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十津川村、安全な場へ集落再編 老人ホーム拠点に復興住宅 紀伊半島豪雨、教訓

産経新聞 5/15(月) 15:08配信

 平成23年の紀伊半島豪雨で大規模な土砂崩れが相次いだ奈良県十津川村で、地形的に安全な場所に村が建設を進めた村営住宅「高森のいえ」が完成し、村民の“村内移住”が始まった。過疎と高齢化が進む村唯一の老人ホーム近くに住居や交流拠点、畑などを集約。こうした「集落再編」の取り組みについて、専門家は「災害が多発する地形を抱える自治体のモデルケースとなる。画期的な取り組みだ」などとしている。(森西勇太)

 「高森のいえ」は約5200平方メートルの敷地に単身者用3棟(計6戸)と2人世帯用1棟(計2戸)、子育て世帯用1棟(1戸)の計5棟が並ぶ。いずれも地元の木材を使った平屋だ。

 「1人暮らしだと、どんなことがあるか分からないからね」。車で約25分離れた自宅から移住した最初の入居者、松井フユノさん(91)は村で生まれ育ち、結婚。4人の子供を育て上げ、約10年前に夫を亡くし、1人暮らしを続けていた。

 糖尿病のため手足にしびれがあり、歩行には杖が必要。自宅は豪雨被害を免れたが、近くの大木が倒れて「とても怖かった」と振り返る。それでも、大好きな村を出るという選択肢はなかった。

 だが、大阪府内で暮らす子供たちは「何かあったら大変」と、古い自宅での1人暮らしに反対した。ちょうど、村が建設を進めていた「高森のいえ」は、デイサービスで利用する福祉施設「高森の郷」に隣接しており、通うのに便利だと入居を決めたという。

 「高森のいえ」の特徴の一つは、各棟が屋根付き廊下で結ばれ、ベンチも設置されていること。豪雨災害後、村に建てられた仮設住宅で、屋根のある軒下が住民の井戸端会議の場となった。これが「みんなで楽しく暮らせた」と評判だったことから、「高森のいえ」にも同様の場所が設けられた。

 各棟の間には自由に使える畑や共有スペースもあり、コミュニケーションを取りやすい構造になっている。

 1日時点で全9戸のうち、7戸は入居者が決定。敷地内にある「ふれあい交流センター」では地元業者による日用品の販売や、出張診療も行われる予定で、村の担当者は「安全に元気で永住できる拠点づくりを進めていきたい」と話す。

 「畑でキュウリやトマトを育てたい」と、松井さんは新居での今後の生活を楽しみにしている。「村の澄んだ空気が好き。この村でずっと暮らしていきたい」と話した。

最終更新:5/15(月) 15:15

産経新聞