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つくばの刀剣作家・宮下さん 新作名刀展で入賞

茨城新聞クロスアイ 5/15(月) 13:00配信

県内で数少ない刀匠(刀鍛冶)の一人として活動するつくば市の刀剣作家、宮下正吉さん(32)が、今春開かれた日本美術刀剣保存協会主催の「新作名刀展」で努力賞に輝いた。今回を含めて4回目の入賞。同市蓮沼に「筑波鍛刀場」を構え、若い世代などの刀剣ブームに応えて個人や団体の見学を積極的に受け入れてきた。同市に集積する先端科学技術の研究機関と連携を模索するなど、「現代にもつくばで刀を作っている人がいると知ってもらい、刀に興味を持ってもらえれば」と、つくばならではの刀剣の魅力発信にも意欲を示す。


同展で努力賞に輝いた作品は、華やかな刃文が特長の太刀(長さ68・6センチ)。刃文は刀身の模様で、真っすぐな直刃と、波打った乱刃に分かれ、今回の作品は乱刃の丁子を追求した。

宮下さんは大学卒業後、長野県東御市の県指定無形文化財認定者である宮入法廣さんの下で7年強修業し、その間の2012年に刀鍛冶の認可を受けた。14年11月、古里のつくば市内に鍛刀場を設けた。刀の芸術性も重視し、意識して「作家」を名乗る。

中学時代から伝統工芸に興味があったという。大学の工学部で学ぶ一方、刀剣の展示会によく足を運んだ。大学2年の時に見た展覧会で、群馬県太田市出身の人間国宝で刀匠の大隅俊平さん(故人)の作品に引かれ、刀鍛冶を目指そうと思った。両親の反対を押し切って大隅さんに弟子入りを願い出て、宮入さんを紹介された。

修業時代の鍛刀場は浅間山が見渡せる場所だった。現在の鍛刀場は筑波山の麓に位置し、「この仕事場も筑波山が見え、稲が育ち、稲穂が垂れる景色をきれいと思うことが感性を育てる」と宮下さん。「五感を鍛えろ」という宮入さんの言葉を思い出す。

全国に約300人といわれる刀鍛冶の中で、日本刀だけで生活できるのはわずか1割の厳しい世界。刀に引かれた理由について「鉄のシンプルな美しさに感動した」としながら、「日本刀は奥が深い」という。鍛え方や材料選びなど新たな技術を習得しながら、目指すのは大隅さんの直刃。根元から先端まで真っすぐに作り上げる作風で、ゆがみを出さずに仕上げるのが難しい。

作刀技術を追求する一方、つくば市内の研究機関との連携・協力を模索するなど、刀匠としての経験や技術を科学の分野で生かせないか考え、「つくばならではの取り組みもしていきたい」という。

今回の入賞作は6~9月にかけて、埼玉県など3県で巡回展示される。来年1月には、東京・刀剣博物館の移転後のオープン記念として展示される予定。 (大貫璃未)

茨城新聞社

最終更新:5/15(月) 17:05

茨城新聞クロスアイ