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【新社長 我かく闘う】「ふくや」川原武浩氏(45)

産経新聞 5/15(月) 7:55配信

 ■明太子味に無限の可能性

 辛子明太子の草分け「ふくや」(福岡市博多区)の5代目社長に、川原武浩氏(45)が就任した。「明太子の関連商品の開発を加速し、海外での生産にも挑戦したい」と意欲を見せる。贈答用の需要が伸び悩む中で明太子を使わずに、明太子のような風味を出す商品をつくるなど新しい風を吹き込み、業界全体の底上げを図る。 (九州総局 中村雅和)

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 明太子の業界は今、変わらなければなりません。お中元やお歳暮用の需要が減り、手詰まり感が否めないからです。

 周りの会社は、明太子を練り込んだせんべいを開発したり、外食事業に転換したり、観光客向けの工場見学ツアーを企画するなど、さまざまな戦略を実行に移しています。

 ふくやも、平成25年に粒タイプのチューブ入り明太子「ツブチューブ」を、28年には明太子の油漬け「缶明太子」を開発し、新たな市場の開拓に成功しました。

 明太子を油漬けのマグロ肉と缶詰にした「めんツナかんかん」もヒット商品になりました。今後は、ある塩乾物と組み合わせ、アイデアを形にしていきます。

 小売店向けの業務用食材の開発にも挑戦します。生産コストを圧縮しようと、今夏にも、タイの食品工場で委託生産を始めます。

 現地に、たらこと味付け用の調味液を送り、漬けます。できた明太子を「めんツナかんかん」のように粒状にして加工します。魚や油の種類を変え、試行錯誤を重ね、安価でもおいしい味になるようにする。

 海外の飲食店などに商品を卸す際に使うブランド名「鱈卵屋(たららんや)」で売り出します。

 お手ごろな価格の食材を使い、明太子そのものの味を感じさせる商品も開発します。食材の幅は無限です。

 今年度の会社経営の基本方針は「利益が出せる」「良い社員がいる」「進化する」の3つが柱です。

 売上高にはこだわりません。文化や芸術にも、安定的に支援をしたいとの思いからです。

 創業以来、社会貢献を最も大切にしており、今後も続けます。たとえ不景気になっても芸術・文化活動を助成する基金を新たに作ります。本業の明太子生産とは切り離した仕組みです。

 次の世代を見据えた組織づくりも今のうちに進めます。この先、10年ほどで次の社長にバトンタッチするつもりです。

 貸しホールやホテル業を営む「福岡サンパレス」(福岡市博多区)で平成18年から3年間、社長を務めました。その経験から、経営者として集中力が続くのは3~6年だと感じました。

 仕事が過去の自分自身の模倣になり、新鮮味がなくなるのではいけません。

 ふくやの主な顧客層は40代の消費者です。今の私と同世代で、好みの味といった感覚も近い。だからこそ今、売れる製品を考えられるのですが、10年後はどうなのか。「賞味期限切れ」とならないよう、バトンタッチした方がよいと考えます。それまでに、たらこを使わず、しかも、塩分などを気にせず、誰もが気軽に味わえるような新商品づくりを徹底して進めます。

 おそらく、同族での経営は私で最後でしょう。社内か社外かはさておき、会社を成長させる能力を身に付け、創業の理念も理解できる人材を見いだし、育てる。それが私の目標です。

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【プロフィル】かわはら・たけひろ

 昭和46年11月、福岡市生まれ。国学院大卒業後、劇場「博多座」を経て平成16年4月、ふくやに入社した。取締役統括本部長、副社長を歴任後、18年に「福岡サンパレス」に出向し、同社社長となる。21年、会長に就任。29年4月、ふくや社長となった。

最終更新:5/15(月) 7:55

産経新聞