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<東芝>WDが揺さぶり 半導体売却、全面対立

毎日新聞 5/15(月) 21:49配信

 ◇半導体事業 WDが売却中止求める仲裁を申し立て

 東芝の半導体事業売却を巡り、米ウエスタン・デジタル(WD)が売却の中止を求める仲裁を国際仲裁裁判所に申し立てるという強硬手段に出た。2兆円を超える資金調達を見込む半導体事業売却は東芝再建に向けた最重要課題なだけに、東芝は新たなリスクを抱え込んだ形だ。

 「契約に抵触する事実はない」。15日の記者会見で綱川智社長は、事業売却の中止を求めるWDに真っ向から反論する姿勢を見せた。

 同日発表した東芝の2017年3月末時点の見通しでは、負債が資産を上回る債務超過の額は5400億円に上る。このままでは上場廃止となるため、18年3月末までに半導体メモリー事業を売却し、債務超過を解消することが、東芝の再建に向けた喫緊の課題になっている。

 三重県四日市市で東芝と半導体メモリーを共同生産するWDは、東芝の半導体事業売却先を決める入札に参加する一方で、「売却には拒否権を持っている」としてWD以外への事業売却に異議を唱えてきた。これに対し東芝は「妨害行為」をやめなければ、四日市の生産施設からWDの技術者らを閉め出すと通告するなど対立が激化していた。

 東芝は今年度中に半導体事業の売却手続きを完了させるために、6月中に売却先を選定する方針。しかし、WDが国際仲裁裁判所に中止を申し立てたことで、解決には数年単位の時間を要する可能性もあり、売却手続きも遅れが出るなどの影響が懸念される。

 半導体の入札にはWDのほか、韓国や台湾企業が参加。日本政府は技術の海外流出を懸念しており、政府系ファンドの産業革新機構は米投資ファンドと組んで入札に参加する方針で、有力候補として浮上している。その中でWDの入札額は1.6兆円規模と東芝の希望を下回るなど苦戦。今回の仲裁申し立てについて、東芝内には「金額勝負では勝てないために揺さぶりをかけてきた」との見方が出ている。企業同士の仲裁に詳しい牛島信弁護士は「本気で売却を止めようとするなら、時間のかかる国際仲裁裁判所よりも、日本の裁判所に仮処分を申請する方が早い」と指摘する。

 一方、東芝は「候補者に東芝の主張の正当性を説明し、懸念を払拭(ふっしょく)するよう努力する」(綱川社長)として、今後も予定通り入札手続きを進める方針だ。「WDとの関係はもはや修復不可能なほど悪化」(東芝関係者)しており、東芝が売却先にWDを選ぶ可能性はなお低いことに変わりはない。

 ただ、今回のWDの申し立てによって、今後の売却手続きについて不透明感が高まったのは事実だ。東芝がWD以外への売却を急げば、WDは売却差し止めを求める仮処分を裁判所に申請するなど更なる対抗措置に出る可能性もあり、予断を許さない状況が続きそうだ。【安藤大介、小原擁】

最終更新:5/16(火) 0:06

毎日新聞