ここから本文です

北ミサイル 韓国・文氏、「対話」はや窮地

産経新聞 5/15(月) 7:55配信

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)政権が、対北対話を目指す韓国の文在寅政権の出帆に冷や水を浴びせかねないこのタイミングで弾道ミサイルを発射したのはなぜか。米中も刺激する核実験やICBM発射ではなく、飛距離を制限した弾道ミサイル発射で、米中韓の出方を探る意図が垣間見える。

 「北との対話の可能性を開いているが、北朝鮮が判断を誤らないよう挑発には断固たる対応をすべきだ」

 文大統領は14日、NSCの会議でこう述べた。「対話は北の変化があって初めて可能だ」とも続けた。対話での解決という“本音”から「断固たる対応」に力点を置かざるを得ない苦渋ものぞかせた。

 文氏は10日の就任演説で「条件が整えば、平壌にも行く」と述べ、南北関係改善に意欲を示した。北朝鮮にとってドル箱ともいえる開城(ケソン)工業団地の再開も掲げるが、「6回目の核実験をやらなければ」との前提にも言及していた。

 ◆関係改善を訴え

 北朝鮮は文氏の当選を報じた11日、朝鮮労働党機関紙、労働新聞で「統一の同伴者として北南関係改善の新たな一ページを開くべきだ」と呼びかけた。文氏の公約をなぞるように朴槿恵(パク・クネ)前保守政権の「悪弊の清算」を主張し、文氏に暗にエールを送ってもきた。

 今回の発射について、世宗(セジョン)研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)統一戦略研究室長は「米中の圧迫もあり、核実験やICBM発射には踏み切れないが、ミサイル能力の高度化は決して放棄しないという立場を示した」と分析する。

 対話の可能性に触れた文氏の発言は、ミサイル発射だけでは「対話の扉は閉ざさない」との含みを持たせたとも読める。正恩政権にとってマイナスの反応でなかったのは確かだろう。

 ◆米中の出方見る

 同時にトランプ米政権を試す思惑もうかがえる。北朝鮮は4月以降、米国人2人を国内で相次ぎ拘束。彼らを「人質」として交渉に利用する狙いだとの見方が出ている。

 実際に8、9日にノルウェーで米朝の非公式接触が持たれ、北朝鮮側の崔善姫(チェ・ソニ)外務省米州局長は13日、経由地の北京で、トランプ政権と「条件が整えば対話する」と述べた。

 トランプ氏自身、1日に金正恩朝鮮労働党委員長と「会うのが適切なら会談するだろう」と発言。それでいて文氏就任後には、文氏の対話路線に「対話は構わないが、適切な環境に基づかなければ」とクギを刺した。

 米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備費を韓国側に求める考えを示した上、文氏との10日の初の電話会談でも、対北連携より先に米韓自由貿易協定(FTA)の再交渉問題を持ち出したと報じられ、不協和音も伝えられる。

 中国も習近平国家主席が威信を懸けた経済圏構想「一帯一路」の国際会議に北朝鮮代表を招待しており、最終的に対話を通じた解決に傾かざるを得ない。同会議や文政権の発足に合わせたミサイル発射は、圧力を強めてきた米中韓を牽制(けんせい)する上で絶好のタイミングだったともいえそうだ。(ソウル 桜井紀雄)

最終更新:5/15(月) 11:25

産経新聞