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錦織良成監督、『たたら侍』は「先入観をひっくり返す作品になった」

ぴあ映画生活 5/15(月) 14:00配信

「EXILEのイメージと正反対の映画を作ってほしい」――。5月20日(土)より公開される映画『たたら侍』のエグゼクティブ・プロデューサーを務めるEXILE HIROは、錦織良成監督にそう注文したという。錦織監督が前作『渾身 KON-SHIN』でもタッグを組んでいた青柳翔(劇団EXILE)の主演は既に決まっていたが、こうも付け加えたという。「無理にEXILE TRIBEの人間を起用しなくてもいいですから」。

『たたら侍』画像

『渾身 KON-SHIN』で島根県の隠岐の島の古典相撲を描いた錦織監督が、同じ島根県の奥出雲に伝えられてきた製鉄法“たたら吹き”に着目。信長が覇権を握ろうとする戦国の末期、たたら吹きを受け継ぐ村の一家の跡取りとして生まれた青年・伍介が、宿命に翻弄されながら生きる姿を通して、本当の強さとは何かを問いかける。

前作『渾身 KON-SHIN』は現代劇だったが、モントリオール世界映画祭に出品した際、映画祭の創始者が主演の青柳について「まるで三船敏郎だ! 黒澤映画の匂いがする」と評するのを耳にした。錦織監督は「青柳ならば時代劇が撮れるんじゃないか?」との思いを帰国後、HIROにぶつけた。題材となった、たたら吹きは、監督自身がその製法の現場に招かれて見学して以来、ずっと心の中に残っていたという。

「日本刀を作る上で欠かせない玉鋼(たまはがね)を生み出すたたら吹きですが、約70年前の敗戦時に、GHQによって中止させられているんです。つまり、日本刀は武器というよりも日本人の精神的な支えであり、それを作るための鉄の供給を止めさせればよいと。日本刀は武器ではない――そこで新しいメッセージを紡げるんじゃないかって思ったんです」。

そう、映画ではたたら吹きという伝統技能の継承というテーマに加え、もうひとつ、武士という存在の本質が描かれているのだが、それこそがこの映画を、従来の剣豪たちが斬って斬って斬りまくる時代劇とは異なる時代劇にしている。村を見守る武士・尼子真之介(AKIRA)は、武力による強さで村を守ろうとする伍介に対し、刀を抜かずに解決することが真の強さであると説く。

「いろんな方の話を聞く中で、行き当たったのは“侍=ソルジャー”というのは“先入観”だったということ。刀を抜くっていうのは死を覚悟すること。だからめったに刀は抜かない。侍とか、日本刀というものが、好戦的な“武”の象徴ではなく、むしろ侍であるがゆえに戦わないというのは、いま、日本人がさりげなく空気に流されている時代に、必要なことなんじゃないか? こんなに最先端なメッセージはないんじゃないかって思ったんです」。

「リアルをやろう」というのが、プロデューサーのHIROが発したコンセプト。その言葉どおり、CGをほとんど使わず、殺陣の動きも“見せるため”の動きを排除し、人間が本当に斬り合ったときのリアリティを追求。さらに、奥出雲の山の上にオープンセットで村をまるごとひとつ、建設した。“村をまるごと建設”というのは、随分スケールがデカい大ニュースである。

「CGの映像やワイヤーアクションって、派手で面白いけど、皆がやっていること。そうじゃなくて本当に人間が作ったもの、人間ができる動きで感動させたい。CGもワイヤーアクションもない時代の黒澤映画をいまの小学生に見せたら、きちんと感動します。それを『いまの若者は…』って大人の幻想と先入観で言うのは失礼だと思う」。

最終的に青柳に加え、AKIRA(EXILE)、小林直己(EXILE、三代目J Soul Brothers)、石井杏奈という計4人がEXILE TRIBEから起用されたが、これは錦織監督たっての願いで決まったもの。

「中身を見ないで『どうせEXILEの映画でしょ?』『クールジャパン万歳!って映画でしょ?』って思っている人は多いと思います。AKIRAさんたちを起用したいって言ったら、最初は皆、『そんなに出したらEXILE映画になっちゃうんじゃない?』って言っていたくらいですし(笑)。でも、お世辞じゃなく、彼らのライブを見て、才能を感じたんです。身体性はもちろん、表現力、存在感という意味でも。訓練は必要だけど、一緒に仕事をしたい、彼らとなら“リアル”を作れるって感じました」。

強さ、武士、伝統、時代劇、そしてEXILE TRIBE……。「そうしたもの全ての先入観をひっくり返して、楽しんでいただける作品になっていると思います」と錦織監督は言葉に力を込めた。

取材・文・撮影:黒豆直樹

最終更新:5/15(月) 14:00

ぴあ映画生活