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コレ1枚で分かる「IoTで変わるビジネスの本質」

ITmedia エンタープライズ 5/16(火) 10:04配信

 「IoT(Internet of Things)で、うちも何かできないのか?」

 社長から突然、IT部門や技術部門にこんな言葉が投げ込まれ、さあどうしたものかと頭を抱えこんでいる、そんな会社は、少なくはないようです。

【図解】コレ1枚で分かる「IoTで変わるビジネスの本質」:「価値の所在」の変化の例

 「モノにセンサーが組み込まれ、ネットワークにつながるのは分かる。でも、それで何が変わるのか、どんなビジネスができるかと言われても……」

 本音はそんなところにありそうです。

●IoTで変わるモノの価値の本質

 IoTがもたらす変化の本質は、モノの「価値の所在」が大きく変わることです。例えばかつてモノの価値は、ハードウェアの機能や性能によって規定されました。自動車の性能、ラジオの感度、工作機械の操作性といった特徴は、ハードウェアをどう作るかに委ねられていたのです。

 その後、モノにソフトウェアが組み込みまれ、性能や機能を規定する重要な要素になっていきました。例えば最近のデジタルカメラの露出、ピント、絞り、シャッタースピード、カラー調整は、そこに組み込まれたソフトウェアによって実現しています。かつてはハードウェアのメカニズムやフィルムなどのハードウェアによって実現するモノだったのです。もちろんハードウェアも重要な要件ではありますが、それはモノの構成要素の一部であり、付加価値の1つとして考えられるようになったのです。そして、ソフトウェアの機能や性能が、モノの価値を規定する比重が大きくなっていきました。

 ただ、ここまでは、1つのモノに閉じた世界での話です。IoTは、これをネットワークにつなげることで、価値の本質をサービスへとシフトさせようとしているのです。

 例えば昨今のテレビは、そこに組み込まれているソフトウェアを、放送電波を介して更新して機能や操作性を改善することができます。また、デジタルカメラもインターネットにつないでソフトウェアを更新すれば、連写機能を向上させたり、アートフィルターの種類を増やしたりと、買ったときよりも高機能なものに変えることもできるようになっています。また、米国の電気自動車「Tesla」のModel S/Dシリーズには、自動運転機能が組み込まれています。今は法律上の規制もあって完全な自動運転はできませんが、いずれはソフトウェアの更新によって自律走行ができるようになるということです。

 このように、ソフトウェアによって機能するモノがネットワークにつながることで、モノは購入した後も継続的に価値を向上し続けることができるのです。

 「もの作り」は、モノを製品として完成させることではなく、使い続けてもらうことを前提に考えていくことが求められるようになっていきます。例えばAppleの「iPod」が爆発的に売れたのは、「iTunes Music Store」というサービスがあったからです。それ以前にも同様の製品として、Sonyの「ウォークマン」が存在していました。しかし、それを越える勢いでiPodがシェアを広げたのは、このサービスとモノを一体で考え価値を生み出したからに他なりません。

 iPodに続き登場した「iPhone」は、そこに導入したソフトウェアのおかげでカメラにもなり、地図にもなり、懐中電灯にもなります。そして、そのソフトウェアをインターネットを介して更新することで、操作性や機能を改善していくことができるのです。さらに、それらのデバイスからのデータを使い、ナビーゲーション、写真共有サービス、SNSといったサービスを実現しています。

 テレビやデジタルカメラ、Teslaの電気自動車、そしてiPodやiPadの例からも分かるように、モノがネットにつながることで、モノの価値が、モノそのものだけではなく、サービスと一体となって規定されるようになったのです。

 「ハードウェアからソフトウェアへとモノの価値はシフト」していきました。そして、IoTの普及とともに「サービスへとシフト」していくことになります。IoTでビジネスを考えるとは、この価値のシフトを前提としなければならないのです。

●IoTで変わるITビジネスの本質

 IoTでモノの価値はサービスへとシフトしていくと、SI事業者がIoTにビジネスチャンスを求めるとしたら、IoTを生かしたユーザーのサービス構築に貢献するか、あるいは、自らがサービスを構築し提供することになるでしょう。

 ユーザーのサービス構築に貢献するためには、IoTに固有の技術要件――例えばプロトコルやデバイスの特性を理解した上でのインフラの構築、データを収拾し分析するプラットフォームの提供、アプリケーション開発などが考えられます。

 ただし、インフラやプラットフォームについては、それを実現するためのさまざまなサービスやPaaSが数多く登場している現状を考えれば、それらをうまく組み合わせてアプリケーションサービスを構築することが主流になるかもしれません。

 さらに、アプリケーション開発は業務部門主体で行われます。なぜなら、それが事業の競争力に直結するからです。従って、ビジネスモデルの設計、適切な技術やサービスの目利きと選択、それらを組み合わせる技術といった「業務と技術を橋渡しするスキル」が求められるでしょう。

 また、このようなスキルを基に自らサービスを提供することも考えられます。このとき、特定のアプリケーションをサービスとして提供するか、あるいは先に挙げたIoTを使うためのプラットフォームを提供するかの選択があります。例えば長年ECサイトの構築を手掛けてきた企業であれば、RFIDやビーコン、あるいはデジタルサイネージなどをうまく利用できるECサイトを簡単に構築できるPaaS事業といった発想も生まれてくるかもしれません。

 IoTは、現実社会の出来事をデジタルデータに変換し、インターネットに送り出すプラットフォームです。インターネットには、膨大な現実社会のデジタルコピーが蓄積されていきます。これが、ビッグデータです。これを使って、現実社会の出来事を徹底してシミュレーションし、分析を繰り返して最適解を探ります。これを再び現実社会に情報の提供、機器の制御、モノに組み込まれたソフトウェアの更新といった方法でフィードバックします。そして、その結果を再びインターネットに送り出し、シミュレーションや分析を繰り返す――こんな仕組みが実現しつつあるのです。これを「サイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System)」と呼んでいます。詳しくは、ブログ記事「【図解】コレ1枚でわかる『ITの最新トレンド』」をご覧ください。

斎藤昌義, ITmedia

最終更新:5/16(火) 10:04

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