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【EDIX2017】スマート社会の「その先」の教育…中村伊知哉教授

5/17(水) 19:00配信

リセマム

 5月17日から3日間、東京ビッグサイトで行われている教育分野日本最大の専門展「第8回 教育ITソリューションEXPO(通称、EDIX:エディックス)」。企業、団体が製品を展示すると同時に、会場では文部科学省や教育関係者らが登壇する講演も行われている。

中村教授も見て回ったという、会場内の展示の一部(写真) こんなにかわいいのに、立派な教材です。

 17日午後3時から行われた「学びNEXT」特別講演には、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)の中村伊知哉教授が登壇。情報化社会を生きる子どもたちに必要な教育について、プログラミング教育の例を交えて講演した。

◆超スマート社会を生きる子どもたち

 中村伊知哉教授は京都大学を卒業後、郵政省で政府初となるインターネット制作を担当。1998年にはMITメディアラボ客員教授、2002年にはスタンフォード日本センター研究所長を務め、近年ではデジタルサイネージコンソーシアム理事長やNPO「CANVAS」副理事長、デジタル教科書教材協議会(DiTT)の活動を通し、教育現場へICT機器導入を推進しようと活動してきた第一人者のひとりだ。現在は、世界で200万人の子どもが利用しているというMITが開発した「100ドルPC」の発案に携わった経験から、国内の子どもたちの未来を見据えた政策提言や普及活動を主導している。

 2020年の新学習指導要領施行から、小学校での必修化が予定されているプログラミング教育。1980年代から押し寄せたメディア形態の進化や多様化の波はいま、パソコンや携帯電話、スマートフォンに留まらず、さまざまなデバイス、モノのスマート化に影響を及ぼしている。IoTやAIといった新しい科学技術が発達する社会を前に、子どもたちはどのような力を身に付けるべきか。

 中村教授によると、これからのスマート時代を生き抜く子どもに必要な力は、「テクノロジーの原理」を知り、使う力。ICTは対人間で使う道具だったが、超スマート化した社会ではAIを搭載したモノ、IoTの存在が色を増してくる。モノのインターネットを使い、生活を豊かにするか、効率的にするかは、そのAIをプログラミングするヒトそのものの力が関係している。よって、これからの子どもたちはモノのしくみやテクノロジーの根本を理解し、駆使する素養が養われていることが望ましい。

◆アナログ「対」デジタル論争の終焉、時代は「+」へ

 依然として賛否が割れる「教育の情報化」という言葉。中村教授は、日本でもようやくICT機器を導入し、教育を情報化する効果が認められてきたように思うが、教育現場にはまだ「読み書きができなくなる」「視力低下のおそれがある」「(PCやタブレットに)のめり込みすぎる」との懸念があるのも事実だと語る。

 しかし、中村教授は「勉強にのめり込みすぎるのは結構。(読み書きについては)デジタルかアナログかの問題ではなく、書かせるか読ませるかという、授業の設計の問題」とし、教育の情報化に伴いあがりがちな対立構造である「アナログ対デジタル」という概念を振り払った。これまでのICT機器も、これからのIoTやAIの活用も、すべてその道具を操るヒトの思考力や創造力にかかっているといっても過言ではない。

 アナログもデジタルも融合した教育環境を実現するため、中村教授は現在DiTT内でデジタル教科書などの著作物に関する著作権処理スキームの制度化に取り組んでいる。ネットをフル活用し、学びの幅を拡大しようとする子どもたちをネットの驚異から守るセキュリティー対策にも力を入れているところだ。中村教授はさらに、日本発のプログラミング教育やAI、IoT技術を海外へ展開する予定も示唆した。

 中村教授は、100年後を見据えた教育のため、「日本にやれることは2つある」と語る。それは「スマート教育のインフラを整備することと、世界最先端のIoTやAI、ロボットといった分野を開拓し、海外へビジネス化すること」。中村教授はスマート教育のインフラ整備にはプログラミング教育が必要であるとし、来場者に「一緒にやりましょう」と力強く呼びかけ、講演を締めくくった。

 EDIXおよび「学びNEXT」の開催は5月19日(金)午後6時まで。

《リセマム 佐藤亜希》

最終更新:5/18(木) 12:15
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