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合同世論調査 改憲それぞれのお家事情

産経新聞 5/16(火) 7:55配信

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が13、14両日に実施した合同世論調査で、憲法9条改正への賛成が5割を超えた。改憲を目指す自民党は高い世論の支持を追い風に改憲議論を加速させたいところだが、具体的な改憲案の作成には曲折も予想される。連立を組む公明党や党内で意見が割れる民進党なども改憲をめぐり“お家事情”を抱えている。

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 ■自民高揚 調整は難航予想

 自民党支持層では、自衛隊の存在を憲法9条に明記する考えを示した安倍晋三首相(党総裁)の提案に77・4%が賛成し、自ら具体案を示すことで議論を加速させたい首相の“作戦”は奏功しているようだ。ただ、党内には「戦力の不保持」を定めた9条2項と自衛隊の存在明記とが矛盾するとの意見もあり、この調整が改憲原案作成の焦点となる。

 石破茂前地方創生担当相は15日のテレビ朝日番組で、9条2項を維持すると、本来は「軍」である自衛隊との関係があいまいになり「矛盾が解消されない」として「9条3項」に否定的な考えを示した。

 さらに「妥協していいとは思わない。戦後抱えてきた問題に答えを出さないでどうするのか」と首相の提案を重ねて批判した。石破氏自身が出馬に意欲を示す来年の総裁選についても「名乗りを上げる者は9条改正問題を絶対避けて通ってはいけない」と対決色を鮮明にした。

 一方、下村博文幹事長代行は12日のBSフジ番組で9条と同格の「9条の2」の条項を新設し、「前条(9条)の規定は自衛隊を置くことを妨げるものではない」との文案を示した。別の条項で自衛隊の存在を明記すれば現行憲法の解釈を維持でき、「限定的な集団的自衛権行使の範囲が拡大する」との懸念を払拭できるという発想だ。

 二階俊博幹事長は訪問先の中国・北京で記者団に「首相の発言で党内は『憲法問題をしっかりやらなければならない』とみなぎっている」と語った。執行部は党憲法改正推進本部の下に起草委員会を設けて議論する方針だ。推進本部顧問の高村正彦副総裁や石破氏に、二階氏ら党四役も加えた挙党態勢で年内に原案をまとめたい考えだが、推進本部幹部は「結論は見えているが、プロセスが見えない」と漏らす。

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 ■公明慎重 支持層とねじれ

 公明党の支持層では自衛隊の存在を明記する憲法9条の改正について、賛成が58・6%で、反対の37・9%を上回った。井上義久幹事長は「憲法上明記しなければ、直ちに安全保障に支障がある状況でもない」と当面の9条改正に慎重な姿勢を示したが、支持層とのねじれが生じた。

 それでも公明党は当面、自民党内の議論を見守る方針だ。斉藤鉄夫幹事長代行は15日、産経新聞の取材に「3割以上が反対し、幅広い合意に達しているとはいえない」と分析した上で、「国民に丁寧に説明する努力が必要だ」と語り、性急な改憲議論を牽制(けんせい)した。

 ただ、公明党は平成26年12月の衆院選までは9条1、2項を残した上で自衛隊の存在を明記する「加憲」を「慎重に検討する」と掲げていた。安倍晋三首相が自民党の憲法改正草案と異なり、かつての公明党の見解と同じ内容の改正案を示したのは、同党の賛同を期待しているからだ。

 公明党には国政選挙並みに重視する東京都議選(7月2日投開票)が終わるまでは静観したいとの思惑もある。党幹部は「都議選前にデリケートな問題を扱い、波風を立てたくない」と語った。

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 ■民進左旋回 逃げた保守層

 民進党支持層のうち憲法改正に「賛成」との声は20%しかなかった。細野豪志元環境相のように党内には改憲論者も多いが、足元の支持層は改憲自体に否定的な意見が多くなっている。調査全体では各党が憲法草案を作るべきだとの意見が圧倒的多数ではあるが、政権交代前後の旧民主党を支えた保守層が逃げてしまったといえそうだ。

 安倍晋三首相が提案した憲法9条改正については民進党支持層の71・3%が「反対」。現行憲法が「今の時代に合っている」との回答も60%を占め、改憲に否定的な意見が目立った。

 民進党の野田佳彦幹事長は15日の記者会見で、「憲法の議論は大いにやってもいいが、(党の考えを)早急にまとめる必要性はない」と強調。首相が提案した2020(平成32)年の新憲法施行についても「喫緊の課題は、北朝鮮への対応などたくさんある。憲法は丁寧にいろいろな問題を議論していくのが基本だ」と否定的な見方を示した。

 党内では細野氏が先月、独自の憲法私案を発表後、蓮舫執行部が改憲に消極的として代表代行を辞任した。前原誠司元外相ら改憲論者も多いが、蓮舫代表は今月3日、首相主導の憲法改正に「絶対反対しないといけない」との考えを示している。

 民進党は昨年の参院選から、憲法の全条項厳守を掲げる共産党との共闘路線にかじを切った。支持者に護憲論が多くなったとはいえ、憲法論議を避ける姿勢は「野党第一党」の存在意義を問われかねない。

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 ■維新落胆 無償化浸透せず

 調査では、日本維新の会が憲法改正の最優先項目に掲げる大学などの高等教育の無償化に対し、十分な理解が得られていない状況が浮き彫りになった。維新の主張通り「憲法を改正して無償化すべきだ」と答えたのはわずか17・5%で、維新支持層でさえ17・2%にとどまった。

 維新の馬場伸幸幹事長は産経新聞の取材に「憲法審査会で議論が本格化していない時点で、賛否を推し量ることは難しい」と述べた。「憲法に位置づけなければ政権によって法律は変わりかねない。その点を審査会で訴え、国民の理解を得たい」と語った。

 理解が浸透していない背景には、高校卒業後に働く人との不平等感への懸念もあるとみられる。教育無償化を柱にした憲法改正私案を発表した細野氏も「社会に出て働く選択肢も尊重する」との理由から、高等教育に関しては憲法での規定に否定的だ。

最終更新:5/16(火) 8:27

産経新聞