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左半身に不安の稀勢の里 “下半身頼み”で残り12日乗り切れるか

日刊ゲンダイDIGITAL 5/17(水) 12:18配信

「今日は『相撲に負けて、勝負に勝った』という内容。むしろ千代の国を褒めてやらなきゃいけませんよ」

 こう話すのは、相撲評論家の中澤潔氏だ。

 16日、横綱稀勢の里(30)は平幕千代の国(26)と対戦。前日、結びの一番で鶴竜を撃破した相手に、和製横綱は防戦一方だった。立ち合いから負傷を抱えている左半身を攻められると、その後も千代の国のスピードに翻弄されっぱなし。だが、土俵際まで攻められながらも右足一本で千代の国の寄りをこらえると、気鋭のスピード力士も苦しい顔。突いても押しても残す稀勢の里は、つんのめりながらも前に出る勢いのまま、難敵を押し出した。

「ギリギリだった? まあまあ。いいんじゃないですか。しっかり一日一日取るだけです」

 内容が内容だけに、横綱は勝っても不満顔だった。

 この日の勝因は下半身の粘りだ。稀勢の里は先場所、左上腕と左大胸筋を負傷してから、足腰を重点的に鍛えてきた。取組を見ていた力士も、「下半身の粘りですね。先場所までの稀勢の里関だったら? 片足一本で残すことはできなかったかもしれない」と言う。

 稀勢の里は先場所から9キロ増量。現在は184キロと過去最重量だ。角界内では、「もともと素早い力士に弱いのに、これ以上重くなったらスピードについていけなくなる」と懸念されていた。それでもこの日の相撲を見る限り、スピード力士が相手でも下半身で粘り、増量した分のパワーで圧倒すれば、そこそこいい勝負になりそうだ。ならば、今場所残り12日間、下半身の粘りだけで持ちこたえられるのか。

■取れない右上手で苦戦は必至

 冒頭の中澤氏は「とても安心できない。不安だらけです」と、こう続ける。

「左に不安を抱えているからか、2日目の隠岐の海戦を除けば右上手が取れない相撲が目立つ。こうなると、稀勢の里は攻め手に欠ける。もちろん、下半身を鍛えるのは間違いではない。しかし、下半身頼みでは、受けの相撲になる。私は昔、春日野親方時代の栃錦(元横綱)に『横綱相撲とは何ですか?』と聞いたことがある。栃錦はしばらく考えて『相手に相撲を取らせないこと』と言った。たとえ受けて立ったとしても、相手が技を出す前に封じ、自分の思い通りの相撲を取るのが横綱というわけです。そこまでの相撲はまだ稀勢の里には求めていませんが、右上手が取れない以上は苦戦を免れません」

 今後は大関、横綱といった実力者との対戦も控えている。左を使えずに勝てるほど、甘い相手ではない。残り12日間を務めるだけなら可能でも、そこは負け越しが許されない横綱だ。千秋楽まで休場がチラつくことになりそうだ。

最終更新:5/17(水) 12:18

日刊ゲンダイDIGITAL