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2年ぶりのフルモデルチェンジ、「Infinity Display」に込めた思い 開発陣に聞く「Galaxy S8/S8+」

5/17(水) 6:25配信

ITmedia Mobile

 Samsung Electronicsが3月に、米・ニューヨークで発表した「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」以来のフルモデルチェンジとなるスマートフォンだ。

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 真っ先に目に飛び込んでくる外観上の特徴が、そのディスプレイ。どちらのモデルにも、同社が「Infinity Display」と呼ぶ、18.5:9の縦長ディスプレイを採用しており、左右が湾曲したエッジスクリーン効果も相まって、額縁がほとんど見えないデザインに仕上がっている。ディスプレイを上下目いっぱいまで広げるため、Galaxyシリーズの特徴的なハードウェアであったホームボタンの搭載も見送っている。

 側面には、AIを活用した「Bixby」を呼び出だすボタンを搭載。音声で操作できたり、状況に応じて最適なコンテンツをレコメンドしてくれたりといった、新しい操作方法も提案する。もちろん、スペックはフラグシップならではの高さで、チップセットには「Snapdragon 835」か「Exynos 9」を搭載。どちらも10nmプロセスで製造された最新のチップセットで、パフォーマンスの高さは折り紙つきだ。指紋認証だけでなく、虹彩認証や顔認証など、多彩な生体認証に対応しているのも特徴の1つとなる。

 デザインから機能までを一新し、フルモデルチェンジを果たしたGalaxy S8、S8+は、グローバルで発売中。Samsung Electronicsのお膝元である韓国では、発売前に予約数が100万を突破するなど、従来モデル以上の人気となっている。発火事故により回収となってしまった「Galaxy Note7」の汚名を返上した格好だ。ドコモやauが夏モデルの発表を控え、日本導入の発表にも期待が高まる中、同モデルを企画、開発したSamsung Electronicsの担当者にインタビューする機会を得た。報道陣との主な一問一答で、その魅力に迫っていきたい。

●18.5:9のディスプレイを軸に、革新性を表現したGalaxy

―― Galaxy S8、S8+のコンセプトをあらためて教えてください。このタイミングでフルモデルチェンジした理由も合わせてお願いします。

チェ氏 今回搭載しているInfinity Displayを見れば分かると思います。既存の枠を超えていく、無限を実現するという意味で名付けています。初期の段階から、今までのスマートフォンは同じ形をしていると考え、見た目から変えようというコンセプトで、このような企画になりました。枠を打ち破るということで、「Unbox Your Phone」と銘打っています。

 私はS6の担当をしていましたが、当時のフルモデルチェンジで、「革新的」「チャレンジャー」といういい評価をいただくことができました。S7、S7 edgeは、その進化形を完成させた端末です。新しいチャレンジによるトレードオフ(microSDや防水などに非対応になってしまったこと)を解消することをやってきました。そのフルモデルチェンジから2年目ということで、Samsungには新しいチャレンジが期待されます。

―― なぜ2サイズ展開なのかを教えてください。

チェ氏 S7のときも2つサイズがありました(日本未発売のS7は5.1型、S7 edgeが5.5型)が、S8も2つのサイズを採用しています。市場調査をした結果、コンパクトを望む方と、大画面を望む方の両方がいるからです。そこに合わせ、2つのサイズに対応しました。

―― Galaxyで特徴的だったホームボタンがなくなっています。残す議論はなかったのでしょうか。

チェ氏 弊社でも一番悩んだポイントです。ユーザーがどう受け止めるかは悩みましたが、ソフトキーに変わった代わりとして、感圧センサーを搭載することで、今までと同じような経験ができるよう考慮しています。

―― このソフトキーの部分に指紋センサーを実装するのは、難しかったのでしょうか。

チェ氏 技術的に可能かどうかは、悩んだポイントですが、現実的な部分を考え、最善の実装をしたつもりです。

―― 背面に指紋センサーが移ってしまったことで、指が届きにくくなっています。これは、虹彩認証の利用を促すなどの意図があるのでしょうか。

チェ氏 指紋センサーの位置には、以前はHR(心拍)センサーが搭載されていました。弊社としては、ユーザーが使い慣れた位置だと考えています。使用感も考慮して、ここになりました。

―― 縦長ディスプレイは、LGも出していますが、全体に定着していくと予想していますか。

チェ氏 弊社の予想では、このようなディスプレイを(Galaxyに)搭載することで、他のベンダーもついてくると思っています。縦長にした理由は、(スマートフォンのアプリは)リストビュータイプが多いからです。ブラウザも、SNSアプリも、メッセンジャーもそうですね。そういうところを強化するというのが1つです。また、映画などでは21:9というトレンドがあり、これをより大きなサイズで見ていくことが必要になります。市場ニーズには、大きなディスプレイを望む一方でコンパクトさが欲しいというものがあり、これは今後のトレンドになっていくと見ています。

―― 18:9や19:9なども検討したとは思いますが、なぜ18.5:9なのでしょうか。そういった部材があらかじめあったのか、企画から要求を出して開発したのか、どちらでしょう。

チェ氏 このディスプレイを搭載した理由は、見た目を大きく変える必要があったからです。見た目を変えながら、最大限ディスプレイを大きくするにはどうしたらいいのか。一方で、ユーザーには、今の端末サイズを超えてほしくないというニーズもありました。サイズを維持しながら、どう最大化できるかを考えたのです。

 18.5:9なのは、なぜか。それは、以前スマートフォンが16:9に変わったときと同じような理由です。16:9に変わったときは、テレビ用の4:3と21:9を両立できる解像度として採用しましたが、現在は16:9の動画コンテンツと、ハリウッド映画を中心とした21:9のコンテンツが主流です。その(どちらも大きく表示できる)真ん中を取り、18.5:9を採用しています。これはディスプレイをこの比率と定め、ベンダーに発注して作り上げたものです。

―― 狭額縁になり、本体強度を心配する声もありますが、対策はしていますか。

チェ氏 市場の不良率については、十分考慮していますが、既存の端末水準(の強度)は維持しています。心配されているディスプレイも、素材は「ゴリラガラス5」で強化していますし、エッジが割れやすいという問題は、特殊なポリッシングに対応して落下に強くしています。

―― Note 7の発火を受け、安全対策で強化したことはありますか。

ヤン氏 Note 7は日本未発売ですが、グローバルでの懸念については大変申し訳なく思っています。「8ポイントバッテリー検査」を踏まえ、設計面での問題を分析したうえで、同じことが起きないよう、設計の変更をしています。S8、S8+については、安全に使っていただけると思います。

●「ディスプレイデバイス」の本質を強調したデザイン

―― 今回、背面の色は異なっていますが、ディスプレイ面は全てブラックです。これはなぜでしょうか。

キム氏 「ディスプレイデバイス」という、スマートフォンの本質に近づけるよう、努力しました。そのため、カメラやセンサーなどは全て上部に集中させています。ここはユーザーが認識する必要がない部分なので、機能を維持しながら、視覚的に邪魔にならないようにしました。(インカメラの)レンズにもアンチディフレクションコーティング(反射低減処理)をしていて、形が最大限、隠れるようにしています。

 (ディスプレイ側のカラーを)全て黒にしたのは、端末のコンセプトである、ディスプレイデバイスの本質にユーザーが集中できるようにするためです。黒に統一して静かに見せれば、画面への没入感も上がります。他の選択肢は考えていなかったですね。これがベストだということは、疑いの余地がありません。 

―― ディスプレイが広がっていくと、デザインするところが減っていきますが、今回はどこが面白かったですか。

キム氏 満足しているのは、コーナーのラウンドディスプレイが実現できたことです。小さな変化に見えるかもしれませんが、本体の前面はユーザーの印象を大きく左右するところです。これは、関連部署とのコミュニケーションを取りながら、実現できました。

―― イヤフォン端子は残っていますが、これはユーザビリティの観点からでしょうか。

キム氏 デザイン的な観点では、イヤフォン端子をなくすのは、選択肢の1つです。ただ、ユーザビリティの観点で考えると、イヤフォンジャックを使っている方は多い。ですので、削除はしていません。

―― S8、S8+のどちらもエッジスクリーンを採用していますが、これはデザイン側からの提案だったのでしょうか。

キム氏 デザインが先か、開発が先かというのは難しいですね。常にデザイン側の要望と、開発の要望を話し合いながら実現しています。どちらが先にというより、一緒にやっているイメージです。

―― カラーバリエーションは、これだけでしょうか。(S7 edgeなどにあった)ピンクはないのでしょうか。

バン氏 カラーのデザインコンセプトはニュートラリティです。ピンクは女性が強いので、最初の段階ではこの色を設定しました。今後、ニーズがあれば検討していきます。

―― といいつつ、毎回ピンクが出ていますが(笑)

バン氏 (苦笑)。市場のニーズを見ながら検討します。今回もニーズがあればそうするかもしれません。

●スマートフォンの新たな使い方を提案する「Dex Station」

―― ディスプレイにつなげるとPC風になる「Dex Station」ですが、これは、どのようなコンセプトで、どういったユーザーを想定しているのでしょうか。

キム氏 市場調査の結果、さまざまな方が複数の端末を持っていることが分かりました。1人が、PC、スマートフォン、タブレットなど、さまざまなマシンを持っています。これを作ることで、それらを1つ減らせないかと考えました。

―― これはS8、S8+のチップセット性能が上がったからできたことなのでしょうか。

キム氏 はい。10nmのチップセットを搭載していますが、それによって実現しています。

―― 作業中、通知が頻繁にあると集中できないことがありますが、切ることはできますか。

キム氏 現在のバージョンでは、それができませんが、市場にそういう要望がありました。次のソフトウェアアップデートで適用する予定です。

―― Windowsのデスクトップ風に見えますが、ファイルやフォルダを置けません。

キム氏 (アプリで作ったファイルへの)ショートカットは、出しておくことができます。ただ、B2Bだと、必ずWindowsアプリを使いたいというお客さまもいます。(Microsoftには)仮想デスクトップインフラストラクチャという機能がありますが、それを実装することで、リモートからWindowsを起動できます。これは、フルスクリーンモードでも起動します。

―― 端末から直接ディスプレイにつなぐことはできないのでしょうか。

キム氏 技術的な制約により、Dex Stationを使用することで実現した機能です。理由としては、さまざまなポートを使用しなければならないからです。先ほど挙げた仮想デスクトップインフラストラクチャなどは、パケットの消費も大きいため、有線LAN端子も付いています。また、Dex Stationにはファンもあり、端末を冷却しながら利用できます。

―― 大画面に出力してPCのように使うという機能は、MotorolaやMicrosoftが挑戦してきましたが、うまくいきませんでした。勝算はありますか。

キム氏 コンセプトをよく磨き、タイミングもいいと思っています。S8、S8+は端末のチップセットがとても優れていて、Androidも7.0からマルチウィンドウに対応しています。ですから、今はいいタイミングだと思っています。

―― 端末の販売数に対して、どのくらいの添付率でしょうか。また、なぜ端末に同梱しなかったのでしょうか。

キム氏 (グローバルで)発売したばかりなので詳しい数字は、まだ集計できていません。(同梱していないのは)必要な方もいますし、そうでない方もいるので、基本的には別売りのアクセサリーという扱いです。ただし、韓国では、S8+の128GB版を予約した方に、Dex Stationをプレゼントしています。

最終更新:5/17(水) 6:25
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