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ボーイングや三菱重工も協力する東大生産技術研究所、新拠点で再スタート

MONOist 5/16(火) 6:25配信

 東京大学 生産技術研究所は2017年5月15日、移転した附属千葉研究所を関係者や記者向けに公開した。

【開発中の航空機向け部品加工技術などの画像】

 2017年4月1日付で生産技術研究所発祥の地である千葉市稲毛区から、東京大学 柏キャンパスに機能や設備を移した。航空機向けの加工技術の開発をはじめ、市街地を模した道路や線路でのモビリティの実験などを加速させる。

●広い敷地をフル活用

 生産技術研究所は、工学のほぼ全領域をカバーする総合研究所で1949年に設立された。「生産に関する技術的諸問題の科学的総合研究ならびに研究成果の実用化試験」を目的としている。拠点は都内の駒場IIキャンパスと附属千葉研究所の2カ所。附属千葉研究所は、大型設備や広いフィールドが必要な実験を担う。

 移転後の附属千葉研究所は、2棟の研究実験棟と、道路や線路を備えた実験フィールドを備えている。1つ目の研究実験棟には、航空機部品向けの工作機械やロボットなどの加工設備、大型車のドライブシミュレーター、研究用の鉄道車両が設置されている。研究車両は、今回の移転に当たって東京メトロから譲り受けた。

 もう1つの研究実験棟には、波や風、水流を人工的に作る海洋工学水槽がある。水槽は長さ50m×幅10m×深さ5m。海洋再生可能エネルギーの開発や、資源探査、食糧生産システムの研究に使用する。

 屋外では、鉄道と自動車を走行させることができる。鉄道の走行実験向けには全長333mの標準軌間(レールの内側の感覚が1435mmの線路。新幹線や私鉄、公営地下鉄で使用されている)の線路を敷設している。直線、緩和曲線、定常曲線、分機器、踏切なども備える。

 自動車向けには、最大300mの直線道路や、信号機を備えた交差点などが設けられており、自動運転技術やV2Xの実験に活用する。附属千葉研究所が移転した柏市は、自治体主導でITS(高度道路交通システム)の普及に取り組んでおり、市との連携も強化したいとしている。

●ボーイングも参加する技術開発

 附属千葉研究所で注力する研究テーマの1つが、航空機向けの部材加工技術だ。経済のグローバル化やLCC(ローコストキャリア、格安航空会社)の事業拡大によって、航空機は需要拡大が見込まれる市場。この市場拡大に対応するための競争力のある製造技術を確立するため、2013年4月から研究開発に取り組んでいる。開発にはボーイング(Boeing)や三菱重工、DMG森精機など25社が参加する。

 具体的にはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)やチタン合金、アルミリチウム合金の高速切削、チタン合金の熱間ストレッチ成形、ロボットのミーリング(表面加工)による薄肉化がある。

 ミーリングは通常化学薬品を用いて行われるが環境負荷が大きい。附属千葉研究所では、環境負荷を削減できることからロボットでのミーリングを研究している。工作機械と比較して剛性が劣るものの、設備コストを抑制できる加工用ロボットで精密なミーリングを行えるよう開発を進める。また、加工用ロボットよりもさらに剛性が低いが、コストを抑えられる搬送用ロボットの活用も検証中だ。

 現時点で、ロボットによるミーリングは「論文発表が増えてきた段階で、生産現場では使われていない。精度は化学薬品に劣るものの、環境負荷低減のメリットは大きい」(東京大学の研究者)としている。

 また、骨格部材の切削加工による材料ロスを低減するため、引っ張り応力を加えながら成形する熱間ストレッチ成形加工の開発にも取り組んでいる。

●「世界初」の不思議な形の建物

 東京大学 柏キャンパスの敷地内には、不思議な形の建物がある。中に入ると、天井から床までを貫く柱がない。屋根を支えるのは、鉄の短い棒材をワイヤでつなぎ合わせた構造体だ。

 この構造体は「テンセグリティ」といい、ワイヤの張力を調整して棒材同士を固定し、強度を持たせたもの。細胞の骨格に由来する形状だ。オブジェとして制作された例はあったが、建物の構造に用いるのは「世界初」(東京大学の研究者)。

 テンセグリティは、1カ所のワイヤの張力を変更すると別の箇所の張力が下がるという厄介な構造だという。東京大学の研究者は「手間がかかる割に、1本の柱を立てるよりも優れた点はない。メリットは見た目のユニークさだけ」と自嘲するが、人力でも十分な強度に組み立てられるという独自性もある。

最終更新:5/16(火) 6:25

MONOist