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焦点:アジアのガソリン需要、電気自動車の普及で早期頭打ちも

ロイター 5/15(月) 14:04配信

[シンガポール/クアラルンプール 12日 ロイター] - アジアのガソリン需要は想定よりも早く頭打ちになるかもしれない──。中国やインドが電気自動車へと軸足を移そうとする中、石油会社や自動車会社の幹部は今後、事業環境の大きな変化への対応を迫られる可能性があるとの見方を示している。

両業界の幹部は、精製会社は最大の収益源であるガソリンで稼げなくなる将来に備える必要があると指摘。背景には中国やインドでの大きな政策転換がある。両国では大気汚染を防ぎ、石油輸入を抑制するとともに、成長分野であるグリーンカー市場の一角に食い込むことを目指している。

中国が4月に公表したロードマップでは、2025年時点の自動車販売台数を年間3500万台とし、このうち少なくとも5分の1を代替燃料車が占めるようにする目標を打ち出した。

インドの検討している計画はさらに過激なもので、政府・産業筋によると、影響力のある政府系シンクタンクは、2032年までに国内の全車両を電気化することを後押しする草案をまとめている。

ドイツの自動車大手ダイムラー<DAIGn.DE>は、電気自動車の売上高が2025年までに全体の15─20%を占めると予想。

電気自動車の割合は現在、世界の車の2%に満たないが、想定を上回るスピードで伸びれば、石油需要や精製会社に大きく影響することになる。

バーレーン国営のバーレーン石油会社(BAPCO)の取締役、ダーウード・ナシフ氏は「技術の変化スピードは速く、10─15年以内には、ガソリン市場は今日とは違ったものになっているかもしれない」と語る。

ガソリンは石油精製会社の生産の45%を占める上、利ざやが最も大きい部類に属するため、需要の減少が与える影響は計り知れない。格付け機関のムーディーズは、技術がどんどん進んでいくことから、正確に予想することは難しいが、石油需要減少の直接的な金銭面での影響が2020年までに現実化する可能性があるとしている。

国際エネルギー機関(IEA)も、こうした環境変化を計算に入れ、電気自動車の動きや石油需要に関する分析を見直す考えを示している。IEA広報担当者はロイターに対し「中国とインドの選択は明らかに乗用車向け石油需要の将来のピーク時期を大きく左右する」との見方を示した。昨年11月に公表した最新の推計でIEAは、自動車向けの石油需要が2040年まで増加を続けるとの見方を示している。

急速に変化しているのは中国とインドだけではない。アジアの主要自動車生産国である日本と韓国は既に著しい数のハイブリッド車を販売しており、低燃費性能の向上により、標準的な車種での石油消費量は減り続けている。

ただ、インドのような国が電気自動車へと舵を切るには大きな障害もいくつか立ちはだかる。バッテリーが高価なため、自動車価格が上昇してしまうほか、充電ステーションの不足などインフラ面での問題もあり、インドの自動車メーカーは必要な技術投資をためらう可能性もある。

<適応が必要>

アジア地域は、自動車販売の急激な伸びを背景に石油需要の拡大をリードしてきた。中国での毎月の自動車販売台数は200万台に上り、その石油消費量は世界最大の消費国の米国に迫ろうとしている。インドはいまや日本を抜いて世界第3の石油輸入国だ。

そうした中、世界の石油精製会社の3分の1超がアジアに集積。1990年の18%から大きく拡大していることが分かる。電気自動車や代替燃料車の増加は、精製業者に対する警鐘と言える。精製会社は原油から別の製品を生産することも可能だが、依然として売り上げをほぼガソリン消費に依存している。

石油産業も環境の変化を注視。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル<RDSa.L>は最近、「数カ国のガソリンスタンドに関し、自動車の充電設備の導入を検討している」と表明した。

ただ、石油会社の経営陣は石油需要全体がすぐに減少すると考えるのは時期尚早だとも強調。世界最大の石油輸出企業、サウジアラムコの幹部は「石油産業がなくなることはない」と強調。同社の場合は、プラスチックなどの消費が伸びている石油化学製品の生産へと主軸を移すことを想定する。一方、精製事業者も、重工業分野の石油需要は旺盛だとみている。

(Seng Li Peng記者、Florence Tan記者)

*見出しを修正しました。

最終更新:5/16(火) 13:03

ロイター