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避難住民再び村へ ワインの里産業興し 仕事づくり 「五輪で発信」目標 ブドウ植栽既に1万本 福島県川内村が構想

5/16(火) 7:01配信

日本農業新聞

 福島県川内村は東京電力福島第1原子力発電所事故からの復興を目指し、「ワインの里」づくりに乗り出した。同村は一部の地域が避難指示区域に指定され、昨年6月に避難解除された後も帰還できない住民が多い。村外に流出した人口を呼び戻すため、新たな産業として確立を目指す。2020年の東京五輪・パラリンピックまでにワインを仕上げ、国内外に復興を発信したい考えだ。

 標高約700メートルにある山あいの斜面3ヘクタールに、苗木を植えたばかりのワイン用ブドウ園地が広がる。16年に村民らが約2100本の苗木を定植。今年4月には福島大学や郡山女子大学の学生、東京都在住のボランティアら延べ300人が約7800本を植えた。

 ワインの里づくりは、村を中心とする官民が一丸となって取り組む。園地は村有地を活用し、村民グループ「高田島ワインぶどう研究会」が栽培を、村や地元商工会などでつくる「かわうちワイン推進協議会」が醸造と販売を担う。

 同研究会の遠藤公明会長は震災前まで酪農を営み、この村有地で牧草を栽培していた。「震災で酪農を諦めるしかなかった。ワイン振興の話はとても夢がある」と期待する。管理に携わる地域おこし協力隊の横田克幸さん(62)は「ワインは人と人をつなぎ、食材を引き立てる力がある。ワインの産業を興し、村を出た人たちが帰って来られる環境づくりに貢献したい」と意気込む。

 同村は原発事故後、一時は全村避難を強いられた。16年6月に避難解除となり全村で帰還できるようになったが、村民2700人のうち500人はまだ帰還していない。

 村に人を呼び戻すための手立てを探る中、震災被災地でのワイン栽培による復興に取り組むワインメーカーなどでつくる「日本葡萄(ぶどう)酒革新協会」が、ワイン製造を提案。村は協会の協力を得て、ブドウ生産とワイン醸造による復興に着手した。

 現在、栽培するのは「シャルドネ」「メルロー」「カベルネ・ソービニヨン」など8品種。これまで1万本を定植し、今後は2万本まで増やして面積を倍増させる計画だ。栽培管理の人材を確保するため、協力隊員を新たに2人追加募集する。

 20年の東京五輪に間に合うよう、19年から醸造を本格化させる。今秋には試験醸造を始める計画だ。今後は、ブドウ畑を展望する土地に醸造所や宿泊所、レストランなどを建設することも検討している。

 村は「ブドウ畑に訪れたボランティアが村内に宿泊するなど、交流の効果が表れている。ワインの里によって地域に仕事や交流を生み出し、復興の原動力にしたい」(産業振興課)と展望する。(鈴木琢真)

日本農業新聞

最終更新:5/16(火) 7:01
日本農業新聞

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