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がん克服の夫が若年性アルツハイマーの妻を介護 同名ノンフィクションが原作「八重子のハミング」

夕刊フジ 5/17(水) 16:56配信

 【エンタなう】

 50代以上の夫婦ならだれもが映画「八重子のハミング」を見て身につまされるだろう。

 山口県を舞台に、自身は四度のがん手術を乗り越えた夫が、若年性アルツハイマーを患った妻、八重子を12年にわたり介護する側に回り、最期を看取るまでの同名ノンフィクションが原作。「半落ち」などで知られる同郷の佐々部清監督が脚本も手がけじっくり撮った。

 とても重たいテーマを夫婦役の升毅と高橋洋子がリアルに、そして優しく演じている。とくに刻々と症状が進んで記憶をなくし、幼少期にもどってゆく壮絶な日々を演じた高橋の演技力は見事だ。温かく見守る幼なじみの医師を演じた梅沢富美男もいい味を醸し出している。

 夫婦はもともと中学校教員同士。音楽を教えていた妻は萩の街を見渡す丘でハミングを口ずさむのが好きだった。すっかり記憶をなくしてトイレに難渋する際も、夫が童謡を歌って促すと聞き分けがよくなる。厳しい介護生活を客観視するように夫が文人調に詠む歌が挿入される。どんな状況でも夫婦、家族としての尊厳を保とうと心の平穏を目指した日常が胸に迫る。

 お涙ちょうだいの苦労話や美化されたノンフィクションでもなく、きれいな町並みをきれいなまま切り取った映像がしみる。日本海側の萩は夕陽が美しい。観終わった後、この夫婦が過ごした萩の街を旅してみたくなった。

 東京・有楽町スバル座などで公開中。13日から大阪のシネリーブル・梅田などで順次全国公開。 (中本裕己)

最終更新:5/17(水) 17:06

夕刊フジ