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ハーグ条約で子ども返還 裁判の女性「早めに行動を」 国際結婚多い社会に呼びかけ

琉球新報 5/15(月) 14:23配信

 国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定める「ハーグ条約」に日本が2014年4月に加盟して3年。今年2月には、沖縄県内に住む40代の女性が条約に基づき、米国に渡っていた1歳の娘の返還を求めた申し立てについて、米国の裁判所が子どもを日本へ帰国させる返還命令を出した。県内からの返還申し立てが認められたのは初めてで、女性の娘は3月15日に帰国した。国際結婚の多い沖縄では同様のケースが今後も予想される。琉球新報の取材に応じた女性は「こんな手だてもあることを知って早めに行動してほしい」と語った。(大城周子)


 およそ1年半に渡る米国での裁判を経て娘を取り戻した県内の40代女性。「本当に大変な闘いだった」と振り返る。

 女性は14年に在沖米陸軍所属の男性と結婚。15年3月に夫の異動に伴って米本土へ転居したが、妊娠中にドメスティックバイオレンス(DV)を受けたことで帰国し、7月に娘を出産した。その後、夫側の親族の結婚式への出席を強く求められて10月に渡米。この旅が闘いの始まりだった。

 夫の実家のあるフロリダ州へ立ち寄った時だ。別れ際に娘を抱いた義母は背を向けたまま返してくれず、やっとの思いで引き離したところで警察が現れた。女性は「事情を聞かれるだけだろう」と促されるまま警察車両に乗り、そのまま連行、逮捕された。理由は夫からの「自分や娘にDVをしている」という身に覚えのない告発だった。すぐに釈放されたものの、同州の裁判所で娘は夫側が引き取るべきとの決定が下された。

 女性はシェルターに滞在しながら、諦めることなく現地の県人会や日本大使館などあらゆるところに連絡を取り、光を見いだしたのがハーグ条約だった。「未知の世界。不安もあったがこれに懸けるしかないと思った」。インターネットで必死で調べるなどして必要な書類をそろえた。帰国後に外務省へ援助申請して認められ、16年10月にフロリダ州連邦地裁へ娘の引き渡しを申し立て、米国弁護士や日本の代理人と共に審理に臨んだ。

 女性側は、娘は沖縄で出生し、国民健康保険や光熱費も母親が負担していたこと、結婚式のために渡米した時点では夫も帰国を認めていたことなどを主張。夫側は女性が片道の航空券しか購入しておらず米国で生活するつもりだったなどと反論したが、女性側の訴えが認められ、今年2月に連邦地裁から返還命令が出された。

 引き渡しは3月に米国で行われた。抱き上げた娘の重みに成長を実感した。離れていた時間は戻らない。その分「今はわがままも全て聞いてあげたい」と女性は笑う。上のきょうだいや親戚らの愛情も受け、娘は徐々に沖縄での暮らしに慣れてきた様子だという。

 ハーグ条約の対象は16歳未満に限られている。また、生活環境への適応などから時間がたつほど返還は難しくなる。女性は「私が経験を語ることで誰かの目に留まり、こんな手だてもあるのだと気付いてもらえれば」と思いを語った。


1年以上後の申し立て、事前同意…/返還拒否に6理由


 ハーグ条約では返還されない場合の理由も次の通り定められている。

 (1)連れ去りまたは留置(元の居住国へ戻ることを妨げられている状態)から1年以上経過した後に裁判所に申し立てがされ、かつ子どもが新たな環境に適応している場合(2)申請者が連れ去りまたは留置開始時に現実に監護(監督、保護すること)の権利を行使していなかった場合(3)申請者が事前の同意または事後の黙認をしていた場合(4)返還で子どもが心身に害悪を受けるまたは、耐え難い状況に置かれる重大な危険がある場合(5)子どもがその意見を考慮するに足る十分な年齢・成熟度に達しており、返還を拒んでいる場合(6)返還要請を受けた国での人権および基本的自由の保護に関する基本原則により返還が認められない場合―。


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<ハーグ条約とは>

 正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。16歳未満の子どもが無断で国外へ連れ出された場合、原則として子どもを元の居住国に戻すための国際協力の仕組みなどを定めている。現在96カ国が条約を締結しており、日本は2014年4月に加盟した。14年4月から16年3月までに外務省の援助を受けた事案のうち、日本から外国への返還が実現したのは10件、日本への返還が実現したのは9件だった。

琉球新報社

最終更新:5/15(月) 15:39

琉球新報