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FIA F2開幕戦の躓きを払拭した松下「アグレッシブに行こうと決めていた」

5/15(月) 12:14配信

オートスポーツweb

 今年の松下信治は違う。FIA F2第2戦のバルセロナは、周囲にそう印象づけるに充分な3日間だった。

FIA F2第2戦バルセロナ レース2で優勝した松下信治がガッツポーズ

 予選は10番手と低迷してしまったが、最終アタックの最中に目の前で1台のマシンがスピンしダブルイエローの影響を受けてしまったためだった。しかし、そこで終わらないのが今年の松下の強さだった。 



 土曜午後のレース1では、ハードタイヤを選ぶ周囲のドライバーの逆を取ってソフトタイヤでスタート。そして気持ちで負けることなく、アグレッシブなレースを肝に銘じて攻めていった。

「タイヤ戦略はグリッドについたときに周りを見て決めることにしていて、スタート発進はいつものように良かったし、ターン1も1周目の争いもアグレッシブにできたし、それ以降もアグレッシブで良いレースができたと思います」とレース後に松下は語った。

 そんな松下に運も味方した。7周目にピットインしてハードに交換しタイヤ義務を消化すると、その直後にコース上に止まったマシン撤去のためセーフティカーが導入され、ハードタイヤでスタートしてまだピットインしていない上位との差が縮まる。実質的にほとんどタイムロスなくピットストップを済ますことができたのだ。

 13位でレース再開、そこからはDRSも使いながら積極的に前走車たちをオーバーテイクしていく。去年はバトルを躊躇するような場面も度々あったが、松下はアグレッシブながらも落ち着き払って1台、また1台とターン1で追い抜いていった。

 そうやって松下が8位まで浮上した頃、ハードタイヤでスタートした上位勢がいよいよピットインのタイミングを迎えた。ソフトスタートのシャルル・ルクレールが首位、同じくルカ・ギオットが2位、その後ろに松下という展開になったが、彼らに仕掛けるチャンスは巡ってこなかった。一方で、ソフトタイヤに交換したドライバーたちが1周2秒も速いペースで追い上げてきた。


「タイヤ交換してから10周くらいは、(ギオットより)僕の方が速いなと感じながら走っていました。抜こう、抜こうと思いながら走っていたんですけど、10周くらいして彼がプッシュし始めたら僕はついていくことができなくて。1秒ちょっとの差で走っていたんで、ちょっと近すぎたのかもしれません。最後は後ろから来た(オリバー・)ローランドが新しいオプションタイヤを履いていたんで、あれを抑えるのは無理でしたね」

 あと一歩のところで表彰台を逃したのは悔しかったが、それは戦略上いかんともし難いこと。そもそもセーフティカーがなければ「6位くらいにしかいけなかったしラッキーだった」と冷静に周りを見渡せる余裕もあった。

 レース1では上位勢に較べてタイヤのデグラデーションが大きかったこともあり、松下はARTのエンジニアとともに夜遅くまでデータを分析してセットアップと走り方の変更点を見付ける努力も惜しまなかった。



 日曜午前のレース2では、5番グリッドからのスタート。

 ここでも松下は好スタートを見せて一気に3位に浮上し、ターン1へと飛び込んでいった。

「スタートは自信があったしできるだけオーバーテイクしてやろうと思っていたんですけど、ちょっとホイールスピンしてしまったんで自分的には失敗だったんです。本当だったらもう1台抜けていたと思います。でも周りと較べれば良いスタートでしたね」

 首位はニコラス・ラティフィ、2位はグスタフ・マリヤ、そして3位に松下。1セットのハードタイヤで26周を戦う長丁場だけに、まずはタイヤを労るためにペースを抑え、10周を過ぎたあたりから攻撃を開始した。

「昨日のレースはリアのデグラデーションがひどかったんで、そこからは前とのギャップを少し開けてタイヤを労ることを考えながら走っていました。前のマリヤがあまり速くないのが分かったんで、早めに抜こうと思って仕掛けました」

 14周目のターン1でタイヤをロックさせたマリヤを抜いた松下だったが、首位ラティフィのペースはほぼ同等で差はなかなか縮まっていかない。しかし、諦めることなくアグレッシブなレースをする松下にまたしても幸運が舞い込んできた。22周目のターン5でラティフィがブレーキングをミスし、コースオフしたのだ。

「トップのニコラス(・ラティフィ)が結構速くて僕と同じか少し速いくらいだったんで、(追い付いて抜くのは)ちょっと厳しいなと思っていました。でもずっと同じくらいのペースで走っていたら彼が最後にミスをしてくれたんでラッキーでしたね。昨日の夜にかなりタイヤのデータを分析したのが効いたし、僕のドライビングもセットアップも昨日より良かった。それは自信になりました」

 昨年のモナコのレース2以来、約1年ぶりの勝利。前日のGP3福住仁嶺に続いてバルセロナに『君が代』が鳴り響いた。


「本当に長かったですね。でも昨日も今日も1周目の攻め方とかアグレッシブな走りを見せられたと思いますし、どんなシチュエーションでもポジションを上げていけるというのは見せられましたから、そこは自信を持っていけています」

 松下はこの週末、何度も「今年は違う」と口にした。気持ちで負けてしまった去年の教訓を生かし、攻めの姿勢を強く意識している。

「この世界は躊躇なんかしていたらあっという間に終わっちゃいますから、1年が。だからアグレッシブに行こうっていうのは自分で決めいていたし、それが成功すればまた自信にもなるし、その積み重ねでどんどん良い流れができてくるんです。速いヤツってそういう力があると思いますからね」


 これでランキング5位に浮上した松下だが、首位独走のルクレールとはまだ42点の差がある。それでも、開幕ラウンドの躓きを払拭し追撃態勢に入ったと言えそうだ。

「今回は4位と1位でポイント的にも良かったし、今はまだポイント差も離れていますけど、レース1も2もこういうレースを続けていければ、追い付いていけると思います。一番苦手なバルセロナでこれだけのレースができたし、これからモナコ、バクー、オーストリアと得意なサーキットでどんどん表彰台を獲っていきたいと思っています」

 アグレッシブに生まれ変わった松下の3年目のシーズンが楽しみになってきた。



[オートスポーツweb ]