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住友ゴム、「路面の滑りやすさ」「タイヤにかかる荷重」を検知するタイヤセンシング技術「SENSING CORE(センシング コア)」説明会

Impress Watch 5/16(火) 22:15配信

 住友ゴム工業は5月16日、タイヤの回転で発生する車輪速信号を解析し、路面の滑りやすさやタイヤにかかる荷重などの情報を検知するタイヤセンシング技術「SENSING CORE(センシング コア)」を開発したと発表。同日、このSENSING COREについての説明会をJARI(日本自動車研究所)の城里テストセンターで開催した。

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 同社はタイヤの回転によって発生する車輪速信号を解析することでタイヤの空気圧低下を検知し、その情報をドライバーに知らせるタイヤ空気圧低下警報装置「DWS(Deflation Warning System)」をすでに実用化している。今回のSENSING COREはこのDWSで培った技術をベースに発展させたもので、追加のセンサーを必要としないうえに既存の車輪速信号を使ってソフトウェアで検知するため、メンテナンスフリーかつ低コスト化を図れるというメリットを持つ。

 具体的には車輪速信号を解析・統計処理することで、タイヤの空気圧低下に加え、路面の滑りやすさや4輪それぞれのタイヤにかかる荷重などをリアルタイムに推定するというメリットを持つ。将来的にはSENSING COREを応用し、タイヤの摩耗や損傷などを推定したり、得られた情報をビッグデータとして収集・分析し、他の車両へ配信するといったことが想定されている。

■「路面の滑りやすさ」と「タイヤにかかる荷重」を検知できるSENSING CORE

 説明会では住友ゴム工業 執行役員 オートモーティブシステム事業部長の吉岡哲彦氏が挨拶を行なうとともに、SENSING COREの概要についてオートモーティブシステム事業部 DWSビジネスチームの川崎裕章氏が説明を行なった。

 川崎氏ははじめに、タイヤメーカーとして環境に貢献する方向性として「原材料」(原材料に化石資源を使わない石油外天然資源タイヤ)、「低燃費性」(転がり抵抗を低減し、燃費を向上させてCO2削減に貢献する低燃費タイヤ)、「省資源」(スペアタイヤを不要として車両の軽量化などに貢献するスペアレス商品)の3つのカテゴリーがあるとし、今回のSENSING COREは「省資源」にあたるものだと説明。

 同社では、スペアレス商品として空気圧がゼロの状態になっても一定の距離を走行できる「ランフラットタイヤ」、車輪の回転信号を解析して空気圧の低下を検知する「タイヤ空気圧低下警報装置」、修理材を注入して走行することによりパンク穴をふさぐ「タイヤパンク応急修理キット」を製品化。なかでも「タイヤパンク応急修理キット」の装着率は高まっており、軽自動車では約75%(乗用車では30%)に上るという。その背景には「ほとんど使うことなく廃棄されるスペアタイヤを搭載する必要がないため省資源になること、車両の軽量化により低燃費化に貢献できること、車両設計の自由度が高まること、ハイブリッド車/EV(電気自動車)の電池搭載スペースの確保などが考えられる」と川崎氏は述べるとともに、「弊社のタイヤパンク応急修理キットはIMS(Instant Mobility System)と呼んでおり、過去20年来にわたって国内外の自動車に新車装着されてきた。推定ではあるが、当社のタイヤパンク応急修理キットは国内で50%のシェアを保有している」と説明。

 そして今回のSENSING COREについての説明に入る前に、ベース技術になるDWSの概要が説明された。DWSは車輪速信号を利用して、タイヤの空気圧低下を検知する同社独自の技術。一般的に、タイヤ空気圧の低下を検知するには、タイヤバルブなどに圧力センサーを内蔵して空気圧を直接計測する「直接式」と、車輪速信号から空気圧の低下を推定・検知する「間接式」があるそうで、DWSは後者の間接式にあたり、直接式と比べて圧力センサーを要さないこと、その情報を飛ばす無線機も必要ないことなどから安価でメンテナンスフリーというメリットがあるという。DWSは1988年にその基本コンセプトが開発され、1997年に北米向けの車両に初採用。以降、タイヤ空気圧低下警報装置の装着義務化が各国で進み、現在(2016年末)では累計搭載台数2500万台(主な市場は北米、欧州)に達することが紹介された。

 また、DWSで採用される2つの検知原理についても紹介され、1つはタイヤの空気圧が減るとわずかに小さくなる、すなわち動荷重半径(タイヤが1回転した時に進む距離を2πで割った値)が小さくなることで正常圧のタイヤよりも速く回転する原理を採用することで、4輪の回転速度を相対比較することで空気圧の減少を検知するというもの。

 もう1つについては、「ギターをイメージしてほしいが、ギターは弦の張り方によって音が変わる。これは振動の周波数が変化しているからだが、タイヤも空気が抜けるとタイヤ自体の剛性が低下する。この剛性が低下することで振動の周波数が変化し、その周波数の変化をとらえてタイヤの空気圧の変化を見つける原理を採用している。この2つの原理を採用することで1輪のパンクから4輪の減圧まですべて検知することが可能になっている」と説明を行なった。

 そして本題のSENSING COREについては、路面と唯一接するタイヤは自動車の性能や安全性に大きな影響を及ぼすコア(核)製品の1つであること、そんなタイヤだからこそ分かるさまざまな情報を検知するコア(核)となる技術であることからその名が与えられたと述べるとともに、SENSING COREでは大きく「路面の滑りやすさ」と「タイヤにかかる荷重」を検知できることが紹介された。

 まず「路面の滑りやすさ」を検知するには、同じ路面でもタイヤによって滑りやすさが異なるため、装着されるタイヤに対する路面の滑りやすさを検知する必要がある。その検知ステップは「①アスファルト路面のような高μ路を自動で識別」「②高μ路でのタイヤ特性を把握」「③そのタイヤ特性を基準に路面の滑りやすさを指標化」「④タイヤ特性を絶えず更新することで、タイヤの経時変化に対応する」の4点になるとしており、「ポイントはスリップ率と力の関係(傾き)が線形関係にある。さらに線形関係の“傾き”が路面の滑りやすさによって異なり、その“傾き”の違いから路面の滑りやすさを指標化しようというのが基本的な考え方。タイヤの回転信号からこの“傾き”を求めるわけだが、実際にタイヤの回転信号にはさまざまなノイズが含まれており、そうした不必要なノイズをいかに除去していかにこの“傾き”をきれいに求めるかが今回の大きなポイントになっている。これまでDWSで培ってきた技術を応用して、車輪速信号からリアルタイムに“傾き”を算出することが可能になっている」と川崎氏は説明。

 ここで得られた情報は、見た目では分かりにくいブラックアイスバーンの状態検知、ハイドロプレーニング現象が発生する前にグリップ力が低下していることを警告するといった利用方法や、さまざまな搭載車両からビッグデータとして収集・分析し、路面情報として発信していくことなどが想定されている。

 一方、「タイヤにかかる荷重」の検知では、「荷重の検知というのは普通のドライバーには有益じゃないと思われるかもしれないが、実際にはブレーキの効き具合を最適化したり、クルマの挙動を最適化するのに重要なファクターの1つになる。これまではクルマの総重量を求める技術というのはいくつか知られているが、SENSING COREでは車両総重量のみならず、それを想定したうえでそれぞれ4輪にかかる荷重を検知することができる。具体的にはタイヤは接地面で変形している。すなわち、接地しているところと接地していないところでタイヤ半径に差が生じ、その結果タイヤが回転している間に半径差によって回転変動が生まれる。これによりタイヤが振動し、ある周波数特性を含む振動がタイヤの回転信号から得られる。空気圧が低下した場合はタイヤの剛性が変化し、振動モードが変化する。周波数の山の位置が変化するのを利用したのがDWSになるが、荷重が増えてもタイヤの剛性は変化しない。しかしタイヤはたわむことになり、接地面と接地していないところの半径の差がより大きくなる。その結果、タイヤの回転変動がより多くタイヤをゆすることによって、振動モードは変わらないが振幅が大きくなる。その周波数特性の変化を前後左右のタイヤで比較することで、4輪それぞれの荷重配分を推定している」と説明。

 この荷重情報によって、例えばブレーキの圧力を4輪それぞれで最適化したり、高速道路を走行する際のレーンキープやレーンチェンジのときに微小なブレーキをかけ、車両を安定させるといった利用方法が考えられるという。

 川崎氏は最後に、「今後急速に進むであろう自動運転を含めた未来のクルマ社会に向けて、当社ではタイヤメーカーとしてタイヤ開発にあらゆるデータを活用し、タイヤメーカーにしかできないセンシング技術を進化させ、さらなる安全・安心をお届けしたいと考えている。なお、本技術は現在、新車採用に向けて自動車メーカーさまをはじめご提案しているところ。同社では独自のオリジナリティあふれる技術開発を進め、安全で環境負荷の少ないモビリティ社会の発展に貢献すべく、タイヤのみならずSENSING CORE、DWS、IMSといった多様で高度なニーズに応える商品開発を進めていきたいと考えている」と述べてプレゼンテーションを締めくくっている。

■SENSING CORE搭載車によるデモも実施

 なお、説明会のあとにSENSING CORE搭載車が「路面の滑りやすさ」「タイヤにかかる荷重」を検知する様子を別室で見学することができた。

「路面の滑りやすさ」の検知では、低μ路(μ=0.3)の検知、左右で滑りやすさの異なる路面「スプリットμ路面」の検知などを確認できたほか、200kgの重りを車両に搭載してタイヤにかかる荷重の検知、タイヤ1輪を減圧させて空気圧低下を検知するデモンストレーションも行なわれた。その模様は別室のモニタリング室から見れたわけだが、路面状況やタイヤの情報をリアルタイムに画面で確認できたのが印象的だった。

 現時点で実現する「路面の滑りやすさ」「タイヤにかかる荷重」の検知はすでに実用化の領域に達しているとしており、今後はタイヤの摩耗検知などにも取り組んでいくという。

Car Watch,編集部:小林 隆

最終更新:5/16(火) 22:15

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