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焦点:東芝、半導体事業売却に国際仲裁の隘路 再建さらに不透明に

ロイター 5/15(月) 23:30配信

[東京 15日 ロイター] - 東芝の経営再建がさらなる隘路に陥りつつある。同社の債務超過解消の切り札となるメモリー事業の売却に対し、合弁パートナーである米ウエスタン・デジタル(WD)が国際仲裁裁判所に差し止めを申し立てた。東芝の綱川智社長は15日の会見で、売却できない場合の代替案は検討していない、と強気の姿勢を示したが、買収側にとってのリスクが高まる懸念もあり、同事業の売却がさらに難航する可能性は否定できない。

<プランBは考えず>

東芝は15日、監査法人の了承を得ないまま17年3月期についても決算数値の開示に踏み切った。綱川社長は再三にわたる異例の決算発表を謝罪したものの、同事業に対する法的措置に踏み込んだWDに対しては、「(東芝が)合弁契約に抵触する事実はなく、ウエスタン・デジタルが売却プロセスを止める根拠はない」などと対決姿勢をあらわにした。

東芝が4月に分社化した東芝メモリは、売却額が「少なくとも2兆円」(綱川氏)とされる。その売却益は、東芝が17年3月期で5400億円と見込む債務超過から抜け出し、財務を正常化させる「頼みの綱」となっている。 もし半導体事業の売却を17年度内に完了させることができなければ、東芝は2年連続の債務超過に陥る。綱川氏は非上場化については「考えていない」との立場を崩していないが、WDの仲裁申し立てが売却の遅れにつながれば、東芝株が上場廃止となる可能性は一段と高くなる。

売却交渉が年度内に間に合わなかったり、売却を断念する場合に備える「プランB(代替案)」の必要性はないのか。記者会見でそう問われた綱川氏は、「基本的に(東芝メモリ売却による)プランAで進めていきたい」と強調した。

<仲裁、決着に数年の事例も>

日本企業が国際商事仲裁の対象となった最近の主な事例にとしては、独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携解消を求めていたスズキの要求を認めたケースや、原発機器破損事故をめぐり米電力会社が三菱重工業に約7600億円の賠償を要求、三菱重側の主張が認められた例がある。

国際仲裁に詳しい国際法律事務所ジョーンズ・デイの山田享弁護士は、仲裁裁判所による判断について「国内での裁判の確定判決と同様の効力がある」と説明。申し立てから判断が出るまでの期間については「事案にもよるが1年以上かかるものが多数ある」(山田弁護士)という。

決着するまでに、スズキとVWの件は約4年、三菱重工と米電力の件で3年半をそれぞれ要した。

<入札企業にリスクも> 綱川社長は、今月19日に設定している東芝メモリの第2次入札の締め切りについて「5月19日で進めている」と明言。2次入札では、米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に官民ファンド産業革新機構(INCJ)による日米連合が有利との見方がある。

ファンドの場合、半導体メーカーが買収する場合に比べ、独占禁止法審査が長期化するリスクがない点が今回の入札で有利に働くとみられている。

ところが、今回のWDによる提訴を仲裁裁判所が支持すれば、メモリ事業売却の応札者が優先交渉権を得たとしても、最終的に買収を実現できない事態もありうる。この点について綱川氏は会見で「入札候補者に正当性を主張し、懸念払しょくに努力する」と述べるにとどめた。一方、東芝幹部からは、「19日の入札期限はとても間に合わないだろう」との声も聞かれる。

東芝メモリの入札に参加する前出の関係者は、「常識的に考えれば、兆円の取引が(仲裁によって)全部ひっくりかえるわけではない」と楽観視する。一方、東芝の主力銀行幹部はWDの提訴について「不透明性が増している。東芝がどう対応するかだ」と懸念を示す。

<名門企業に屈辱の質問>

不確実性に歯止めを掛けられない東芝の経営状況をめぐり、記者会見では、「法的整理の検討しないのか」との質問もでた。「検討していない」と綱川氏はにべもなく答えたが、多くの財界トップを排出した名門企業に対する視線は数年前には考えられなかったほど厳しさを増している。

法的整理ではなく、「債務の株式化」が有効ではとの観測も複数の業界筋が指摘する。負担を強いられる金融機関の反発は必至だが、ある有力財界人は、「東芝の救済だが、あってもいいのではないか」と同調する。

電機業界に詳しい早稲田大学ビジネススクールの長内厚教授は、ロイターの取材で、「これだけ迷走していて、事業レベルではなく、ガバナンスの問題を強く感じる。プランBの不在もずさんだ」と、東芝の現状について厳しい見方を示した。

(浜田健太郎 取材協力 布施太郎、白木真紀)

最終更新:5/16(火) 11:25

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