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10月GPIF新体制 経営委員の人選は難航か?

ニュースソクラ 5/15(月) 16:00配信

有識者部会が任命基準を策定中

 約145兆円の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が10月、新組織に生まれ変わる。これまでは理事長1人が基本ポートフォリオなどの重要事項を意思決定する独立行政法人だったが、これを改め複数の委員からなる経営委員会による合議制で意思決定するガバナンス体制に移行する。

 2016年の法改正を受けたGPIFの組織改革に伴う措置だ。「消えた年金」で解体になった社会保険庁を衣替えした日本年金機構などのような特別法に基づく新法人ではない。いわば、政府は独立行政法人の枠組みの中で、例外を設けたわけだ。厚生労働省は4月、有識者からなる部会を新設、5月以降議論を本格化させる方針だ。

 厚労省は4月21日、社会保障審議会の資金運用部会(座長・神野直彦日本社会事業大学長・東大名誉教授)をひっそり立ち上げ、今後のスケジュール案を確認した。5月までに新制GPIFの役員の任命基準を決めた後、10月の改正法施行までに必要な事項を審議するという。 

 法改正では厚労相がGPIFの中期目標の策定やGPIFの中期計画の認可などをする際に、社保審に諮問しなければならないようになった。厚労相が諮問に基づき、認可などの適否を判断する格好だ。

 現在のGPIFは、理事長の諮問に基づき、有識者7人(法令上の定員は11人)からなる運用委員会を定期的に開催し、重要事項を審議し、意見を述べることができる。また、必要と認める事項について理事長に建議することができる。運用委員会があるとはいえ、GPIFも独立行政法人であるため、結局のところ理事長1人に決定権限が集中していた。

 4月21日の初会合では、新しく権限が生まれるGPIF役員(経営委員・監査委員など)の任命基準として「単に資産運用の専門家というだけでなく、経営判断する能力も必要」や、「細かく規定すると成り手が見つからなくなる」などの意見が上がった。

 これに対して、厚労省事務局は任命基準について「運用に偏ってもいけないし、マクロ経済の専門家や経営管理に関する専門家も必要だ。それらを踏まえて基準を記載する必要がある」などと回答した。ガバナンスを効かせるため、経営者やそのOBの選任をもくろんでいるとみられる。

 厚労省事務局は5月12日の第2回目の会合で、任命基準案を示す方針。部会での議論を受け決まる基準に基づき厚労相が人選を進めるが、候補者が固辞する可能性もある。すでに打診した財界人に事実上断られているもようだ。6月中には人事は固まる見込みだが、任命までには紆余曲折も予想される。

 GPIFの基本ポートフォリオなどを決める経営委員会(経営委員9人と理事長の合計10人で構成)の委員は「経済、金融、資産運用など、GPIFの業務に関する学識経験者か実務経験者から任命する」と明記されている。

 さらに「社保審の議論を踏まえて作成する任命基準」に基づいて厚労相が任命する。具体的には、経済、金融、資産運用の専門家のほか、GPIFの運用委員会委員などを歴任した大学教授などが候補になる見込みだ。

 実は、10月の新制GPIF発足の後が大変だ。部会は今後、厚労相の示す中期目標の策定や見直し、中期目標に基づきGPIFが決める中期計画(基本ポートフォリオを含む)に盛り込むべき内容の審議やその認可などの重要事項に対して適切かどうか社保審に諮問する。

 このほか、独立行政法人としての毎年定例のGPIFの実績評価の役割を担う。14年に株式比率を倍増させた運用改革をどのように見直すかどうかが焦点になりうる。

 もともと、GPIFの組織改革は運用改革を正当化するため、塩崎恭久厚労相が強く実現を求めていた。しかし、軽微な改革にとどめるべきと考えていた厚労省事務局のトップだった当時の香取照幸年金局長(現在のアゼルバイジャン大使)と意見が対立した経緯がある。

 香取局長は官邸の菅義偉官房長官の了承を基に、塩崎厚労相の求める抜本的な組織改革をいったん阻止していた。当時は運用改革を軌道に乗せるため、組織改革が後回しにされた経緯がある。

 その後、香取氏が年金局長を退任し、塩崎氏が組織改革の議論を再開し、法案化された。厚労省事務局が原案を示し、淡々と進む。厚労省が責任を回避するため、有識者からなる部会で議論した格好にする。いつもと同じことが繰り返されていると感じるのは筆者だけであろうか。

社会保障審議会資金運用部会委員名簿

氏 名 所 属 ・ 役 職

井 上 隆 一般社団法人日本経済団体連合会常務理事

植 田 和 男 共立女子大学教授・東京大学金融教育研究センター長

臼 杵 政 治 名古屋市立大学大学院経済学研究科教授

大 野 早 苗 武蔵大学経済学部教授

河 村 小百合 株式会社日本総合研究所調査部上席主任研究員

神 作 裕 之 東京大学大学院法学政治学研究科教授

神 野 直 彦 日本社会事業大学学長・東京大学名誉教授

徳 島 勝 幸 株式会社ニッセイ基礎研究所年金研究部長

杤 原 克 彦 日本商工会議所理事

永 井 幸 子 UAゼンセン常任中央執行委員

原 佳奈子 株式会社TIMコンサルティング取締役

平 川 則 男 日本労働組合総連合会総合政策局長

安 浪 重 樹 安浪公認会計士事務所代表者

四 塚 利 樹 早稲田大学大学院経営管理研究科教授

(2017年4月1日現在、五十音順、敬称略)

今後の審議スケジュール(案)

4~5月

GPIFの役員の任命基準

5~6月 GPIF改革の施行(10月1日)に伴って必要と なる事項の検討

7~8月

GPIFの実績評価

9~10月

(GPIF改革の施行に伴う)中期目標、中期計画 の変更等

【10月1日 GPIF改革施行】

■谷川 年次(経済ジャーナリスト)
大手新聞記者などを経てフリーに。記者歴は約20年のベテラン。
企業不正や調査に関心。国会、金融庁、厚労省、年金、金融、資産運用などに詳しい。

最終更新:5/15(月) 16:00

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