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ペギー葉山さん、入院後の2日で急逝 後期高齢者に危険な肺炎

夕刊フジ 5/17(水) 16:56配信

【ドクター和のニッポン臨終図巻】

 ミュージカルの名作「サウンド・オブ・ミュージック」。その劇中歌、ドはドーナツのド…で知られる「ドレミの歌」は、日本人の誰もが歌える曲の一つでしょう。なぜ、ここまで日本でも有名になったのか? それは彼女が米ブロードウェーで見て感動し、日本に楽譜を持ち帰り、楽しくわかりやすい訳詞をつけたからです。

 「南国土佐を後にして」など数々のヒット曲で知られる歌手のペギー葉山さんが4月12日、肺炎で急逝されました。83歳でした。

 現在、日本人の死因の1位はがん、2位は心疾患で3位は肺炎です。肺炎による死亡の9割以上は75歳以上の後期高齢者です。

 肺炎は細菌性、ウイルス性、非定型の3つに分けられます。高齢者肺炎の多くは誤嚥による細菌性肺炎ですが、ペギーさんはウイルス性肺炎でした。ウイルス性肺炎は小児に多く、高齢者にはまれです。ペギーさんは体調不良を訴えて入院後、わずか2日で亡くなっています。

 80歳を過ぎてもこれといった持病もなく、入院前日まで活動し、3月29日には「越路吹雪トリビュートコンサート」の昼夜2公演のステージをこなしたということですから、ピンピンコロリをイメージした人も多かったでしょう。

 一般にウイルス性肺炎の原因としてインフルエンザウイルスが最多で、パラインフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルス、麻疹ウイルス、水痘ウイルス、そしてSARS(重症急性呼吸器感染症)などがあります。インフルエンザ感染で亡くなる人はウイルス感染に引き続き、2次的に細菌感染が起きた結果と考えられています。

 もし、体内に免疫を持たないウイルスが侵入したときに体力が低下しているとサイトカイン・ストームという過剰な免疫反応を起こすことがあります。免疫系の防御反応としてサイトカインというたんぱくが過剰に生産され、激烈なアレルギー反応のような諸症状を起こすのです。

 その結果、肺においては急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という重篤な状態に陥り、最悪の場合、呼吸不全から死に至ります。

 一時的に人工呼吸器を装着するなど、さまざまな治療を試みることもありますが、ペギーさんの場合は、その余裕もないくらい急激な経過だったのでしょうか。

 では、免疫能を低下させないためには日常生活で何に気をつければいいのでしょうか。月並みかもしれませんが、過労を避けてストレスとうまく付き合い、十分な睡眠や休養を取ることに尽きます。手洗いやワクチン接種によるインフルエンザの予防も大切です。

 それにしても、たった2日間で急逝されるとは…。ご冥福をお祈りします。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。近著「薬のやめどき」「痛くない死に方」はいずれもベストセラー。関西国際大学客員教授。

最終更新:5/17(水) 17:10

夕刊フジ