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髪の毛で音を感じるヘアピン型デバイス「Ontenna」 いよいよ製品化?

ITmedia エンタープライズ 5/17(水) 8:47配信

 まるで猫のヒゲが空気の流れを感じるように、髪の毛で音を感じられる――。そんな聴覚障害者向けデバイス「Ontenna」が、2017年5月18日~19日に東京・有楽町で行われる富士通の年次イベント「富士通フォーラム」で展示される。

【ヘアピン型デバイス「Ontenna」】

 Ontennaはヘアピンのように髪の毛に装着するアクセサリで、30~90デシベルの音圧を、リアルタイムで256段階の振動と光の強さに変換して、音のリズムやパターン、大きさを利用者に伝える。楽器の音や動物の鳴き声、携帯電話の着信といった音の変化を知覚できるようになり、日常生活を支える効果があるという。

 本格的なものになると、10万円~50万円と高価になりがちな補聴器と比較し、手軽かつ安価に、聴覚障害者の知覚をサポートできるのが特徴だ。

 会場には、小型の「シンプルモデル」のほかに、スマートフォンと連携できる「スマートモデル」も展示している。スマートモデルでは、アプリで画面をタップすると振動するほか、音楽や動画を再生した際にその音圧が分かるという。

●ろう者のフィードバックを受けて“改善”を続ける

 これから製品化を目指すという“参考展示”ではあるが、その歴史は意外と古い。開発者の本多達也さんがOntennaのコンセプトモデルを生み出したのは2014年のこと。このデバイスで、IPA(情報処理推進機構)の2014年度「未踏スーパークリエータ(※)」に選ばれている。

※独創的なアイデアや技術を持つ若者を発掘する「未踏IT人材発掘・育成事業」において、新規性や将来性が高く、特に優れた成果を上げた人。2014年度は7人が選ばれた

 開発した当時は学生だった本多さんは、卒業後キヤノンに就職したものの、Ontennaの開発に注力するため、未踏事業を通じて知り合った、富士通の阪井洋之常務に声をかけられて転職を決意。2016年1月に入社してからは、富士通のサポートを受けながらOntennaの開発を続けている。

 約1年をかけて改善したのは、光のオンオフと感度の2段階調整を可能にした点だ。細かなことのようにも見えるが、実際にろう学校に通う学生やろう者団体の人たちに使用してもらって得たフィードバックを基にしているという。

 「映画館のように暗い場所でも使いたいというニーズから光を消せるようにし、工事現場など大音量が響き続ける場所でも使えるよう、全体的な感度を2段階で調節できるようにしました。本体も小型化し、より自然に身につけやすい形になっています」(本多さん)

●企業で開発することのメリット

 学生時代は単独で開発を続けていた本多さん。富士通に入社してからはプロジェクトメンバーは2人に増え、協力するエンジニアやデザイナーも含めると約10人ほどがプロジェクトに関わっているという。

 「もちろん大変なこともありますが、企業に入ることで使える資金や人的リソースも大きく増えました。ろう学校などに協力してもらう際にも、企業に勤めていることで話が通りやすい。おかげでスピード感を持って、開発を進められています。企業人としては相当自由な環境を用意してもらっていると感じています」(本多さん)

 今後は、多くのろう学校などで試験導入を行いつつ、安全基準などを意識しながら製品化を目指していく。製品化の時期は未定だが、2017年度内など、なるべく早い段階で製品化にこぎつけたい考えだ。価格は“アクセサリーを買う感覚で収まる程度”を目指しているという。

 「日本基準で安全性を追求すると、ともすればオーバースペックになり、開発が遅れたり、価格が上がってしまう可能性もあります。そのバランスをどう取るかが今後の課題です。こういうものはスピードが大事ですし、これまで多くの人の助けを得てここまで来ました。早く製品化できればと思っています」(本多さん)

 触覚で聴覚を補うという斬新なアプローチから、高い評価と期待が集まるOntenna。学生時代から諦めずに開発し続け、製品化まで「あと一歩」という段階にまでたどり着いた。若きスーパークリエイターが、聴覚障害者の生活を変える日も遠くはないだろう。

最終更新:5/17(水) 8:47

ITmedia エンタープライズ