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<大相撲夏場所>稀勢の里、薄氷の白星

毎日新聞 5/16(火) 21:13配信

 大相撲夏場所3日目の16日、稀勢の里が右足一本で残すたびに、館内には何度も悲鳴が響き渡った。前日の鶴竜戦で初金星を挙げた千代の国に懐に入られて防戦一方。しかし、絶体絶命の劣勢を覆して勝負を決めた。

 ほめられた取り口ではなかった。得意の左四つを嫌う千代の国に回り込まれ、いなされたり、はたかれたり。さらに右四つから出られて俵に詰まったが、重い腰でしのぎ切って、たまらず引いた相手に乗じて一気に出た。

 冷や汗の出る取組を制し、稀勢の里は「ああいう相撲もある」と涼しい顔。初日に稀勢の里を破った嘉風は取組を支度部屋のテレビで見て「3日目だったら自分も残されていたな」と苦笑いした。土俵下で勝負を見つめた藤島審判長(元大関・武双山)も「右四つでも残していた。下半身は良い」。春場所で痛めた左腕付近以外は、本来の力や動きを取り戻しつつあるとみる。

 稀勢の里は今場所、初場所前の昨年12月から9キロ増の体重184キロで臨んだ。けがで今月まで相撲が取れなかったが、下半身を重点的に鍛え「やることをやって大きくなった」と体重増も前向きだった。加えて肩で息をしながら花道を下がった千代の国に対し、悠然と支度部屋に戻って来た稀勢の里は「スタミナだけしか自慢がないから」。苦しかった時期の鍛錬で培った体と、長年の厳しい稽古(けいこ)を糧に薄氷の白星をものにした。【田中将隆】

最終更新:5/16(火) 22:53

毎日新聞