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宇宙を目指せ 「なつのロケット団」の挑戦続く 北海道大樹町のIST

十勝毎日新聞 電子版 5/15(月) 12:32配信

 2013年3月29日早朝。大樹町多目的航空公園内の特設発射場から、あるグループの夢を載せた小型ロケット「ひなまつり」が打ち上がるはずだった。しかし、ロケットは発射台にとどまったまま、爆発、炎上した。

 打ち上げたのはロケット開発会社インターステラテクノロジズ(IST、大樹町)。創業者である実業家の堀江貴文(44)が27日に仮釈放され、公に姿を見せるとあって、マスコミも大挙した中で惨事は起こった。

 「『ひなまつり』が『火祭り』になってしまった」。同社の前身に当たる民間ロケット開発集団「なつのロケット団」メンバーで、メディアアーティストの八谷和彦(51)=東京=は苦笑しながら懐かしむ。

 「なつの-」は、無類の宇宙好き、ロケット好きたちの奇妙な“縁”から誕生した。

 1980~90年代は米国スペースシャトルの相次ぐ打ち上げなどで、宇宙への盛り上がりが加速していた。宇宙ジャーナリストの松浦晋也(55)=神奈川県=は、94年2月にH-2ロケットの初めての打ち上げを見ようと、休暇を取り種子島宇宙センター(鹿児島)に向かった。そこで、科学雑誌で連載を持ち、既に親交があった漫画家のあさりよしとお(54)=東京=とSF作家の笹本祐一(54)=札幌=に出会った。

 意気投合した3人には共通の「夢」があった。「有人宇宙船に乗りたい」。先進地米国では民間による宇宙ビジネスが盛んだったが、日本では投資額が膨大で民間では無理と言われていた。「自分たちで開発するしかない」。後に「風の谷のナウシカ」に登場する小型飛行機「メーヴェ」製作に挑んでいた八谷、宇宙エンジニアの野田篤司(千葉県)らも加わった。宇宙好きで結ばれた10人ほどの男性たちで、小説「夏のロケット」にちなんだ「なつのロケット団」が誕生した。

 「価格を抑えた小型ロケットを作ろう」。目指す方向性は決まったが、まずは資金確保が必要。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を作ったガイナックス社と付き合いのあった笹本が、同社でスポンサー探しの話を出すと「堀江さんを紹介しようか?」。

 当時、プロ野球球団買収騒動などで、世間の話題を呼んでいた堀江。メンバーで合意後、堀江に持ち掛けてみた。先入観抜きで会うと、堀江の宇宙技術に関する知識と熱意に圧倒された。2006年に「ライブドア事件」で堀江の逮捕勾留もあったが、連絡を取り、士気を保ち続けた。

 初期の開発の舞台はあさりの自宅兼仕事場のアパートだった。エンジン性能確認で必要な水流し試験はユニットバスで行い、水浸しになった。3リットル用の計量カップ、窒素ガスボンベやガス圧調整装置…。広く市販されていない材料も多くインターネットで調達した。それぞれ仕事を持つメンバーが集まれるのは1カ月に1回程度。「合宿」と称した集まりには、堀江も姿を見せた。(原山知寿子、敬称略)

燃焼実験後の記念写真。実験を繰り返した推力30キロ級エンジンは、この日の3回目の実験で爆発した(2009年6月21日、笹本氏提供)

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 インターステラテクノロジズ(稲川貴大社長)が、十勝・大樹町から、国内では民間初となる高度100キロの宇宙空間到達を目指すロケットを打ち上げる時が迫ってきた。これまでの歩みや今回の挑戦の意味、展望などを追った。

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 十勝毎日新聞社は「大樹航空宇宙基地構想」(http://kachimai.jp/taiki-spaceport/index.php)で今回の連載などを特集している。

十勝毎日新聞

最終更新:5/15(月) 12:32

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