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「一帯一路」ブランドで稼ぐ中国企業 

ウォール・ストリート・ジャーナル 5/16(火) 12:52配信

 【北京】中国企業のパーフェクトが販売している歯ブラシセットにはテントウムシや子ウサギがあしらわれている。そこに最近新しいモチーフが加わった。中国の巨額のインフラ整備構想だ。

 「一帯一路だ」と、同社販売マネジャーのフー・シューチェン氏が熱く語る。「われわれの国が偉大になるために重要な道だ」

 この武骨なスローガンは中国が看板に掲げる外交政策を指す。貿易上のつながりを世界の広範な地域に拡大し、かつての「シルクロード(絹の道)」を復活させる取り組みだ。中国以外の大半の人々はこのフレーズに漠然とした意味しか感じないだろう。だが中国の企業家たちにとって、それは愛国主義的なマーケティングキャラバンであり、参加せずにはいられない対象である。

 あらゆる業種の企業が道路、海上ルート、その他のインフラに向けた政府投資を祝福して自社製品を売り出している。「一帯一路」をテーマにしたハンドバッグやレンタカーのほか、標語を前後入れ替えた「一路一帯」コーヒーブランド、「一帯一路」のお茶の缶、スカーフ、そして陶器もある。

 フー氏の会社が売る歯ブラシセットは8本入り10人民元(約165円)。パッケージの台紙にはラクダの隊列のシルエットをあしらわれ、「一帯一路」構想の簡単な説明書きがある。それによると、同構想はあらゆる国の人々が「調和、平和、そして繁栄した生活を共有」できるようにするものだ。

 何百もの企業が一帯一路を想起させる愛称で登録商標を持っている。例えばOBOR(One Belt, One Roadの略称)、「帯路イニシアチブ」、B&R(Belt and Roadの略)など。どれも言いにくい言葉だ。

 政府が後援する新製品やイベントでも一帯一路が使われている。中国移動通信(チャイナ・モバイル)のOBORモバイル・ローミングプラン、幾つかのテーマパーク、そして「一帯一路」をテーマにした書道・芸術展覧会も。さらに、砂の彫刻のコンペや各種のB&Rクラシック音楽イベントもある。

 中国指導部は「一帯一路」構想によって国内企業が新たな市場をみつけ、道路、港湾、鉄道、パイプラインを通じて中国の影響力が広がるよう期待している。受益国にとっては渇望される投資の源泉だ。国営メディアによれば、中国はこれまで「一帯一路」の参加諸国に500億ドル以上を投入した。非公式の支出予測では数兆ドルに達するという。

 2013年に「一帯一路」構想を打ち出した習近平国家主席は、同構想を経済協力の「シンフォニー」に例えた。14日から2日間開かれた「一帯一路」国際会議に世界30カ国の指導者を招く準備が進む過程で、確かにクレッシェンド(次第に高まる)の感覚があった。北京の至る所で低木の植え込みが刈り込まれ、ラクダのモチーフなどシルクロード関連の形が作られた。

 北京の起業家ヤン・ヤンジュン氏は先月、「一帯一路」をテーマにした格闘技トーナメントを主催した。さまざまな武術を紹介し、ロシアやジョージア(旧グルジア)など一帯一路沿いの国から格闘家たちを招いた。大会は国営の中国中央テレビ(CCTV)で放映された。

 そもそも中国指導部から出されるメッセージは確実にメディアに大きく取り上げられる。各企業はそれに合わせて立ち回る。習主席が「中国の夢」構想を打ち出した時は、企業家たちは稼ぐチャンスとみて相次いで便乗し、「中国の夢」アルコールから「中国の夢」レジ袋に至るまで、あらゆるものを製造した。

 習氏の別のスローガン「新常態(ニューノーマル)」は、中国の経済鈍化を表す言葉として指導部が使ったが、これも自動車ディーラーから織物企業に至るまで何百もの企業の名前に付けられた。米国ではこの種の名前は奇妙に聞こえるかもしれない。だが中国ではビジネス文化は圧倒的に政府主導であり、とりわけ国内に強力なブランドが不在な場合は模倣が共通戦略となる。

 OBORの歯ブラシを販売するフー氏は、そうしたブランド化は愛国的な行為だとみなしており、もっと多くの人々に「一帯一路」のことを知ってもらうために自分の会社が役立つことを望んでいる。この歯ブラシセットはこれまで約60万個売れた。低価格なので地方の労働者や出稼ぎ労働者にとってとりわけ魅力的だという。こうした人々は習主席の貿易構想についてあまり教育されていない可能性がある。

 「歯ブラシのような小さなものでも国の戦略を支援できる」とフー氏は語った。

By Te-Ping Chen

最終更新:5/16(火) 12:52

ウォール・ストリート・ジャーナル