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千秋楽までもつの? ボロボロ稀勢の里は初日黒星で早くも試練

日刊ゲンダイDIGITAL 5/15(月) 13:40配信

 7秒の完敗劇だった。14日に初日を迎えた大相撲5月場所。横綱稀勢の里(30)は1937年に双葉山が達成して以来、80年ぶりとなる初Vからの3連覇に挑むことで注目が集まっている。この日は皇太子ご夫妻が見守る台覧相撲となったが、いきなり黒星を喫した。

 対戦相手は176センチ、145キロと小柄な小結嘉風(35)。稀勢の里は立ち合いで左差しを狙うも、嘉風の強烈な右おっつけに左を差せない。攻め手を封じられ、腰高で何もできないまま、簡単に押し出されたから館内は騒然。座布団も戸惑い気味にわずかに舞うだけだった。

 支度部屋での稀勢の里は、「動き? 悪くはない。相手が強いから負けた。相手が上回っていたんじゃないですか」と、報道陣の質問に淡々と答えた。

 先場所負った「左上腕筋と左大胸筋の損傷」というケガに苦しみ、ろくに稽古ができない中、11日に今場所出場を決めたばかり。患部のテーピングや初日の相撲を見る限り、まだ万全でないのは明らかだ。

 八角理事長(元横綱北勝海)は「うまく攻められたよね」とこう言った。

「いつもは左のおっつけから差しにいくけど、今日はいきなり差しにいっていた。あれではよほどうまく踏み込まないと差せない。不安があるから、おっつけられないんだろう。(ケガした左上半身は)大丈夫なんだろうけど、不安を払拭するまで稽古ができなかったのかな。稽古場だと様子を見ながら力を出せるけど、本場所は違う」

 相撲評論家の中澤潔氏もこう言う。

「攻めて負けたのならまだいいが、小柄な嘉風に手も足も出ないのでは……。全く相撲になっていないので、何が悪いかの理由も探しようがない。嘉風の右おっつけは決して厳しいものではなかったのですが、これでは『左腕はまったく使えません』と公にしたようなもの。左腕のサポーターを見る限り、不安はまだあるのでしょう」

 稀勢の里は責任感の強い横綱だ。しかしこれでは、その「責任感」が仇になるかもしれない。左を使えない現状で千秋楽まで土俵に上がれば、患部の悪化やさらなるケガの恐れもある。19年ぶりに誕生した和製横綱が短命に終わろうものなら、せっかく盛り上がった大相撲人気も水の泡となりかねない。そうした懸念は相撲協会にもあったはずだ。それでも休場を促すことはできなかった。

 5月場所のチケットは発売わずか90分で完売。懸賞も約2200本と過去最多記録を更新した。稀勢の里への指定懸賞は先場所の倍となる608本と大盛況。「本人が決断すればまだしも、こちらから休場を勧めるわけには……」というのが、相撲協会の本音だろう。

■現師匠は有益なアドバイスもなし

 こうした時こそ師匠の一言がモノ言うのだが、田子ノ浦親方(元平幕隆の鶴)にそれを期待するのは無理だ。

「稀勢の里が師匠と慕うのは、先代の故・鳴戸親方(元横綱隆の里)ひとりだけ。彼にとって、現師匠はものの数にも入っていないでしょうね。田子ノ浦親方は現役時代の番付最高位は前頭8枚目止まり。しかも、部屋を持ってまだ7年にも満たず40歳と経験も浅い。稀勢の里に相撲を一からたたき込んだ鳴戸親方と比較するのは酷にしても指導力を疑問視されている。だから稀勢の里は、相撲に関してはすべて自分で考えている。いまさら親方が何か忠告したところで、耳を貸さないし、有益なアドバイスもない。3日に行われた横綱審議委員会の稽古総見を無断欠席した前代未聞の一件は、田子ノ浦親方が協会への報告を忘れたということになっているが、2人のコミュニケーション不足が原因で起きたミスという声もある」(相撲記者)

 最大の問題は、千秋楽まで相撲が取れるのかということだ。「出る」と決めたからには、簡単に途中休場はできないだろうが、前出の中澤氏が言う。

「今日の相撲を見る限りでは、『今場所は休場して、来場所出直します』と言った方がよかった。とても千秋楽までもつとは思えません。仮に3連敗でもしようものなら、いよいよ休場もあるでしょう。負けが込めば、休場しなくてはいけないのが横綱の宿命です。稀勢の里にとっては初めての試練。これがいい勉強になればいいのですが……」

 先場所の千秋楽では、左腕がほとんど使えない状態で逆転優勝と大粒の涙でファンを感動させた稀勢の里。80年ぶりとなる偉業どころか初日の土でいきなり追い込まれてしまった。

最終更新:5/15(月) 14:09

日刊ゲンダイDIGITAL