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「夜は短し」森見登美彦さん、「私の奈良を返して!」と異色の帯コメント なぞの新人作家はいったい何者?

withnews 5/18(木) 7:10配信

 去年10月末に発売された最新作「夜行」が直木賞や本屋大賞にもノミネートされた奈良県生駒市出身の作家、森見登美彦さん(38)。発行部数はすでに16万部を突破しています。そんな話題作の発売2カ月半前にデビューした、ある新人作家の小説に森見さんが怒りの(?)帯コメントを寄せていたのを知っていますか?(朝日新聞山口総局記者・浜田綾)

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顔出しNG、素性もひみつ…なぞの新人作家

 《私の奈良を、返してください!さすがにこれはいかがなものか!》

 森見さんが本の帯にこうコメントを寄せたのは、奈良が舞台の短編小説4編をおさめた「ランボー怒りの改新」。同郷出身の前野ひろみちさん=奈良市在住=のデビュー作です。前野さんは30代後半の自営業とのことですが、顔出しはNG。くわしい素性も明かしていません。

 前野さんがデビューしたきっかけは2012年、奈良ゆかりの作家らと小説を持ち寄って自費出版する企画に加わったことでした。
 奈良(NARA)の頭文字から名付けた同人誌「NR(エヌアール)」を夏のコミックマーケットで販売。これが出版関係者の目にとまりました。

 前野さんのデビュー作は、奈良を舞台にしたファンタジー小説「鹿男あをによし」を書いた作家の万城目学さんもツイッターでとりあげました。

 また、あとがきでは作家の仁木英之さん(44)が「あの作家なのか? 夜は短いのか?」と書きました。
 
 もちろん、森見さんの人気作「夜は短し歩けよ乙女」のこと。
 読者もネットに「夜は短いあの作家さん?」「似てるけど少し違う」などと書き込み、話題になりました。

 それでも前野さんは正体を明かしていません。ですが、取材には応じてくれました。

一風変わったストーリー 影響は近代小説から

 前野さんは高校生の時に小説家を目指し始めました。修行するつもりでいろいろと読むうちに、国語便覧に載っているような近代小説家の作品をひたすら読むようになっていました。

 「このころの小説には心情の動きが丁寧に描かれる傾向が強いんです。あと、時代特有の文体がしっくりきました」

 例えば梶井基次郎の「檸檬(れもん)」は、本屋の棚にレモンを置くだけの出来事が、主人公の心情を丁寧に描くことで小説として成り立ちます。出来事のおもしろさありきではないのが気に入ったそうです。

 「登場人物の心を通じて、読者に何かを経験してもらいたいという思いは、学生のころに芽生えました」

 一方で、斬新な世界観や幅広いジャンルも前野作品の特徴です。
「ランボー怒りの改新」には、読後感もジャンルもばらばらな奈良小説4編が収められています。

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最終更新:5/18(木) 7:10

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