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特殊詐欺の水際阻止に全力 群馬県内の金融機関窓口に独自マニュアル

産経新聞 5/17(水) 7:55配信

 高齢者を狙う特殊詐欺の勢いが止まらない。県内では今年4月末現在、還付金詐欺など特殊詐欺が前年比47件増の98件発生、過去最悪のペースだ。具体的手口を紹介するなど県警も啓発活動を続けるが追いついていない。このため金融機関と連携し窓口やATM(現金自動預払機)で被害を食い止める“水際作戦”に防御の網を広げ、店頭に防止用チェックシートやマニュアルを整備、さらに高額の引き出しを事実上、禁じる措置も出始めている。

 「あなたの口座が不正に利用されている。金を全部おろして犯人逮捕に協力してほしい」。電話口でささやく犯人は警察官を装い、「銀行協会の者を派遣するので渡してほしい。安全に管理します」。こうして、預金全額を奪われるケースが最近、多発している。

 ある捜査員は犯人たちの巧妙さを「人間の善意をくすぐり助けてやりたいという心理に訴えるので(被害者は)動いてしまう。一番の対処法は電話をとらないことだ」という。

 善意の人ほど引っかかる。手口も複雑多様化し、啓発だけでは難しい。

 詐欺にあった高齢者が金を引き出し振り込む現場で防ぐ。水際作戦に果たす金融機関の役割は大きく、県内で昨年最も発生件数の多かった伊勢崎署管内では4月、金融機関の担当者約60人を集め「振り込め詐欺根絶緊急対策会議」を開催し、手口や録音された電話での実際のやりとりを紹介、被害状況などを説明し協力を呼びかけた。

 窓口やATMで、不自然に慌てたり挙動不審な高齢者はいないか。見抜くために各機関では独自のマニュアルを作成し、県警でも高額の現金取引を申し出る客に対するチェックシートを各機関に配布している。

 群馬銀行ではさらに独自のチェックシートを作成、警察官を装う手口が増えたことから「警察官に捜査協力を呼びかけられたか」との項目を加えた。最近は犯人側も「金融機関職員に話すと現金を引き出せなくなるので話さないで」などと言うため「銀行員に詳しい話をするなと言われたか」の項目も。疑わしい高齢者に職員が声をかけ警察に通報するなど対策を講じた結果、同行では振り込め詐欺が大幅に減少したという。

 職員の目が届きにくいATMでも監視の目を光らせる。しののめ信用金庫は、過去3年間キャッシュカードによるATMでの振り込みがない65歳以上の利用者に対し、振り込み限度額を「0円」に設定、振り込め詐欺2件を未然に防いだ。群銀も3月から同様に振り込み限度額を20万円に引き下げ、2件防いだ。

 だが、犯人側も手口を変え、窓口やATMを通す必要のない「キャッシュカード手渡し型詐欺」が横行。「カードが偽造されています」と職員を装って電話し「カードを作り直すのには暗証番号が必要」と言葉巧みに聞き出す。被害者の取引先名が入った封筒を持参して「この中に保管します」と厳重に封をして持ち去る。こうした被害件数が急増しているという。

 水際作戦を無にするような手口に、県警捜査2課では「金融機関職員がカードと暗証番号を聞き出すことはあり得ない。そんなケースは詐欺と思って間違いない」と警鐘を鳴らす。

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 ■県警が配布したチェックシートの主な項目

○息子や孫から「携帯電話なくした」「番号変わった」と連絡があったか

○息子や孫から「金振り込んで」「現金用意して」と電話で頼まれたか

○取引のない業者から投資を勧誘され、資金を用意するよう言われたか

○「絶対儲かる」「高値で買い取る」「損金戻る」などと言われたか

○金融機関職員に引き出し理由を聞かれたら「嘘を言え」と言われたか

○警察官や金融機関職員から「現金を預かる」と電話連絡があったか

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 ■ロードバイクで戸別啓発

 前橋署は、特殊詐欺防止を訴えるロードバイク部隊を署員10人で編成し、管内の高齢者を訪問。詐欺の手口を周知するポスターを貼り、「困ったらすぐに相談を」と呼びかけている。

 訪問を受けた前橋市の小玉秀夫さん(92)は「病院の待合室などで特殊詐欺に遭ったという話をよく聞く。詐欺に関心を持ち続けるために、啓発してもらえるのはありがたい」と話した。部隊は約1カ月にわたり3千世帯を目標に、高齢者宅を毎日巡回する。

最終更新:5/17(水) 7:55

産経新聞