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【韓国】「北問題で主導権を」、半島情勢の米専門家

5/16(火) 11:30配信

NNA

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)新大統領は、金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)の両政権で南北首脳会談の実務を担当した徐薫(ソ・フン)氏を情報機関のトップに指名し、北朝鮮との対話路線を明確に打ち出した。政策アナリストとして米ワシントンで20年以上活動する朝鮮半島情勢の専門家、スティーブン・コステロ氏は北朝鮮問題について「米中に任せきりにするのはなく、韓国が主導権を握るべきだ」と文政権にエールを送る。コステロ氏は金大中氏との関係が深く、米国に設立した金大中平和財団では副理事長を務めたこともある人物だ。
 ――文在寅政権が誕生した。
 韓国国民に心からおめでとうと言いたい。民心を反映した文大統領は、歴代のどの大統領よりも正当性がある。逆に米国はトランプ大統領のために政治が混乱しており、米国人に大統領の弾劾の仕方を教えてあげてほしいくらいだ。
 ――アジア情勢も変化すると思うか。
 ワシントンでは韓国のことを昔から「クジラに挟まれたエビ」と呼んでいる。クジラとは米国と中国、日本など軍事・経済大国のことだ。しかし韓国もこの間、政治的にも、経済的にも力をつけてきており、エビはもはやエビではなくなった。
 一方、クジラも昔のクジラではない。特にこれらからは経済力や軍事力などのハードパワーよりもソフトパワー(軍事力ではなく、文化や価値観を通じて他国の支持や理解を得ていくこと)が重要になる。今回、民主的かつ平和的な手続きを経て朴前大統領を弾劾・罷免したことで、韓国はソフトパワーの強さを海外に印象付けた。共産党による一党独裁の中国はいうまでもなく、「安倍1強」で言論の自由が低下している日本やトランプ政権で混乱している米国ではむしろソフトパワーが低下している。
 ――「北朝鮮に対して融和的すぎる」と文氏に不安を感じる人が多い。
 米国のティラーソン国務長官は「戦略的忍耐は終わった」「北朝鮮の核開発を阻止しようとする過去20年間の取り組みは失敗に終わった」と述べたが、1993~2000年の外交的成果をすべて否定するのは大きな間違いだ。例えば、米国の北朝鮮問題の権威であるロバート・カーリン氏も米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」で「93~00年の外交は失敗ではなかった」と寄稿している。クリントン元大統領と金大中元大統領の関係が良好だったこともあり、この時期の米韓同盟は盤石だった。
 94年の北朝鮮の核開発凍結を定めた米朝枠組み合意を破棄したのは、北朝鮮ではなく米国だ。それは、ジョージ・W・ブッシュ元大統領や彼の側近たちが書いた自叙伝を読めば分かる。またオバマ政権の「戦略的忍耐」は「戦略的無関心」と言い換えた方がいいだろう。東アジアでの米国のプレゼンスが低下し、日韓など同盟国も不利益を被った。
 ――あなたは金大中氏と近い関係だった。太陽政策は何だったと考えるか。
 ワシントンの政界でも太陽政策の意味を正しく理解する人はいなかった。ワシントンにいる仲間は太陽政策について「北朝鮮内部にちょっとした変化を起こすために、米国が良心に反するような妥協を強いられること」だと思っていたため、無理して妥協する必要はないと考えるようになった。しかし、太陽政策は関与政策と言い換えてもいい。周辺国家が利害関係を調整して協力することだ。統一などその後の政治的な発展につながる第一歩でもある。
 何よりも、分断は軍事費などコストが余分にかかりすぎるし、本来は経済成長に向けるべき人材などの資源も枯渇する。しかし統一すれば、「島国」となっている韓国は鉄道などを通じて大陸につながることができるし、経済大国である日本と中国の間に位置するという地政学的利点を生かすこともできる。10年に開通した釜山と巨済島を結ぶ海底トンネルが日韓の間にも開通すれば、日本も大きな恩恵を受けることができる。
 ――文新大統領に何を期待するか。
 北朝鮮問題を米中に任せるのではなく、イニシアチブを取ることだ。金大中氏はクリントン氏という理解者を持ち、運が良かった。文氏は金氏と同じような「幸運」は期待できないかもしれないが、米国は大統領にロシア政権との癒着の疑いがあるなど道徳的に混乱しているため、むしろチャンスだ。北朝鮮に対する戦略を樹立して、米国に提案すれば歓迎されるだろう。
 ――「高高度ミサイル防衛システム(THAAD)」の韓国配備について。
 トランプ大統領はTHAADに対して強い関心を持っていない。文政権が決定すれば配備の撤回も可能だろう。(ソウル=坂部哲生、12日に韓国国会で開催されたセミナーでコステロ氏の発表とその後の質疑応答から構成しました)
 <プロフィル>
 スティーブン・コステロ(Stephen Costello)氏
 プログローバルコンサルティング会長。米シラキュース大学卒。94~98年に米国の金大中平和財団で副理事長、99~04年に米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのプログラム「転換期朝鮮半島計画」で理事長をそれぞれ歴任。99年から現職。<http://asiaeast.org/>

最終更新:5/16(火) 11:30
NNA