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「HCIを前年比3倍の規模に――」、レノボが推進する2017年度の重点戦略

Impress Watch 5/16(火) 6:00配信

 レノボ・ジャパンは、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズが展開しているデータセンターソリューション事業において、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)を2017年度の重点製品に位置づけ、前年比3倍の事業規模にまで拡大する方針を明らかにした。

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 レノボ・ジャパン データセンターグループ データセンターソリューション事業本部副事業本部長兼製品統括本部統括本部長の橘一徳氏は、「HCIにおいて、国内ナンバーワンシェアを獲得したい」と意気込む。

 これまでのエンタープライズ向けの導入提案に加えて、中堅・中小企業を対象にした取り組みを加速することで、HCIによる2極化戦略を展開。さらに、NECパーソナルコンピュータの米沢事業場に設置している「米沢ファクトリー・インテグレーション・センター」での取り組みなどを通じ、品質面での強みを訴求する。

 「HCIは信頼性で選ぶ時代に入ってきた。これはレノボにとって追い風になる」と語る。また、SDS(Software Defined Storage)製品のラインアップを強化し、この分野でも存在感を高める考えだ。レノボの2017年度のデータセンターソリューション事業の取り組みを追った。

■レノボの新たな事業戦略

 レノボでは、2016年に、エンタープライズ事業を担当する事業部門を、従来の「エンタープライズビジネスグループ」の名称から、「データセンターグループ(DCG)」へと変更。データセンターの変化をとらえ、データセンターインフラを中核にした組織体制の構築と、新たな事業戦略を打ち出してきた。

 こうした1年の取り組みをもとに、2017年4月1日からスタートした2017年度においては、PCおよびクライアントを中心としたビジネスと、データセンターグループのビジネスを明確に分離。より専門性を高めた形で事業を推進することになる。

 日本においては、以前からのレノボ・エンタープライズ・ソリューションズがデータセンターソリューション事業を担当することになるが、これまで以上に、組織の分業体制を明確化することになる。

 レノボ・ジャパンの橘氏は、「パブリッククラウドの登場により、ITインフラの構築、展開手法が変化。その一方で、プライベートクラウドの重要性と、パブリッククラウドに対するコスト効率の高さが再認識されており、ハイブリッドクラウドに対する関心が高まっている。また、同時にHCIに対する注目度が高まり、導入が加速されている。従来型のレガシーITは、企業情報システムのワークロードの半分を占めていたが、2020年にはこれが20%にまで減少すると見られている」と市場環境の変化を指摘。

 「だが、これまでのレノボの事業領域は、レガシーITを支えるサーバーやストレージなどのハードウェア、あるいはそれらのハードウェアに加えて、OSや仮想化ソフトを提供することにとどまっていた。顧客は、自社にとってどんなサービスが必要であるかという点からITの導入検討を開始し、SDI(Software Defined Infrastructure)ミドルウェア、アプリケーションソフトウェア、クラウドサービスといった領域が重視される。ハードウェアなどの検討は最後になり、優先度も低い。もはや、ハードウェアだけでビジネスを展開していては厳しい時代に入ってきた。レノボは、特徴づけをしたソリューションサービスを提供できるベンダーへと軸足を移す必要があり、そこに向けた変革に取り組んでいる」と説明する。

■立て続けにISV/IHVとの協業を推進

 Lenovoは2015年8月にVMwareとの協業を発表し、VMwareが提唱するSDDC(Software- Defined Data Center)に対応したリファレンスアーキテクチャを用意。また2016年1月には、Nutanixとの協業によりHCI市場に参入。2016年3月には、Juniper Networksとの提携により、HCI事業を加速する体制を構築した。さらに2016年11月に、CloudianおよびNexenta Systemsとの協業により、SDS市場に参入してきた。

 「ハードウェア中心のビジネスから脱却する方向に向けて、有力ISVおよびIHVとの協業を推進。これにより、ソリューションを提供する体制を強化してきた」(レノボ・ジャパンの橘氏)というわけだ。

 2017年4月には、SDSにおいて、新たにDataCoreのソフトウェアを搭載した製品を投入。さらに2017年度第2四半期(7~9月)には、vSphere、vSAN、NSXをひとつのスタックにネイティブに統合したVMware Cloud Foundationへの対応や、Microsoft Azureに対応したAzure Stack製品として、新ブランドのHCIとなる「ThinkAgile」を国内投入する計画も明らかにしている。

 そのほか、CTCなどとの連携により、SAPへの対応を図ったSystem X Solution for SAP HANAを提供。SAP HANA Voraの活用に向けたリファレンスアーキテクチャとして展開するほか、Lenovo NeXtScale Systemをベースに、次世代のインテル Xeon PhiプロセッサやNVIDIAのTeslaを搭載したHPC製品を、2017年度後半に投入する予定を明らかにするなど、ソリューション型製品の品ぞろえを強化する姿勢をみせている。2017年5月にはセキュリティソリューションとして、無害化ソフトのOPSWATの提供も開始する。

 レノボ・ジャパンの橘氏は、「2017年度は、エンタープライズ向けHCI、中堅・中小企業向けHCI、ラインアップを拡充したSDSに加えて、SAPおよびHPC/AIを含めた『3+2』を、重点ソリューションに位置づける。中でも、HCIが最注力領域になる」と、2017年度の事業方針の基本姿勢を示す。

 IDC Japanの予測によると、国内のHCI市場は、2020年までに年平均成長率は48.8%増で推移。2020年の市場規模は290億円と、2015年度実績の7倍以上に拡大すると見られている。

 「今後5年間で最大の成長が見込めるハードウェアがHCI。仮想サーバーのすべてが置き換えの対象となるばかりでなく、レノボが最も差別化を図れる領域がHCIとなる。レノボのHCIであるLenovo Converged HXシリーズは、オンプレミス環境とクラウド環境をあわせた利用が可能なハイブリッドクラウド環境を提供できるほか、シンプルなハードウェア構成と運用管理機能の搭載により、ユーザー企業の運用負荷を軽減することができるといった特徴を持つ。さらに、スモールスタートが可能な拡張性を持ったインフラとして提供できることから、顧客の投資を最適化できる」と語る。

 2016年度下期には、約200台のHXシリーズを出荷したが、その内訳を見ると、金融機関をはじめ、製造、情報通信、メディアなど、幅広い業界で活用されているという。

 「仮想化基盤としての導入は全体の74%を占めており、スモールスタートでの案件も多い。また、19%を占めているVDI基盤としての導入では、大規模案件も獲得するといった実績も出ている。2017年度は、スモールスタートした案件の拡張提案に加えて、TIS、CTC、日商エレクトロニクス、丸紅情報システムズ、ユニアデックスといったパートナーとの連携によって、HXシリーズの販売にさらに弾みをつけたい」とする。

■エンタープライズと中堅・中小向けの2極化戦略

 2017年度の最注力領域とするHCIにおいては、2極化戦略を打ち出す考えだ。

 ひとつは、これまで中軸に据えていたエンタープライズ分野への継続的な展開だ。

 ここでは、エンタープライズクラウド領域への提案を加速。「System Xを活用することで、既存のプライベートクラウドの提案と比べても、CAPEXおよびOPEXを大幅に削減できる強みがある。NutanixのAcropolis Hypervisorの進化と、エンタープライズ機能の強化により、ハイブリッドクラウドサービスの提案を加速できるほか、ファイルブロックストレージやオブジェクトストレージとしての機能、オーケストレーション機能も提供できるようになり、エンタープライズクラウドを実現するための機能拡張を図っている」という。

 また、「NVIDIAのGPUとの組み合わせにより、設計、製造現場で使用するアプリケーションの活用に最適化した性能を発揮できるといった提案や、VDIにおいてもグラフィック機能が求められる環境が増加する中で、それに対応した提案ができる点も訴求したい」と語る。

 2極化戦略のもうひとつの切り口が、中堅・中小企業向けの展開だ。これは、2017年度から本格的にスタートするものになる。

 「中堅・中小企業においては、サーバー運用の軽減が急務となっており、その点でも、HCIは、中堅・中小企業に適したハードウェアだといえる」と、レノボ・ジャパンの橘氏は語る。

 レノボでは、2016年11月から、NutanixのXpress対応モデルとして、Lenovo Converged HX2000シリーズを国内出荷している。ラインアップは、1Uモデルと、上位となる2U4ノードモデルの2機種だが、このラインアップを国内でそろえているのはレノボだけだ。特に、戦略的製品として位置づけているのが、1Uモデルである。

 「現時点で、Xpressモデルをラインアップしているのは、Nutanixとレノボだけであり、しかも1Uモデルはレノボだけが市場投入している。また、2Uモデルでは200V対応だが、1Uモデルは100V対応となっており、中堅・中小企業のオフィスへの導入のしやすさや、価格性能比の高さは他社にはない差別化点になる。Xpressモデルは拡張性には制限があるが、中堅・中小企業であれば十分に利用できる性能や拡張性を備えており、そこにSystem Xの信頼性やコスト競争力も活用できる」と、特徴を説明。

 「リコージャパンや大塚商会、IBM特約店との連携によって全国をカバーする体制が整っており、全国の中堅・中小企業に対する提案を加速したい」とする。HX2000シリーズのためのプロフェッショナルサービスも用意。パートナーとの連携では、オンサイトサポートをオプションで提供することも含まれており、中堅・中小企業における導入後の運用も支援する考えだ。

■2極化戦略を下支えする信頼性

 そして、これらの2極化戦略を下支えするのが、レノボ・ジャパンの橘氏が、「他社との最大の差別化ポイント」と強調する「信頼性」だという。

 「Nutanixアーキテクチャによる高いデータ保全性や、x86サーバーで最も高い評価を得ているSystem Xのハードウェアとしての信頼性、米沢ファクトリー・インテグレーション・センターを活用した高品質のキッティングサービス、IBMの保守サービス網を活用した安心のサービス体制や、障害時の自動通報システムによる迅速な対応などによって、高い信頼性を実現している。HCIは信頼性で選ぶ時代へと入ってきた。その時代においては、レノボの強みがますます発揮できるようになる」と胸を張る。

 特に、同社の強みと位置づけるのが、米沢ファクトリー・インテグレーション・センターで行っているキッティングサービスだ。

 山形県米沢市のNECパーソナルコンピュータ 米沢事業場の中に設置されている米沢ファクトリー・インテグレーション・センターでは、中国・深センで生産されたSystem Xを開梱し、デリバリー前の検品のほか、CPU換装、ハードディスクの組み換え、メモリ増設、Nutanixやアプリケーションなどのソフトウェアプリロードといったカスタマイズサービスを行い、要望にあわせてラッキングも行って出荷している。

 「米沢ファクトリー・インテグレーション・センターは、2016年10月から本格的に稼働し、これまでに約200台のLenovo Converged HXシリーズを出荷したが、現時点で着荷不良はゼロ。日本のユーザーに安心して利用してもらえる高品質でのキッティングサービスを提供できる」とする。

 さらに、レノボ・ジャパンの橘氏は、今後、中堅・中小企業向けの販売を強化するのに伴って、米沢ファクトリー・インテグレーション・センターの体制を拡張する考えを示す。

 「2017年度第4四半期までに、月100台の体制にまで拡張し、2018年度には、Lenovo Converged HXシリーズで、現在の3倍規模となる年間1200台以上の出荷を目指す」と意気込む。また、「さらに、これまで2~3週間かかっていた納期も、今年度中には7~8営業日で納入できる体制を目指す」という。

 これにより、「国内HCI市場において、販売台数シェアナンバーワンを獲得したい」と、成長市場におけるリーディングカンパニーを目指す考えだ。

■国内でもラインアップを継続強化

 一方で、SDSにおけるラインアップ強化にも余念がない。

 レノボでは2016年11月から、Cloudianによるオブジェクトストレージ「Lenovo Storage DX8200C」と、Nexenta Systemsによるユニファイドストレージ「Lenovo Storage DX8200N」を国内で出荷しているが、2017年4月から、新たにDataCore Softwareと協業し、同社製品を搭載したSDSアプライアンス製品「Lenovo Storage DX8200D」の出荷を開始。3つの製品群によって、市場での存在感を高める考えだ。

 レノボ・ジャパンの橘氏は、「DX8200Dは、ストレージ統合やブロックストレージの仮想化に最適なSDSであり、最新技術の採用による性能の最大化を図る一方、汎用ハードウェアであるSystem Xのx3650をベースにアプライアンス化しているため、価格性能比を向上させることができる。ビッグデータやAI、クラウド連携に最適化したCLOUDIANや、ファイルサーバーやOpenStackストレージとしての特徴を発揮できるNexenta Systems製品が、大規模なストレージ環境を活用するユーザーを対象としたものであったのに対して、DataCore Software製品は、より幅広いユーザーに提案できるものになる。SDSの販売に弾みをつけることができる」と期待を寄せる。

 データコアのSDSソフトウェアであるSANSymphonyが持つ特長を生かすことで、高速キャッシュ環境の実現、他社ストレージを対象にできる自動階層化機能のほか、パラレルI/Oやランダムライトアクセラレータなどの機能により、I/O性能を向上。データセンターのパフォーマンスを約10倍にまで高めることができるという。

 「SQL ServerやExchangeをはじめとする高性能を求めるデータベースやアプリケーションの利用にも最適化しているほか、異機種間ストレージ間での自動階層化により、既存ストレージや外部ストレージを有効活用できることから、既存資産が足かせになり、不自由な投資や選択を強いられているユーザーへの解決策を提案できる」としている。

 なお、データコアのソフトウェアは、Lenovo Togetherパートナーとの協業による稼働検証済みソリューション「太鼓判」において、昨年秋から国内展開してきた経緯があり、パートナー各社を通じた販売実績もある。

 「日本では、太鼓判シリーズでの実績があるため、データコアの技術などに関しては、エンジニアが精通し、販売しやすい環境が整っている。HPEの3PARなどと戦える製品がそろうことになる」と語る。

 ちなみに、DX8200シリーズは、HCI同様に、米沢ファクトリー・インテグレーション・センターで、検証およびキッティングを行ってから出荷されることになり、高品質を実現できる点も差別化になるとしている。

 2017年度のレノボのデータセンターソリューション事業は、HCI、SDSの領域における積極的な製品投入により、これまでとは戦い方が大きく変化してくることになりそうだ。
 果たして、2017年度のレノボの事業成長はどうなるのか。まずは、今年1年の取り組みが注目されよう。

クラウド Watch,大河原 克行

最終更新:5/17(水) 0:37

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