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知的興奮与える斬新なSF映画「メッセージ」の尊いメッセージ

夕刊フジ 5/17(水) 16:56配信

 【LA発】

 かわいい上向きの鼻と程よい美女度、そして抜群の演技力。エイミー・アダムスが登場すると、映画は俄然(がぜん)リアリティーを持ち始める。

 今年のアカデミー賞で作品、監督、脚色賞など8部門で候補に選ばれた、宇宙人との遭遇を描いたSF映画「メッセージ」(ドゥニ・ビルヌーブ監督、日本公開19日)。同作で言語学者ルイーズ役のアダムスの、複雑な感情を抑え気味に表現する深さに、思わず引き込まれた。

 「これが物語の始まりと思っていた。記憶とは不思議なもの…私たちは時間とその順序に縛られている」

 静かなルイーズの意味深長なモノローグで始まる。続いてルイーズが赤ちゃんを抱き、母親としての喜びに満足しながら娘が成長し、そして悲劇に終わる一見、SFとは無関係なような映像が映し出される。

 原作はテッド・チャンの「あなたの人生の物語」。後にルイーズが異星人を理解するにつれ再び現れる母娘のシーンが核となり、大胆なラストのサプライズへと導いていく。伝統的な遭遇物に、哲学的なドラマを絡ませた斬新なSF作だ。

 物語では大学でルイーズが講義中に、巨大な宇宙船12機が各地に突如現れ、世界はパニックに陥る。言語の専門家ルイーズは米軍のウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)の訪問を受け、エイリアンの発した音を解読し、彼らと交信するよう依頼される。

 物理学者のイアン(ジェレミー・レナー)とともに、モンタナ州に降り立った宇宙船の中に入ったルイーズ。ガラスの壁を隔て7本の手足を持つ穏やかそうな2体の“ヘプタポッド”と遭遇する。

 何度も交信するうちに、彼らの円形のナゾの文字を解読できるようになるが、ロシアや中国など他の地域では宇宙船攻撃の準備を進めていた-。

 美しい映像とサウンドでつづるエレガントで静かすぎる展開は、恐らくSFアクション・ファンには期待はずれだろう。しかし、科学と言語と人の心に興味を持つ向きなら、同じSF映画の名作「インターステラー」(14年、クリストファー・ノーラン監督)を観た時のような知的興奮を覚えるはずだ。

 「スターマン」「未知との遭遇」「E.T.」など、心に残るSF作品では、人間とエイリアンとの心の通い合いが描かれてきた。現実世界では、言語の違いやコミュニケーション不足でどれだけ悲劇が起きてきただろうか。映画「メッセージ」が伝える尊いメッセージに耳を傾けてみたい。 (板垣眞理子)

最終更新:5/17(水) 17:09

夕刊フジ