暴力団抗争の巻き添えで死亡した女性=当時(19)=の遺族と、組長を相手取った損害賠償請求訴訟を闘った。「暴力団犯罪は起きてからでは被害者救済が難しい。事後的捜査は国民の泣き寝入りを容認してしまう。近年は振り込め詐欺への関与も指摘される中、未然防止が重要だ」と強調する。

 対象犯罪が277と多いことも「網を広くかけ、多種多様な犯罪、資金源を封じる意味がある」と語る。

 捜査権乱用の危険を訴える反対派の憂慮には「日本の民主主義は成熟しており、考えにくい。処罰には『準備行為』が必要で、内心の自由を害することはない」とする。

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 「『安全・安心』に反対する人はいない。ただ、憲法が保障する『通信の秘密』『プライバシー権』『個人の尊厳』がてんびんにかけられ、犠牲になっていいのか」。兵庫県弁護士会で共謀罪問題対策プロジェクトチーム座長を務める吉田維一(ただいち)弁護士(40)は反対活動を続ける。

 「対象となる集団の定義があいまいで、拡大解釈される恐れがある。判断するのは捜査当局。捜査が自白重視になり冤罪(えんざい)も懸念される」と指摘する。

 「準備行為は『お金をおろす』『買い物をする』『移動する』といった日常生活と区別できないので、捜査側の監視が進む。自由に話せる、つながれる、伝えられるからこそ人間なのに。治安維持法という暗い歴史もあることを忘れないでほしい」と語る。

 「さらなる暴力団対策が必要なら、特化した実効性のある法案を、人権に配慮して提案できる。『共謀罪』法案以外の選択肢があるはずだ」と話す。

 元山口組顧問弁護士の作家山之内幸夫さん(71)=大阪市北区=は「多くの市民は『ヤクザが本当に無くなるなら素晴らしい』と思うはず。しかし、『共謀罪』法案では市民も容易に犯罪者扱いされかねない。権力に大きな力を与えれば、市民社会も自由を失うということを忘れてはいけない」と語る。

(注)●は「侠」の右が「夾」


<<共謀罪の流れ>>

 「共謀罪」法案は「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」の活動として、重大犯罪の実行を2人以上で「計画」し、最低1人が「準備行為」を行った段階で計画に加わった者を処罰する内容。政府は東京五輪に向けたテロ対策や、国際組織犯罪防止条約の締結に必要として成立を目指す。

 政府は「対象をテロ集団、暴力団、薬物密売組織などに限定している」「一般人は対象外」と説明してきたが、「集団の定義には『その他』との抜け道がある」「市民への監視強化が進む」との批判が根強い。

 日弁連は2月、法案の国会上程に反対する意見書を法務大臣らに提出。一方、組織犯罪対策の推進を求める弁護士約130人が3月、法案の必要性を訴える提言を発表した。

最終更新:5/15(月) 8:11

神戸新聞NEXT