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「1階無事なら可能」被災マンション修復 費用は建て替えの8分の1 福岡大教授が熊本で支援

西日本新聞 5/16(火) 11:03配信

熊本地震で被災したマンションの住人を支援

 熊本地震で被災したマンションの住人を支援しようと、福岡大の古賀一八(かずや)教授(建築防災)が助言に駆け回っている。阪神大震災では300棟超を手掛け、住民の負担を考慮して「1階がつぶれていなければ修復可能」が持論。最初に関わった熊本の物件は間もなく工事が完了する。費用は建て替えの約8分の1で済み、コミュニティーも維持できた。「災害で不幸になる家族を増やしたくない」と決意を新たにする。

⇒【画像】ひび割れに接着剤を注入するなどして補修した

 熊本市中央区。古賀さんが作ったマニュアルに沿って工事を進めた築26年のマンションは、ほぼ補修を終えた。壁にひびが入ってドアは開かなくなり、大規模半壊と判定された14階建て。住人の稲田雅嘉さん(57)は「ここまで来られるなんて」と感慨深げだ。

10万人が暮らす368棟を半年で復旧

 古賀さんと稲田さんらの出会いは地震から1カ月後の昨年5月。被災マンションを報じるテレビ放送がきっかけだった。住人だけで悩む姿を見て、居ても立ってもいられず被災地へ。「傾いていようが、柱の鉄筋が切れていようが、1階がつぶれず各階の高さに変化がなければ大半は修復できる」と伝えると、住人の顔から不安が消えたという。

 学生時代は建物の火災被害を研究した。1982年のホテルニュージャパン火災を機に、被災現場へ飛び込んだ。マンション建設会社の研究員だった95年の阪神大震災では、独自にまとめた補修指針を基に、計約10万人が暮らす368棟を半年で復旧。翌年には地震で被害を受けた建築物補修マニュアルの必要性を国に訴え、策定につなげた。

壊さずに補修すれば約14万~250万

 熱意の原点は長崎の原爆孤児だった父にある。「父のように一家だんらんを突然に壊される家族をつくってはいけない。戦争でも、災害でも」

 熊本地震ではボランティアで熊本市内を回り、70棟以上の住人に助言した。1世帯(70平方メートル)当たり、建て替えの総費用は2千万円ほどだが、壊さずに補修すれば約14万~250万円で済む。「適正な価格で適正な工事が行われるように」と費用の目安を伝え、補修業者も指導する。

 熊本市内の分譲マンション約850棟のうち、全壊19棟を含む約600棟が被害を受けた。住人の意見がまとまらず、方向性が決まっていないマンションもある。「私にしかできないことだから」。復興途上、やることがたくさんある。

=2017/05/16付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞社

最終更新:5/16(火) 11:03

西日本新聞